1度目の遭遇
# 怪盗シリーズ
## 1度目の遭遇
現場には、まだ雨の匂いが残っていた。
盗まれた美術品。
荒らされていない部屋。
鮮やかな手口。
いつもの男。
世間では「怪盗」なんて呼ばれているが、私にとってはただの犯罪者だった。
人を殺さない。
無駄な暴力は振るわない。
でも、必要なら迷わず人を傷つける。
それがあいつだった。
「……」
床にしゃがみ込む。
警察の調査では見落とされた小さな違和感。
棚の裏。
ほんの少しだけ、埃の跡が違う。
「やっぱり……」
証拠を残していた。
あいつらしくない。
いや。
違う。
残したんじゃない。
戻ってくるつもりだった。
「趣味悪いね」
背後から声がした。
瞬間、身体が固まる。
首元に冷たい感触。
「振り向かない方がいい」
聞き慣れた声。
「まさか」
「その顔を見る限り、気づいてたみたいだな」
ゆっくり息を吐く。
「証拠の回収?」
「正解」
「自分でミスしたものを取りに戻るなんて、随分間抜け」
「そう思う?」
男は笑った。
「君がここに来ることまで計算していたと言ったら?」
一瞬、言葉が止まる。
「……嘘」
「本当に?」
ナイフを少し離す。
その代わり、スマホを取り出した。
画面。
そこに映ったのは――
私の名前。
住所。
過去の経歴。
「調べたの?」
「調べた」
「趣味が悪い」
「君も人のこと言えないだろ」
男は棚へ向かう。
「俺を追い続けて、何ヶ月だ?」
「……」
「毎回現場に来る時間」
「見る場所」
「君が最初に確認する箇所」
淡々と言われる。
「全部、覚えてる」
腹が立つ。
でも、それ以上に。
自分が観察していたつもりで、観察されていたことが分かった。
「だから何?」
私は立ち上がる。
「情報を持ってるからって、勝ったつもり?」
男が振り返る。
「へえ」
「あなたが私のことを調べたなら、私が何をする人間かも調べたんでしょ」
「……」
「こんなところで私を脅してる時間が長いほど、あなたの逃げる時間も減る」
男は少し黙った。
そして笑う。
「強気だな」
「そういう性格だから」
「知ってる」
その瞬間。
照明が落ちた。
「っ」
一瞬の暗闇。
足音。
追う。
だが、もう遅い。
窓。
開いている。
「……」
「惜しい」
声がする。
振り向く。
男は窓枠に座っていた。
手には、小さな証拠品。
「これを探してたんだろ?」
指先で、わざと見せるように揺らす。
「返して」
「無理」
「追いつく」
「君ならそう言うと思った」
男は笑う。
「だから面白い」
「次は捕まえる」
「期待してる」
風が吹く。
次の瞬間には、もう姿はなかった。
残されたのは、空になった棚。
そして。
追い続ける理由が、また一つ増えただけだった。
小説なんて書けないです!
ただ、私のヘキを詰め込んだ妄想物語!
己用!
とはいえ、誰かに刺されば万々歳
よろしく




