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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

温度差の恋愛事情

作者: 碧尉翼
掲載日:2010/08/22

「なぁ駿太、あの話聞いたか?」

「あぁ、転校生来るってやつ?」


 それ、さっきも別のやつに聞かれた。

 なぜか転校生が来るという情報は、先生から伝えられたわけでもないのに誰かが聞きつけてクラス中に広まる。

 しかも自分のクラスに入るとなると、噂話はヒートアップする。


「来るの、男らしいぞ」

「さっき女子が残念がってたな。女の子がよかった~とか言ってたし」


 同性に来てもらいたいという気持ちは男子にも女子にも共通するものらしい。

 しかも、今回の転校生はいつもの転校生とちょっと違う。


「なぁなぁ、なんで男なのに帰国子女っていうんだ?」

「智樹より頭の悪い俺にわかるわけないだろ」


 違う部分。それは転校生が海外からだということだ。

 日本人ではあるが、海外に住んでいた。ちょっと複雑。


「おーい、先生来たから席つけー」


 廊下をチラ見した学級委員がクラスに呼びかけると、みんな「来た来た」とはしゃぎながら席に着く。

 駿太も例外ではなく、転校生の容姿を妄想しながら席に着く。

 ごついかな。色白かな、いや黒いかな。日本語しゃべれるのかな。

 そわそわしながら待っていると、ガラっと勢いよく教室の前のドアが開けられ、担任――通称熱血ゴリラ――が堂々としながら入ってきた。

 バンッと教卓に日誌を叩きつけ、肺いっぱいに空気を吸い込み、拡声器いらずの大きな声で話し始めた。


「おはよう諸君! 耳の早いお前らならもう知っていることだと思うが、今日は転校生が我がクラスに来る。その新しい仲間を紹介しよう。さぁ入ってきたまえ」


 いつもどおりの高いテンションで熱血ゴリラは廊下に向かって手招きをした。

 

「失礼します」


 流暢で品のある声が響き、1人の男が教室に入ってきた。


「・・・・・・!?」


 絶句、であっているのだろうか。

 今周りでさわさわと囁きあっている女の子と同じことを考えている。

 なんだコイツ。いい意味でなんだコイツ。

 

 誰かに聞かなければ日本人だと分からないのは、平均よりちょっと長めのマロン色の髪のせいだろうか。ゆるくカールしていてそよぐ風に合わせて浮いている。目も大きく瞳も茶色。前から3列目のこの席からでも長い睫が見える。

 この2点だけ見れば女の子と間違えそうだが、他のパーツがそれを許さない。

 頬から顎にかけて鋭いラインが通っている。唇は薄く引き結ばれている。意志の強さをあらわすかのような眉。 ちょっと強面なパーツなのにそんなイメージを持たないのは、全身から醸し出される柔和且つ神秘的なオーラのせいだ。

 コイツ、本当に日本人か?


 クラス中にざわめきを与えた本人は、教壇の前に嫣然と佇んでいる。

 

「うしっ名前書け」


 熱血ゴリラがチョークを渡すと、転校生は笑顔で受け取り、黒板の前に進む。

 脚、なげー。

 俺と同じ制服着てるはずなのに、なんでか違く見える。

 カツカツと小気味よい音を響かせながら、転校生は漢字で名前を書いた。

 さすが帰国子女。アルファベットの筆記体のような字で書かれている。

 丘群佳広(おかもりよしひろ)

 意外と普通。


「丘群佳広です。年はみなさんと同じ17です。今までカナダにいたので日本文化や流行には疎いですが、両親が日本人なので日本語は大丈夫です。得意な教科はma・・・数学です。これからよろしくお願いします」


 海外生活で身についた癖なのか、身振り手振りを交えながら自己紹介をした。なんとなく好感度が上がった。

 そのまま佳広は背中を熱血ゴリラに叩かれながらなにか会話をしているが、その視線は何故か、駿太に固定されている。

 いや、自意識過剰だということはわかっている。佳広の視線は駿太の後ろにいるクラス一の美人、七海に注がれているはずだから、佳広と七海の間にいる自分が変に感じとってしまうのだろう。

 居心地の悪さを感じながらHR終了のチャイムを聞いた。


    ◆◇◆


「ねえ、丘群君っていつカナダに行ったの?」

「英語しゃべれるの?」

「これからずっと日本にいるの?」


 男女問わずぐるっと取り囲まれ、佳広はさっそく質問攻めに遭っていた。

 初対面相手でも物怖じせずに一つ一つ丁寧に答えているさまは欧米のにおいを感じる。

 にしても・・・・・・。


「なぁ駿太、行ってやれよ。かまって欲しそうだぞ」


 智樹にもわかるくらいちらちらとこっちに視線を寄越してくるのはなんでだ?

 しかも同時に熱のようなものも寄越してくるような気がして・・・意味もなくソワソワする。


「俺じゃなくてお前のことみてるんだよ」

「いや、あんれは絶対駿太狙いだね」

「狙うとか言うなよ気持ち悪い」


 コイツは冗談のつもりだろうが、つい本気になって返してしまう。


「あの、ちょっといいですか?」

「ぅわっ!!」


 いきなり肩に手を置かれ、素っ頓狂な声を上げてしまった。

 目の前では智樹がけたけたと笑っている。

 恥ずかしさから智樹をキッと睨む。


「あ・・・ごめん。入っていいタイミングじゃなかったかな」


 申し訳なさそうな声にあわてて後ろを向くと、佳広のドアップがあり、思わずのけぞる。


「いや、全然オッケーなタイミングだったけど」


 なんとか返事をすると、佳広は安堵した顔つきになる。

 

(うわ・・・近くで見ると超イケメン)


 肌が白く、エキゾチックで理知的だ。

 それに比べ駿太は、口の威勢は100点満点だが身長も顔立ちもいたって普通、いや、中の上といった所だ。目立つ所といえば・・・三白眼? 吊り目っぽいこれか。


「なんか、俺に用?」


 いつものクセで棘のある口調になってしまい、しまったと後悔するが、佳広はそんなこと気にしない、むしろ大歓迎といった様子で近づいて来る。


「ぼくと仲良くしてもらえないかなと思って」


 腰に妖しい疼きをもたらす低音で囁かれる。

 てか、なんで俺?


「あ、あぁ。別にいいけど。」

「本当? 嬉しいなぁ」


 イケメンフェイスが破顔する。

 笑った顔もかっこいいのだが、近い。

 しかも佳広の瞳にはなにか、艶のようなものが籠もっていて、このまま見つめられたら本当に吸い込まれてしまう。

 さらにのけぞると、「そうか、ここは日本だったね」と佳広は身を引いてくれた。


「あ、えと、数奇屋(すきや)駿太(しゅんた)


 とっさに自分の名前を告げる。


「スキヤ? スキヤキと何か関係があるの?」


 不思議そうに佳広が駿太の名字について聞いてきた。


「よくわかんねぇけど、珍しい名字らしい」

「そうか、スキヤシュンタ。シュンちゃんだね」

「シュンちゃん!?」


 そんなあだ名をつけられたのは生まれて初めてだ。

 シュンちゃんがよほど面白かったのか、駿太と佳広の会話を聞いていたクラスメイト全員が声を上げて笑い始めた。


「シュンちゃん! いいねぇ。似合わなくていいねぇ」


 智樹なんか涙が浮かぶほどゲタゲタと笑っている。


「ごめん。気に障ったかな」


 殊勝な態度で佳広が問いかけてくる。

 なんか、そんな眦さげられたら、Yesなんて言葉どこかへ飛んでった。


「いや、智樹が勝手に笑ってるだけだし。俺はなんとも思ってねぇけど」

「なんでオレだけロックオンされてんの!?」

「そうか。でもこの名前は君ともっと仲良くなってから使うことにしよう。今はまだ時期じゃないかな」


 後半の言葉の意味が分からなかったが、とりあえず仲良くなりたいという意図は伝わった。

 仲良くなるぶんには大歓迎だが、


「ねぇ、スキヤ君って何が好きなの? スポーツは? 部活は何してるの? スキヤキ好き?」


 気を抜くとあっという間に距離、主に顔の距離が近くなる。

 しつこいようだが何度でも言う。近い。

 佳広の顔にはへんな吸引力があるようで、そらしたくてもそらせない。

 離れるために思いっきり体をそらしたら、


「いってえぇぇぇ!」


 ガッターンという大きな音を出しながら椅子が後ろに倒れ、頭を強打した。


  ◆◇◆


 佳広が来て1ヶ月。駿太と佳広は意気投合し、周りから関係を怪しまれるほど仲良くなった。

 佳広は知識があり、話してて楽しい。移動教室も校庭に出るときもトイレに行くときもずっと一緒だ。周りの生徒からはいつも羨望のまなざしが送られてくる。あの佳広君と仲良いんだ、いいなぁって具合で。

 そんなある日。


「シュンちゃん。タイイクカンウラというところに案内してもらいたいんですが」

「体育館裏?」


 そんな相談を受けた。


「さっき女生徒からのものだと思われる手紙を下駄箱から拾いまして、タイイクカンウラに来てくれませんか? って書いてあったので」


 体育館裏に呼び出される。マンガとかでもよく見かけるシーンだ。

 告られるのか。

 佳広はその端麗な容姿から異性に好意をもたれやすい。学園で4番目くらいよくモテる。

 本人は全く気づいていないようだが。


「そういうのは一人で行くもんなんだよ」

「なぜですか?」

「なぜって、そりゃあ佳広以外の誰かが一緒に来ると相手の女の子が困るからだ。」

「シュンちゃんがぼくの大切な人でも困られるのですか?」


 コイツ、これから告白されるってこと絶対分かってない。


「向こうの方が困っても、ぼくはシュンちゃんを連れて行きたいです。シュンちゃんが来てくれないとむしろぼくが困ります。」

「なんでだよ」


 真剣に言ってきているので理由を聞いてみると、至極真面目な瞳で、


「タイイクカンウラが分かりません」


      ◆◇◆


「ったく、体育館の裏だから体育館裏なの。ここがその体育館裏だ」

「ここがタイイクカンウラですか」


 結局駿太は佳広とともに体育館裏に来ていた。

 正確には案内した、になるが。

 掃除のされていないここは日当たりがいい。秋にはドングリやマツカサで埋め尽くされる。

 シャクシャクと葉の上を他愛の無い話をしながら歩いていると、見慣れた制服が視界の先にぽつんと現れた。

 この学園の女子の制服だ。現れた女生徒は髪を手ぐしで整えたり、制服の埃をはたいたり、終始落ち着かない様子だ。

 あのこが佳広に告るのか。


「じゃ、俺戻っから」

「えっなぜですか」


 友達が告白されるところはあまり見たくない。モテない自分が惨めになるから。

 そう思って退散しようとした駿太を佳広は引き止める。


「だってほら、もう女の子来てるし、俺がいたら邪魔だろ?」

「ぼくはどんなときでもシュンちゃんを邪魔だと思うことはありませんよ」


 そういうセリフは女の子に言ってもらいたいが、不思議と言われて嫌じゃない。


「それに、ぼくに用があるのはあのこではありませんよ」

「何で分かるんだよ」

「ぼくが呼び出されたのは明日の昼休みなので、今日はシュンちゃんと場所を確認したかっただけです」

「はぁ?」


 告られるのは今日じゃない。

 言外に言われた言葉に安堵する。


(って、なんで安心するんだよ)


 友達に先に彼女ができないから・・・・・・とは違うような。


「シュンちゃん。女の子のところに男の子が来ましたよ。これから何が始まるのですか?」

「うそっ隠れろ!」


 のんきな声で実況中継をする佳広の腕を引っ張り、大木の陰に身を隠した。


「なんで隠れなければならないのですか? 続きが気になって仕方が無いんですが」

「これから告白するんだよ。女の子が男の子に。」

「もしかして、ぼくも明日女の子に告白されるのですか」


 木の陰から少しだけ顔を出して他人の告白を見、やっと理解できたようだ。

 気づくのが遅い。


「シュンちゃんも見たらいかがですか? 面白そうですよ」


 キラキラと目を輝かせながらほらほらと誘われ、見てはいけないと頭では分かっているが、好奇心に負けて視線を向ける。

 女の方はは知らない人間だったが、告白されている男の顔を見て驚愕した。


「今日も告られてんのかよ」

「黒いジャケットですから、生徒会役員の方ですかね」

「ですかね、じゃなくてそうだ。学園で一番モテるやつだ」

「生徒会長ですか?」


 一番モテる生徒会役員で男のほうが誰だか分かったようだ。

 桐生学園生徒会長、碧尉翼。頭も切れて容姿も完璧で非の打ち所の無いカリスマ生徒会長だ。駿太のクラスでも一日一回は話題に上る。

 性格もよく、生徒想いで男女分け隔てなく接する彼は、この学園のイケてる男子グランプリの頂上に君臨している不動のキングだ。

 今日も、というのは昨日同じクラスの女子が「生徒会長に告ってきたけど返事聞かないで逃げてきちゃったー」と言っていたからだ。

 返事を聞けなかった女の子が不憫なのか、返事を言う前に逃げられた生徒会長が不憫なのかわからない。


「あ、女の子走ってどっかに行っちゃいましたよ」

「うわ、昨日のデジャウ」


 女の子に逃げられた生徒会長は手に何かを持ったまま待って~というようなポーズで固まっている。

 しばらくすると、体育館のほうから同じく黒いジャケットを着た男子生徒が2人出てきた。


「あの2人なら見たことあるだろ。この学園の御三家だぞ」

「ええと、黒髪で背が高い方がタカスギソウキさんで、茶髪で制服を着崩している方がキライオリさん」

「そ。あの3人は学園の外でも有名なんだ。きちんと憶えとけよ」


 佳広は絶対忘れるので、釘をさしておく。


「3人ともかっこいいですね」

「羨ましいよな、生まれつき天から二物も三物ももらえるんだからさ」

「ぼくはシュンちゃんのほうがかっこいいと思いますが」


 だからそういうセリフは俺じゃなくて女子に言えって。そう言おうとして佳広の方を向くといたく真面目な表情が目と鼻の先にあった。

 その瞳の中には剣呑な炎が燃え盛っていて、逃げることを許さない。

 と、同時に体の両端に手をつかれ、腰を跨がれ、本当に逃げられなくなった。

 

 檻の中から脱け出そうと頭では思うが、体がまったく言うことを聞かない。

 佳広から浴びせられる熱い視線になにかが溺めとられてしまったのか。


(ちょっ、やばいって)


 会話を終えたらしい御三家の方々がこっちに向かう足音が聞こえる。

 男に押し倒されているこの状況を見られるのは、さすがにまずい。しかも学園のトップの生徒会長や自身が憧れている綺羅伊織にはこんな醜態晒したくない。

 変に抵抗して音を立てると不審がられて近づくスピードを速めてしまうかもしれない。佳広も動いてくれる気配すらない。

 必死に方向を変えてくれと御三家に念を送っていると、1人ぶんの足音が止まった。


「どうした? 翼」

「美味しそうな匂いがする」

「ん? ・・・別に何も匂わないが」

「捨てるのはもったいないけど、反対側から帰ろう?」


 生徒会長が衝撃的な言葉を口にした。一筋の光が射した。


「え、でもこっち側のほうが校舎に近いぞ。まだ仕事が残っているから近い方が断然いいだろう」

「それに翼の言うそのうまそうな匂いってのもこっち側なんだろ? オレ知りてぇし買ってくっから」


 続いて響いた杜樹と伊織の声に光が消え去った。


「お金で買えない良い匂いだよ」

「金で買えない良い匂い?」

「・・・・・・まさか翼、腐敗臭とか言わないよな」

「正解。てかなんで腐敗臭ってでたの? 普通艶めいた香りとかじゃない?」

「その話は後だ、翼、取り締まるか?」

「初犯だし、あとで注意するだけで今回はいいかな」

「つか、気配だけで誰だかわかんのかよ」

「僕は生徒会長だからね」

「答えになってないぞ」


 会話の内容はよくわからないが、遠ざかっていく足音で方向を変えてくれたことは分かった。

 なにするんだよ! と怒鳴るためにキッと眦を吊り上げようとするが、上から降り注ぐ色艶めいた視線にふにゃっと溶ける。

 思考まで溺めとられてしまったのか、抵抗という言葉すらも忘れる。

 なんで押し倒すのか。なんでそんな瞳で見下ろしてくるのか。そんなことどうでもよくなってきた。

 

「シュンちゃん・・・・・・」


 無意識に腰が揺れるほど悩ましい低音で名前を呼ばれ、妖しく燃える炎がどんどん近づいてくる。

 ふに、と唇に何か柔らかいものが当たった。

 柔らくて、さらさらとした感触のそれが妙に気持ちよくて思わず口を開けると、ぬるりとした熱いものが侵入してきた。

 反射的に口を閉じるが、佳広は右手の親指で強引に歯列を割り、更に深く侵入してくる。

 舌を溺めとられ、強く吸い上げられると体の力が一気に抜ける。


「ふ・・・・・・んぅ・・・ん」


 微妙なざらつきのある舌に上あごを舐められ、ゾクゾクとした感覚に声を上げると、佳広の舌が更に熱くなった。

 歯列をなぞるように舐められ、頬の柔らかい粘膜をくすぐるように突かれ、喉の奥に丸まっていた舌を強引に佳広の口内に吸い込み、甘く噛まれる。


(ッコイツ、上手すぎ)


 なにもできない駿太を吸い上げ、噛み、翻弄する

 一つ一つの手技を受け止めるたびに、腰の奥がジン、と痺れ、思わず内股を擦りあわせた。


 ちゅっとかわいらしい音がして、唇は離されたが、お互いの舌を銀色のキラキラと光る糸が繋ぎとめている。

 それがプツ、と切れると同時に、思考も戻ってきた。

 佳広に、キス、されてた・・・!?

 ドンッと目の前の男の胸を突くと、よろりと少しだけ後退した。

 その顔は欲が見え隠れしながらも平然としている。


「な・・・にすんだよ!!」

「何って、kiss」

「発音良く言えって誰も言ってねぇよ! 何で俺にキ・・・キスなんかするんだよ!」


 唇を服の袖でゴシゴシと拭いながら言いたかったことをやっと言うと、ズレた返事が返ってきた。


「あれ、シュンちゃんkiss初めてだったか」

「肯定すんな。せめて疑問形で聞け」

「やっぱりそうか。美味しいものをいただいちゃったなぁ」


 うっと言葉に詰まる。実際そうだからだ。

 

「俺のファーストキスはともかくっなんであんなことしたんだよ」

「ともかく? ってことは男もOKって意味かな?」

「質問に答えろ」


 だれがホモだ。俺は女一筋だ。


「なんでって、わからない?」

「わかるかっ」


 やれやれ、といった様子で佳広が口を開く。


「好きだから」

「欧米では好きな友達にディープキス仕掛けんのか」

「そっちの好きじゃなくて、Loveの好きだよ」

「友達愛でこんなことすんのか」

「違うよ。ええと日本語では・・・恋かな」

「はぁ?」


 男に何をふざけたことを。しかし佳広の目は真剣で、とてもふざけているとは思えない。

 だから、怖い。

 しかも口調が変わっている


「転校初日に一目惚れして、ずっと見てた。気づかなかった?」

「! あれって七海に向けたものじゃねえのか」


 そうとばっかり思ってたのに、佳広は違うよと首を横に振る。

 でも、まだ理解できない。佳広みたいなイケメンが、俺のこと好きだなんて。


「佳広ってホモだったのか」

「Bisexualだよ。両方いけるけど、今はシュンちゃん一筋だからホモかもね」

「カナダにはホモが多いのかよ」

「多いというか、Homosexual marriage・・・同性結婚可能だよ」

「マジかよ・・・・・・」


 何も言い返せず固まっていると、佳広は「日本では一部の女性たちから熱烈な支持を得ていると聞いたんだけど」と呟き、ぐっと顔を覗き込んできた。


「気持ちよかった?」

「なにが」

「kiss」


 すぅっと唇を指でなぞられ、ゾクリとする。


「気持ちいいわけないだろ」


 後ろめたさのせいで迫力の無い声で言い返すと、おや、と器用に片眉をあげ、


「そうか、ぼくも頑張ってシュンちゃんにイイって言ってもらえるように努力するよ」


 そんなことを言われた。


「しなくていいっ。そんな努力」

「ぼくがしたいからします。シュンちゃんにどうせなら気持ちよくなってもらいたいですし。てことで、これから口説くからよろしくね」

「くどっ・・・」


 男にキスされたり、男に告られたり、ありえないことばかり降りかかってきてもう何も言えない。


「いつかカナダの国籍をとってもらいますからね。そうしたら晴れてぼくのお嫁さんですよ」 


 嬉々とした笑顔で告げられ、今までの駿太なら同じく笑顔で返していただろうが、今はそんな気分には到底なれない。


「誰が嫁だ」

「日本は海外での同性婚を認めていますか?」

「しらねぇし、俺は絶対佳広の嫁になんかならないからな!」

「パートナーにはなってくれるのですか?」

「そういうことじゃない」


 なんで告白の意味も体育館裏もわからないのに、曖昧な日本語の隙をつけるのか。

 

「これからが楽しみですね」

「俺は楽しみくない」

「ぼくは楽しみです。さぁもう一度キスをしましょうか」

「なんでっ・・・・・・んぐ」


 なんでこんなに強引な男の本性に気づけなかったのか。

 過去の自分を苦々しく思いながらやはり上手い佳広のキスにまたしても翻弄されていた。




 ◆END◆


 【あとがき】


ここまで読んでくださりありがとうございます。沖田リオです。

 なんとなく帰国子女が書きたくて書きたくて、ふたを開けたらこうなりました。

 佳広はこのあと、駿太がチェリーだと知って、エロいあの手この手で翻弄していくと思います。

 駿太は抵抗します。けど最終的に堕ちます。とりあえずくっついたと仮定して、恋人同士になったとしても駿太はキスとか情事には抵抗します。けど最終的に堕ちます。

 佳広は駿太のそんなところに惚れたのかもしれませんね。


 さて、ちらっとでてくる黒いジャケットの生徒会長と同じ服きた男2人ですが、これは別の連載小説の登場人物たちです。同じ学園なのでスパイス(になってないが)がてら登場しました。

 生徒会長が主人公の小説にこの話はリンクさせないつもりです。

 ちなみに駿太や佳広は一般生徒という扱いなので黒のジャケットではなく青系統のブレザー着てます。


 にしても駿太、結局生徒会長に注意されたのかな。

 意外と策略家な生徒会長のことだ、伊織に注意しに行けって言ってたりして。

 策略家っていうか腹黒い。


 ではここまで読んでくれたあなたに向かって、grazie


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