9:異世界滞在3日目-1
いきなりですか。の巻
今日から図書室でオディロンさんに文字とこの国のことを教わっている。現在はアイノさんが持ってきてくれたお茶で休憩中だ。
「ミオさんは、なかなかすじがいいですな」
「ありがとうございます」
窓際の席に座っているため、外の風景に目をやると庭園を誰かが歩いている。2人並んで歩くすこし後ろに1人が警護するかのように後に続くのが見えた。
「どうかしましたかな?」
「庭園を誰かが歩いているなあと・・・」
「どれ・・・おおアニー様ですね。隣にいるのは・・・おやペルジェスの三男ですな。後ろに続いているのがカールですよ。ノアの親友で、若いのですが王宮の警護担当者です。もうお会いになりましたかな?」
「いいえ。でもアニーが、そのうち向こうから現れるって言っていました。オディロンさんって目がいいんですね」
「なに、ちょっと遠目の魔法を使ってますからな」
「一緒に歩いているのは王子様ですか。へ~~」
もしかして、アニーの婚約者とか。なんか普通に生まれたときから許婚いそうだもんね。
「ペルジェスは我が国の隣にありましてな」
そういうと、どこから取り出したのか机の上に地図を広げた。地形がヨーロッパに似ていて、地続きで国が並んでいる。
「カルナステラ王国はここ。ペルジェスはこちらじゃの」
指し示したのは王国の左隣。
「昔から交流があるんですか?」
「ええ。友好国ですからな。ただし今の王は傀儡で、跡継ぎの長男が切れ者で実権を握っております。長男と次男はアニー様とも親しい。あそこは王子が3人おりまして、政の長男・武の次男・無才の三男と言われておるのです」
無才の三男・・・すごいあだ名。
「三男はアニー様にご執心でしてな。こちらはその気もないのに婿入り希望で、性格も今の王そっくり。困ったものです」
オディロンさんがため息をつく。友好国だと断るのも大変だよなあ・・・。
授業を終えて、片づけをしていると図書室の扉がノックされてライナスさんが顔を出した。
「おやライナス。どうしたのかね」
「こんにちは、オディロン先生。ノア様からミオ様を連れて来るように言われまして」
「午後からはノアがガイドをするのじゃったな。・・・大丈夫なのか?」
「さあ・・・・ミオ様が馴染んでくれれば大丈夫かと」
本人がいないところで結構言うね~、ライナスさん。今頃くしゃみしてるよ、きっと。くしゃみするときも顔があのままだったらすごい。想像すると面白いかもしれない。
「まあ、ミオさんなら大丈夫じゃろ。」
「そうだと思いたいですよ。さあ、ミオ様。参りましょうか」
「は、はいっ」
「ミオ様、その紙はなんですか?」
一緒に廊下を歩いているときにライナスさんが私の持っている紙に目をとめた。
「これは私の部屋からあちこちに行く用にオディロンさんに書いてもらった地図です。いちいちアイノさんに付き合ってもらうのも悪いから」
ライナスさんが驚いているのが気になる・・・この国では、お一人様行動ってのは珍しいのだろうか。
部屋に到着すると、机で仕事をしているノアさんと、オットマンのうえに足を投げ出してだらっと座っているアニーがいた。
「ミオ、おつかれ~。初日はどうだった?」
「今日は、文字を習ったよ。それと地理も少し教えてもらったの。今日アニーが案内してるのは、プレジェスっていう国の王子様なんだってね」
「そうよ。無才の三男。あー、もうアイツどうにかしてよっ、ノア!!」
「私は一介の公爵だ。どうにかできるわけないだろう」
「ふんっ、分かってるわよ。あーあ、午後も憂鬱」
午後も憂鬱?あれ?午後は一緒に観光じゃなかったっけ。私が不思議そうな顔をしているとアニーがすまなそうな顔をして私を見た。
「ミオ・・・ごめんっ」
「へっ?」
アニーがいきなり私に両手を合わせる。
「午後も無才な三男の相手しなくちゃいけないのよー。私もミオと観光したかったよ」
「ええええっ!!!いきなりノアさんと2人?!」
いきなりか!いきなりなのか!!心の準備期間はないのか。
私とアニーのやりとりを黙ってみていたノアさんが楽しそうに(憶測)口を開いた。
「ミオ。そういうわけだから、昼食を一緒に食べながら行きたいところを聞かせてもらおうか」
「は?えっ?」
お昼はアニーも一緒だといいな・・・そう期待をこめてちらっとみると、ごめんと両手を合わせているアニー。まじか・・・いったい何の罰ゲーム。
「昼食はライナスがここに持ってきてくれる。ゆっくり食べられると思うが」
ゆっくり・・・?食事の味、わかるかなあ。
読了ありがとうございました。
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新キャラが出てくる異世界滞在3日目がスタートです。
名前だけはとっくに登場している人です。