11:異世界滞在4日目-1
ノアと観光。の巻
「ごめんね、ミオ。私が案内するってあなたを招待したのに」
「気にしないでよ。仕事のほうを優先させなって」
「ほんっとにごめんっ!もー、あの無才!!今度あったらこっそり足踏むか肘鉄くらわせる!!」
今日で王国に来て4日目。アニーは本来休みだったはずなのに、なんと王子が来訪したせいで昨日の仕事のうち、急ぎの分を今日片付けることになったそうだ。
アニーが心底私に申し訳ないと思っているのが伝わってくるけど、実はちょっとホッともしていた。
昨日見たあの光景を朝になっても思い出してしまうからだ。一日時間を置けば、きっと私も2人を前にしても動揺しなくなるだろうから。
まあさ、アニーは美人だし性格もいいから彼氏がいたっておかしくない。それでも彼氏いない歴イコール年齢の私には充分、衝撃だった。
おこがましいけど「先越された」というか・・・こんなこと考える自分が嫌だなあ。
アニーが休みだということで、オディロンさんの授業を入れていなかったので午前中がまるまる空いた。
いい機会だから「カルナステラ王国を旅する」でも読んで、自分の観光プランを組み立てようかな。部屋でやるのもいいけど、図書室にも書き物机と紙にペンが常備されている。
それに、昨日図書室で見つけた「誘惑の作法」を読めるチャーンス!
部屋を出て、私は図書室に向かったのだった。
図書室に行くと、幸いにも誰もいなくて私はいつも使ってる書き物机に座って本をめくり始める。なるほど・・・カルナステラは古いお城や由緒あるカントリーハウスが多いのか。こりゃ西洋の館好きにはたまんないわね~。
お城の周囲には城下町が発達して、その名残が今でも残ってるらしい。なかでも旧市街と呼ばれる地域は当時の町並みを保存して生活することが義務付けられてるらしい。
いろいろ制約があるらしいけど、人気があって空き部屋はすぐに埋まってしまう・・・・確かに、昔ながらの場所ってちょっと憧れがあるものね。
多くの城や館は、今でもその一族が管理していて観光シーズンになると一定期間公開する決まりがあるらしい。城や館を持っている人の義務だとも本には書いてある。
館内公開は人気があるイベントで、毎年見学ツアーを組んで効率よく回るのが一般的みたい。
観光シーズンは・・・残念。私はとっくに日本に帰ってる時期だ。あちこち見てみたかったなあ。
本をパラパラめくっていくと、毎年必ずツアーに組み込まれる城や館の一覧表が出てきた。
さすが王族所有の城は人気だ・・・“アンナレーナ王女が産まれた城である”なんて記載をみて、王族ってなんでもネタになるんだな、とちょっと気の毒になる。
「・・・ん?クロンヴァール公爵家所有・・・へー、ノアさんの家も観光名所なんだ。頼めばオフシーズンでも見せてもらえたりして」
「申し訳ないが、現在屋敷は改装中だ」
「うぎゃあああっ!!!・・・・なんだ、ノアじゃない。驚かさないでよ」
「図書室は静かにするところだろう。それにミオの大声のほうが驚く」
どう見ても驚いているように見えないノアさんが、後ろに立っていた。
「なんでノアが図書室にいるの?」
「それは私のセリフだな。ミオこそどうしてここにいる。ところで、さっきから何を読んでいる?」
そういうと、ノアさんは書き物机から人が読んでいる本を取り上げて、ぱらぱらと珍しそうに目を走らせている。
「なるほど・・・・国民の間ではこのようなものが出回っているのか」
「ノアも長期の休みにはどこか行ったりするの?」
「長期の休みは地方にある領地の視察にあてている」
「名所行ったりとか、美味しいもの食べたり、親しい人にお土産買ったりしないの?」
「領地で生産される旬のものが食べられるし、風光明媚な場所にあるからな。それに収穫したものから陛下へ献上する品を選んだりな。楽しいぞ?」
・・・・なんだろう。やってることは観光旅行っぽいんだけど、楽しそうに聞こえないんですけど。
「ミオ、このガイド本は面白いものだな」
「そりゃよかったね」
「今日の午後だが、特に行きたい場所というのがなければ私の行きたい場所でもかまわないか?」
「へっ?いいけど」
「じゃあ、昼食を一緒に食べながら私のプランを聞いてもらおう。それでは、お昼に」
「は・・・はい」
なんか、なし崩しにノアさんとお昼を食べることが決まってしまった。
そしてノアさんの部屋に食事をしに行くと、ツイードのジャケットに折り襟シャツとパンツという、いつもの恰好に比べるとはるかにカジュアルな感じでちょっと驚いた。
「王宮で仕事をする恰好では堅苦しいだろう?」
私が驚いたのが分かったのか、ノアさんがちょっと肩をすくめた。
読了ありがとうございました。
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ミオは結局「誘惑の作法」を読むことができませんでした。
イメージとして○ーレクインのDくらいで。
○ーレクイン、面白いです。妄想の宝庫です!!