第18話【それぞれの幸せ】
お待たせしました。第18話更新です。
いきなり旅に連れて行かれたので更新が滞ってしまい……申し訳ない(^^;
では、どうぞ<(_ _)>
森の中の細道をひた走る霊のバイクと、ダナンが運転する大型コンテナトラック。
霊のバイクはかなり馬力があるため、坂道になっても軽快に登っていく。
その後ろを、『ぴったり』追走するトラックが、なんともシュールだった。
少しでもハンドル捌きを誤れば、タイヤは草むらに取られ、最悪バランスを崩して横転しかねない。
徐行しているのならばまだしも、それなりのスピードで走るバイクに追走しているのだ。かなりのテクニックがなければ、スピードを出すこともままならないはず。
(ダナン先輩、すごいなぁ……。慣れてる印象を受けるけど……多芸な人だ……)
サイドミラーで、運転席に映るダナンを確認。その表情に緊張は見られず、あのぽっちゃり顔はいつもと変わらず和やかだった。
「ねぇ、こころ。トラックの中、揺れて無い?」
『はい。ちょっと振動が強くなりましたけど、まだまだ気にならない程度です』
バイクの荷台に着地している、こころのビット。それを通して、トラックのコンテナ内にいるこころに聞いてみるが、返って来た答えに違和感はない。
「けっこう狭くて、揺れると思うんだけど……ダナン先輩の腕が良いのか、トラックの性能が良いのか……」
『きっと両方なんですよ。ダナン先輩が用意したトラックですしね』
「なるほど……」
やがて目的地……鉱山入り口の洞窟が見えてくる。
旧世代の名残なのか、錆びついた坑道が外からも見え、その先の光の届かない暗闇に呑み込まれているような印象だ。
入り口前は少しだけ開けており、霊たちはそこに駐車することにした。
「それじゃあ運搬用トロッコを降ろして、中へ入るんだなぁ~。ヘッドライトは忘れずに、なんだなぁ~」
大きなハンマーを背負い、片手にツルハシを担ぐダナン。和やかな雰囲気のまま指示を出す。
当たり前だが、旧世代の鉱山は放棄されており、電力も通っていない。
生徒たちは【心力】を纏わせることで身体能力を強化する黒いバトルスーツ【心装】の他に、ダナンが用意したヘッドライトを装着。
ツルハシを持ってトロッコを押し、第1チームから二人の見張り役を残して中へ入ろうとする。
それを、霊が止めた。
「待って。みんな、念のために【心器】は持っていて」
「ん? どういうことだ? 御神」
槍姫を筆頭に、他のメンバーも霊に疑問の視線をやる。
「おいFランク。【心蝕獣】は太陽の光……それを反射する月の光など、そういった光源のあるところでしか活動しない。【心蝕獣】が暗闇に包まれた鉱山のなかにいるとでも言いたいのか? バカバカしい……」
守鎖之が露骨に、小バカにしたように霊に指摘する。
今言ったように、そういった生態が【心蝕獣】には確認されている。
詳しい理由は定かではないが、基本的に【心蝕獣】は光のある場所を求める。洞窟のなかといった、狭い暗闇の空間や、月のない夜は活発な行動が確認されないのだ。
稀にナイトクラスが新月の日に活動しているのが目撃されるが、そういう日は大抵、雲ひとつない晴天の夜であり、星明りの見える夜である。
もちろん、そういう生態を霊も知っている。だが……気になることがあるのだ。
「このまえ現れたジェネラル・ゴーレム。あれは、更新されている個体だった……」
「霊くん、更新されている個体……というのは、どういう意味ですか?」
「【心蝕獣】には離れていても相互に通信しあえる、ネットワークのようなものがあるんだ。大抵は同じ、または隣接するテリトリーにいる【心蝕獣】同士の間でやりとりされるんだけど、稀に世界規模で情報交換が行われるらしい。そのとき、各【心蝕獣】は、それぞれが得た経験を互いに共有し、弱点が見つかればそれを補おうとパワーアップさせる」
それら一連の行動を、更新と呼んでいる。
「その更新のなかには、生態活動そのものに関わるものも含まれている。可能性としては低いんだけど、今までとは違い、光のないところでも活動できる【心蝕獣】が、いるかもしれない。あんな近くに更新されたジェネラルクラスがいたんだ……一足先に更新を終え、活動している【心蝕獣】がいないとは、言い切れない」
霊とて、自身の強さに驕って力任せに事を運べるなどと思っていない。
相手のレベルを知っているのなら適度に力を抜くが、まだ見ぬ敵に対しては最初から全力で挑む。最悪の状況を常に想定し、物事を……露骨な表現をすれば……悪い方に考えて行動する。
「いなかったら、いなかったでいい。でも、もしその手の【心蝕獣】に【心器】も無い状態で遭遇してしまったら……ね?」
それがとり越し苦労であれば良い。備えあれば憂いなしというように、堅実にリスクを減らすことが生き残る秘訣だ。
むしろ、それくらいでようやく【苦戦するレベル】に落とせるのが、【心蝕獣】という天敵なのだから。
「ハッ。Fランクらしい、実に臆病な考え方だな。まあ好きにすればいい。俺は常に【心器】を携帯しているから、出て来たとしても一人で十分に対処できるがな。余計な荷物を増やして、泣きを見てればいいのさ」
小バカにしてその場を去る守鎖之。
第1チームのメンバーに指示を出し、洞窟のなかへ入っていく。
この際、守鎖之は採掘道具をまったく持っていなかった。持っているのは両刃剣の【心器】だけ。他はすべて第1チームのメンバーに持たせていた。態よく扱き使っているものである。
「あれ、針村さんたち、【心器】を持って行くの?」
「Fランクの言ったことなんて気にしなさんな」
その扱き使われている守鎖之のメンバーは、【心器】を装備し始めた第7チームの女子たちに目ざとく気付いた。
守鎖之とのやり取りを聞いていたのだろう。
彼らは霊を嘲笑うように視線を向け、話しかけて来た。
「私たち第7チームのリーダーは御神だ。大和ではない」
「リーダーの指示だから、従うのは当然だよ」
きっぱりと拒絶の意思を見せる、槍姫と朗。
はっきり言えば、霊の懸念は過剰過ぎるもの。
太陽が東からではなく、西から上ってくるかもしれない……そう言っているのと同じことだ。
それでも指示に従っている。こと【心蝕獣】に関して、霊の言葉は何よりも信じられると、先日の群れの一件で実感しているからだ。
はっきりと言われ、困惑するようにうろたえた男子たちは、八つ当たり気味に霊を睨みつけたあと、守鎖之の後を追った。
「ありがとう、二人とも」
「別に礼を言われることではないだろ?」
「そうそう。霊くんはどっしり構えて、遠慮なく指示を出してくれればいいんだからね!」
太陽が西から上るかもしれない……。
それに等しいことを言っている自覚はあるから、意見を聞き入れられないかもと覚悟していた。
それだけに、二人の言葉はありがたいものだった。
「あ、こころ。ビットは4機まででいいよ。狭い坑内では、数が多くても邪魔になるだけだからさ」
「わかりました。じゃあ、もう半分の4機はここの見張りの人たちとの中継に残しておきますね?」
「うん、そうして。それと戯陽さん、ガトリングガンは連射式じゃなくて、単発式に設定して。洞窟を崩す訳にはいかないから」
「おお! そういえばそうだね! 了~解っ!」
細かいが、しかし重要なことを確認しつつ、ダナンを加えた第7チームも洞窟へ入っていった。
◆ ◆ ■ ◆ ◆
今回の遠征(とは言えない短い距離だが)は、閃羽の資源区では手に入らない上質な素材の採掘が目的だ。
基本素材となる【スティーラル鉱石】を主に、【心経回路】の材料となる【トランスラル鉱石】、囲んだ空間内にエネルギーを閉じ込められる【シャトラル鉱石】、【心力】のエネルギーを圧縮させる【コプレラル】鉱石、などなど、霊の【心力】に耐えらる【心器】の開発を主眼に置いた素材の入手が優先される。
「うんうん、やっぱり閃羽よりも質がいい鉱石なんだなぁ~」
カツンッ! とツルハシを坑道に打ちつけ、出てくる鉱石をうっとりと眺めるダナン。
ぶっちゃけ鉱石なるものをあまり見たことのない他生徒たちは、普通の石くれとどう違うのか分からなかったりする。
光沢があるのはわかるが、それも土で汚れていて一見しただけではわからない。
だが……。
「あ、ダナン先輩。ちょっと離れてくれますか? 奥の方に良さげな塊があります」
霊が【糸刀Ver.1.0】から細い糸を岩壁に撃ち込み、内部を探査する。
糸から伝わる感覚で良質の鉱石を感知。塊を糸で絡め取り、引き摺りだす。
無論、坑道や壁が崩れないように糸で締め固め、穴を掘ってからだ。
「おおおおおお~~~! 大量の【トランスラル鉱石】なんだなぁぁあああ~~~っ!!」
掘りだした鉱石の塊は、人一人をすっぽりと覆い隠せるくらいに大きかった。
しっかりと糸で土を除去していたため、出て来た鉱石はとライトの光でキラキラと輝き、比例してダナンの目もキラっていた。
「【心器】を採掘に使うとはな……。我等がチームリーダーは、どこまで常識破りなのだろうか?」
「槍姫ちゃん、それは今さらじゃないかな? 私としては、鉱石の良し悪しを糸で判別する御神くんは、一体どこまで万能なのか、小一時間は問い質したいね~~~」
「あの、二人とも、聞こえてるからね?」
普通を心がける霊にとって、普通じゃないとか、非常識とか、型破りとか言われるのは心外……というか地味に凹む。
そもそも、霊にも言い分がある。【心器】は強力な武器なのだから、ダイナマイトと同じでこういった採掘等に利用しない方が不思議なのだ。槍姫の槍型【心器】はツルハシを使うより効率的に掘れるし、朗のガトリングガンは、単発設定に加えて威力を調節すれば小型局所爆破のダイナマイト代わりに使える。もちろん、坑道が崩れないよう配慮する必要はあるが。
とはいえ、霊の言い分は霊だからこそ。
普通の人はすぐ【心力】に限界が来て、作業どころでは無くなってしまうという弊害がある。
精密な操作を要求されると神経がすり減るように、【心力】も必要以上に消耗してしまうからだ。
「御神くん、これはちょっと大き過ぎるから、適当な大きさに分割して欲しいんだなぁ~」
「あ、はい。そうですね。ちょっと待っててください」
【糸刀Ver.1.0】から糸を放出。鉱石の塊に絡めつつ【心力】の出力を上げる。
「―――ふっ!」
短く気合を入れたと同時に、鉱石の塊はいくつにも分割され、人が持ち運びできる大きさになった。
「わぁ……霊くん、すごいですね」
「あはは。まあ、自分の【心器】を用意してもらうんだから、これくらいはね……さて、運んじゃうね」
「あ、私も手伝います。あんまり採掘できないから、せめてこれくらいはさせてくださいね。」
霊がすべて一人ででやってしまいそうなので、何か言われる前に行動する。
糸を使えば手作業に頼ることなく運べるのだが、こころから【尽くしたいオーラ】が出ているので、無碍にするのも憚られる。
大きいものだけ優先して糸で絡め、残りをこころに任せることにした。
「……ふん」
こころのそんな姿を見て鼻持ちならない様子の守鎖之。
彼女の気を引こうと考えを巡らせるも、第1チームの成果は芳しくない。掘っても掘っても細々とした鉱石しか出なかった。
「おい、おまえら! もっとしっかり掘れ!!」
狭い坑道内に守鎖之の激が響く。
第1チームのメンバーも頑張っているが、霊の成果を比べると見劣りしてまうのであった……。
と、そのとき。
「―――っ!?」
「―――だなっ!?」
霊と、そして一瞬遅れてダナン。
この二人が、気配を感じ取った。
気配は二つ。
一つは来た道……坑道の入り口側。薄暗い天井の上。
そしてもう一つは奥の側……守鎖之達が作業している、すぐ上の天井。
それは、【心蝕獣】の気配だった。
「ぼくが奥のを!」
「来た道側なんだな!!」
短いやりとり。しかしそれだけで動けた。霊はともかく、ダナンは手放しで褒めるべきだろう。
天井に見えるのは、バスケットボール大の目玉……ポーン・アイズの【心蝕獣】。
そのポーンアイズに向かってツルハシを投げ付け、先端部分が見ごとに突き刺さる。
だがそれだけでは終わらず、背中に担いでいたハンマーを構え、そのぽっちゃりした体型に反した跳躍をもって、天井に張り付いていたポーン・アイズに、下から打ちつける。
潰れる音よりも打ちつける音の方が大きかったのは、ダナンのハンマーの威力をポーン・アイズが受け止めきれなかった証拠だ。
(うそっ!? あのハンマーって……!?)
(【心器】、だったのかっ)
見ていた二人……朗と槍姫が、ダナンの大きなハンマーを見て驚愕する。
緑色に光る【心力】が大きなハンマーに纏っていたことから、それが【心器】であることを理解し、同時に驚いたのだ。
心理工学科の生徒であるにも関わらず、かなり強い【心力】を纏っていたことが分かったからだ。
一方、霊はというと。
(やっぱり、ダナン先輩はただの技術士じゃなかった。少なくともビショップクラスの実力はあるな……)
霊とほぼ同時に【心蝕獣】に気付いたことと、感じ取れる【心力】からそう判断する。
初見でダナンのハンマーが【心器】であることを見破っていたため、距離的に近い方をダナンに任せることにした。
それはみごとに功を奏し、察知してから数秒で一体目の【心蝕獣】は倒された。
その数秒の間に、霊は守鎖之たちの真上にいる【心蝕獣】に糸を絡め、バラバラに引き裂く。
(あ……これくらいの【心蝕獣】だったら、針村さんや戯陽さんにやらせても良かったかな?)
肉片となった【心蝕獣】を見てそんなことを思った。
実戦経験を積ませることになるし、なにより、懸念していた暗闇のなかでも活動する【心蝕獣】だったのだ。
少しもったいなかったと思いつつ、霊は糸を【糸刀Ver.1.0】に収めた。
しかし……これだけでは終わらなかった。
ポーン・アイズの肉片が真下にいた守鎖之たちに降り注いだのだ。
それだけならまだいい。だがその肉片に驚き、過剰反応してしまった者がいた。
「くっ! うぉぉおおおお!!」
守鎖之だった。
両刃剣型の【心器】を持ち、【心力】を集中させて斬撃として放つ【斬撃波】を、この狭い坑道内で放ってしまった。
爆音と土ぼこりが辺りを覆い、激しい震動に見舞われる。
「あ!」
守鎖之の【斬撃波】によって起こった揺れの所為で、トロッコに積んでいた鉱石が転がり落ちた。
それに気付いたこころが、慌てて回収しようとした矢先……脆くなっていたのか、地面に大穴が開いてしまう。
「きゃ――――」
「こころ!?」
「こころちん?!」
槍姫と朗が咄嗟に手を伸ばすが間に合わず、成す術も無く大量の鉱石とともに落下する。
「 こ こ ろ ぉ ぉ お お お お お ! ! 」
怒声。
あるいは、慟哭か。
普段からは考えられないような叫びを上げながら、霊はこころを飲み込んだ穴に飛び込んでいった。
全身に【心力】を纏わせ身体能力を強化し、弾丸の如き勢いで急降下。
同時に【糸刀Ver.1.0】から糸を射出し、こころを絡め取る。
「くしび、くん―――」
糸で傷つけないよう最大限の注意を払い、落下しながらこころを引き寄せる。
「こころっ!!」
しっかりと抱き寄せ、降り注ぐ土砂から自分の身体で守る様に抱きかかえる。
あるていど過ぎ去ったところで、改めてこころを確認。
怪我は無いと判断し、次いで落下状態から抜けようと試みるが……。
(糸は……だめだ。そこらの壁に突き刺しても、遠心力で激突する。こころに負担がかかる!!)
自分の身体を盾にして済むなら、とっくにそうしている。
だが今の落下スピードでは、こころにも激突の衝撃を負わせてしまうだろう。
(なら……【糸刀】の糸を……千本の糸を束ねて……)
ダナンの改良によって千本の糸を出力できるようになった【糸刀Ver.1.0】。
その千本の糸を、切っ先の鋭い槍の形に束ねる。
束ねられたその糸は、人の腕ほどの槍身となり、それを岩壁に突き刺す。
「ぐうぅぅっ?!」
急ブレーキが掛かると同時に、落下スピードを相殺しようと過大な負担が霊の腕に襲いかかる。
落ちた分の位置エネルギー+落下スピードの運動エネルギー。そして二人分の体重。
【心力】で強化しているとはいえ、こころと、そして【心器】に掛かってしまう負担を軽減するため、ジェネラルクラスを相手にしたときよりも出力が抑えられていた。そのため、どうしても強化不足となり、霊の腕が悲鳴を上げたのだ。
しばらくしてようやく止まり、痛む腕でぶら下がり続ける。
「くっ……。こころ、大丈夫?」
「は、はい……なんとか……」
少し放心気味だったが、霊に声を掛けられて正気を取り戻す。
「まったく……崩れるかもしれないってときに、無茶なんかしないでよ」
「ご、ごめんなさい……でも、霊くんのために必要なものだから……」
霊は強い。
強いが故に大きな負担を、背負う必要もない負担を背負わなければならない。
それを少しでも軽くしてあげるために、今日採掘した素材は必要不可欠。失う訳にはいかなかった。
「……この際だから、ハッキリ言っておこうか。ぼくなんかのために無茶はしないで。絶対に、だ」
「そ、そんな……い、イヤです!! 私は、霊くんの役に立ちたいのに!!」
「もう十分役にたってるよ。いや、助けられてるよ。Fランクとして蔑まれているぼくのそばに、キミはどんなときでも居てくれた。それだけで十分」
「嘘です!! 私は霊くんに何もしてあげられてない! 守ってもらうばかりで、私だって、霊くんのことを……霊くんと一緒に、戦いたい……霊くんのために、何かしたいんです……」
自分はあまりにも、霊に頼り過ぎている。
そう思い悩むほどに、こころは霊を大切に想っている。【心兵】を目指すのも、霊と一緒にいたいがためだったのだ。
「……ありがとう。その気持ちだけで十分だよ。ぼくは救われてる」
霊は霊で、頼られ過ぎていると思っていない。
こころを大切に想っているからだが、それ以上に……。
「だから、こころが思い悩むことなんかないんだ。ぼくのことは気にせず、自分の幸せを考えて?」
それ以上に、こころには幸せになって欲しいと思っている。世間から蔑まれるFランクを庇って、自分から奇異の目で見られることは無いのだから。
しかし、こころは―――彼女の気持ちは違った。
「私の幸せはっ! 霊くんが一緒じゃないとっ!! 霊くんと一緒に、幸せになりたいんですっ―――あっ」
霊が悲しいことを平然と言う。
だからつい熱くなって、思いの丈を叫んでしまった。
それが何を言っているのか自覚して、絶句して、こころは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
●御神霊―――――主人公。Fランクの落ち零れとされているが、膨大な【心力】を有する謎の少年。
●純愛こころ―――霊の美少女幼馴染。数少ない【感応者】。
●針村槍姫――――背の高いクールな少女。こころの親友。
●戯陽朗――――いつも元気で明るい少女。こころの親友。
●ダナン・デナン――心理工学科のぽっちゃり系3年生。【心器】に関する技術はなかなかのもの。
●大和守鎖之―――Sランクにして最年少ナイトクラスの少年。こころの幼馴染。