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11:異世界滞在3日目-3

夜は出歩くべからず。の巻

 無才の第三王子は、王宮に一泊して明日帰ることになったそうだ。

 ヘルガさんが持ってきてくれたアニーの伝言は夕食を一緒にできないお詫びと“あんなのと食事するより、ミオとノアがどんだけ仲良くなったのかを聞くほうがよっぽど楽しい”と書いてあった。

「・・・どんだけ仲良くなったのかって・・・・庭を案内してもらっただけなんだけど」

 いったい、アニーは私に何を期待してるんだろうか。思わずぼやくと、食事の用意をし終えたアイノさんがこちらを振り向いた。

「ミオ様、今何かおっしゃいましたか?」

「へっ?う、ううん。ちょっと独り言」

 しまったー。油断してた。つい一人暮らしのときの習慣「1人ぼやき」が出ちゃったよ。ここには反応する人がいるんだったー。

 それにしても人に給仕してもらうのって、戸惑うなあ・・・でも、ここの生活に不慣れな私にはアイノさんの存在ってありがたいんだよね。

 内心ちょっと困ることもあるだろうにアイノさんはいつも私のしょうもない質問にニコニコと答えてくれる・・・プロだ。

「あ、そうだ。アイノさん」

「はい、何でしょうか」

「ここの図書室の本って、部屋に持ち帰って読んでもいいのかな」

「大丈夫ですよ。返却するときは私に言っていただければ戻しておきますので。ここの本には魔法石が組み込まれていて、どの部屋に本があるのか分かるようになっているのです」

「へ、へえ~」

 きっと、この世界にも本を持ち出したまま返却しなかった人がいたんだろう。


 夕食後、アイノさんに図書室に行くと伝えたら「私もお供しましょうか?」と言われたけど、申し訳ないので断った。すると、どこからかランプのようなものを持ってきてくれた。

「夕食の時間を過ぎると、廊下の明かりの大部分が消えてしまいます。部屋から出る場合はこちらをお持ちください」

「ありがとう。えっと、ランプみたいだね?」

「ええ。明かりの元はこちらの灯石です。これを入れて、手前にあるつまみで明かりの調節をするんです」

 アイノさんが本体のフタをぱかっと開けて、ブドウの巨峰くらいの大きさの石をセットした。そして、つまみを右にひねるとまぶしく、左にひねるとぼんやりとした明かりになる。

「へ~。便利だね~」

「灯石は一度いれると1年は取り替えなくていいんですの」

「ほほ~すごい」

「ミオ様。王宮の警備は万全ですが、不届き者がいないとは限りません。なるべく早くお戻りくださいませ」

 いつもにこやかなアイノさんに真剣な表情で言われて、私はあわててうなずいた。


 部屋を出ると、確かに廊下は薄暗くランプがないと大変だ。

「なんだか夢と魔法の王国のオバケ屋敷みたい♪」

 ちょっとわくわくしながら、私はオディロンさんにもらった地図と周囲を照らしながら、なんとか図書室に到着した。

 図書室のなかも暗くて、私はランプを明るくすると本を探し始めた。

 欲しいのは「○球の歩き方」みたいな詳しいガイド本。

 文学の本棚、歴史の本棚、政治経済に・・・・“王妃の本棚”ってタイトルの棚には恋愛小説と思われるタイトルがずらり。

「“運命は金色の糸でつながってる”・・・こっちの世界では赤じゃなくて金なのか。“誘惑の作法”・・・・気になる」

 ちょっと持ち帰りたくなるけど、アイノさんに“誘惑の作法”の返却を頼むのはちょっと・・・あとでこっそり読みに来よう。

“王妃の本棚”を気にしつつ、私はお目当てのガイド本らしいものを発見した。

「“カルナステラ王国を旅する”・・・これだ」

ページをパラパラめくってみると、まさに「○球の歩き方」。名所、名物、注意事項。これよ、これ!

 さっそく持ち帰ろうと、出口に向かった私の耳に扉が開く音がした。


「へ・・・誰だろ?」

 思わず灯を消し、棚の間に座り込む。

 どうやら1人ではなくて、2人・・・・ドレスの衣擦れの音がするからどちらかは女性。

「・・・・会いたかった」

 この声に私は思わずぎょっとした・・・アニーじゃんっ!!

「俺も会いたかったよ」この声・・・・カールさん!!

「カール、いつまで周囲に内緒にしなくてはいけないの?」

「アニー、まだ公表できる時期じゃないのは分かっているだろう?」

「だけど、あの三男・・・私の腕に許可なく触ったのよ?・・・・きゃっ、カール何を?」

「・・・今、消毒したから。俺もあれを見たときにはあの男に呪いをかけてやろうかと思った」

 消毒って・・・よくロマンス小説に出てくるキスだよね、そうだよね。なんですか、この展開は!!

「かけてくれればよかったのに」

「かけたら先生とノアにすぐばれる。あの2人を怒らせるのはまずいだろ。俺たちのことを認めてくれてるのに」

 沈黙が流れる・・・・聞こえるのは荒い息遣いと衣擦れのみ・・・・出られない・・・これは、ちょっと何もできない・・・・でも、気づかれるのも非常にまずいっ!!


「・・・そろそろ交代の時間だ。戻らないと。・・・部屋まで送るよ」

 カールさんの声がして、部屋を出て行く音がする。

 す、すごい現場に遭遇してしまった・・・私は力が抜けてすぐに立つことができなかった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


主人公がちっとも恋愛モードにならないので

他の登場人物に恋愛させてみました。

魔道士のカールがどうしてミオに気づかないのか?

すいません・・・できればスルーしてください。

恋愛中は気づかないってことでごまかされてください(汗)

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