1-1 急かされし序章
りば→すの連載二作目。
久々のファンタジーなので緊張してます(笑)
「生きたいか?」
おぼろげにかすむ視界の向こうで、黒マントの男が僕に手を差し伸べた。
「まだ消えたくないだろ?」
どんどん薄れる意識の中、自分がどう答えたのかさえ覚えていない。
ただ覚えているのは、僕の手を握る暖かくて力強い…誰かの手。
― ― ― ― ― ― ― ― ―
真っ先に目に映ったのは白い天井。
軽く古びた病室だ。
何がどうなってこうなったのかは分からないが、どうやら僕はここに寝かされているらしい。
「ここ、は……?」
「ようやく目が覚めたらしいな、眠りの森の美女」
いきなり白髪の男が視界に現れた。
視界がかすんでいるせいで顔はよく見えない。
でも、この声を……僕は知っている?
「あんた、どこかで」
「さっき会ったばっかだ。まぁ、お前は覚えてねえだろうがな」
「それってどういう」
「まぁ、初対面ってことだ。つか、そんだけしゃべる元気が出たならさっさと行くぞ。こちとらお前が起きるまでずっと待ってんだからな」
そう言うなり男は視界から消えた。
扉が開く音がするってことは、本当にどこか行く気なのか!?
「ちょ、ちょっと待て」
起き上がろうとした瞬間、耐え難いほどの痛みに襲われた。
何処が痛いとかそういうんじゃない。
とにかく痛いんだ。
「あー、無理に動くと消えるぜ?」
「あんたがいきなりどっか行こうとするからだろ」
「水を取りに行ってやっただけだ」
「なら何でわざわざ紛らわしいこと言ったんだよ!!」
「お前が勝手に勘違いしただけだろ」
何だこいつ……むかつく。
「それに、消えるってどういうことなんだ?」
「どういうって、お前もう死んでるんだよ」
……はぁ?
死んでるって……ありえない。
感覚はあるし、触れるし、ちゃんと足もある。
これで死んでるって言われて信じられるわけがない。
「まぁ、死んでるって言ったって今は肉体があるんだけどな」
「あんたの言ってること、訳分かんないんだけど」
「ならそのままでいいんじゃねえか?」
「……よくない!」
思わず身体が突っ込みに反応してしまい、先ほどの痛みがまた僕を襲った。
「お前結構元気だな。本気でもう大丈夫なんじゃねえか?」
「思いっきり痛がってるのが見えないのかよ。あんた、目悪いんだな」
「んだよ、可愛い見た目の割りにずいぶん生意気だな。とんだクソガキを拾っちまったもんだぜ」
「なっ……!」
確かに生意気なのは自分自身で分かってる。
だがほぼ初対面の赤の他人に言われる筋合いはない。
それに可愛い見た目って何だよ!
どう見たって立派な男だろ!
「とは言っても、こいつを選んだのは俺か……」
「何の話だ?」
「お前には関係ない。んなことよりも、早く回復してくれよ? でないと暇で俺の方が先に死んじまう。……って、俺も死んでるんだけどな」
こいつも……?
まだ顔しか見ていないがきっと足もあるはずだ。
でないと足音がするはずない。
扉を開けられたってことはきっと物に触ることも出来るんだろうし。
一体こいつ何者なんだ……。
「ちょっと待て、連絡が入った」
連絡?
一体何処から?
何かすごく叫んでるみたいだが…。
「悪いが、休んでる暇はないらしい。これ飲め」
「何だよこれ、薬か?」
「いいからさっさと飲め。そこに水あんだろ」
戻ってくるや、半ば強制的に飲まされた謎の白い固体。
飲んで一分も経たずに意識が朦朧とし始めた。
もしかしてさっきのって、毒なのか!?
「あんた、これ…」
「文句は後からゆっくり聞くよ」
「ちょ…ま……」
意識がどんどん遠のいていく。
それと同様に身体の感覚も消えた。
最悪だ…目が覚めてから意味分からないことばっかりじゃねえか。
次あいつに会ったら絶対殴る。
そんな決意を固めると同時に意識が完全に消えた。
「……悪いな、俺にはもう時間がないんだ」
― ― ― ― ― ― ― ― ―
「第427号。現在を持って貴殿を“死神見習い”として認定する」
目が覚めると僕はイスに座らされていて、目の前には三人の黒マントの男が座っている。
真ん中の男が淡々と話す言葉はどうやら僕に向けられているらしい。
「死神…見習い?」
僕はどうやら、おかしな夢を見ているらしい。
こんなの、現実じゃない。
……思えば、これは運命だったのかもしれない。
僕があいつに出会ったのも、ここに来ることになったのも。
こうして始まったんだ。
僕とあいつの……魂を繋ぐ唱が…。
誤字脱字、変な表現がありましたら指摘お願いします。
アドバイスなどいただけると嬉しいです。