オススメはマジックショー
マジックショーを見に行った事はあるでしょうか?
タネも仕掛けも分からないマジックほど面白いですよね、今回はそんな楽しい楽しいマジックショーのお話です。
「お腹すいたな…」
僕は歩きながらキュルルル…となるお腹を押さえた。
お昼寝をそっちのけで学校の友達と遊んでいたから、夕飯前に倒れてしまいそうなくらいお腹が空いている。外は結構暗くなってきているし、お腹が空いていると心なしか少し怖い。
あ〜なんでもいいから何か食べたい…何か食べたい…
すると、どからかいい匂いが漂ってきた。
「…あ、美味しそうな匂い。」
僕は匂いの元を辿っていった。
家に帰る前に少しだけ気になったのと、もう何でもいいから食べたかったから。
(…あそこかな。)
広く、大きな原っぱ。先程僕が歩いていたような住宅街は無く、代わりにぽつりぽつりとキラキラ光る屋台やテントが見えた。
「あ、人もいる。」
僕はそこへ駆けて行った。近づくごとにいい匂いは増していく。
ギュルルル…とお腹がまた鳴り思わず立ち止まったその時、目の前フランクフルトが差し出された。
「え?」
顔を上げるとそこには、クチバシとガスマスクが合体したような、珍しいマスクをした黒マントの人がいた。
「あ、ありがとうございます。」
その人は一言も喋らず、僕に手招きをした。
肉汁溢れる美味しいフランクフルトを食べながら僕はついて行った。アレだけキラキラしていたら何しているのか気になるし、お祭りをやるなんて知らせも無かったのだから。
「うわぁ…!」
見るとそこには沢山の子供、そして混ぜると色が変わるレモネードやシルクハットから飛び出すポップコーン、パウダーをかけるとカラフルになる綿あめ…
不思議で美味しそうな屋台が並んでいた。
しばらく見ていると、遊んでいた子達はいっせいにどこかに歩き出した。
向かっている場所は黄色のテントだった。
歩いていて入ってみると、そこには青いシルクハット、大きなキャンディのようなステッキを持ったヤギのマスクの人がいた。
「やぁやぁ元気な子供達!マジックショーに来てくれてありがとう!さぁ、楽しんで見ていってくれたまえ!」
挨拶の後パチパチパチパチと拍手が飛び交った。
どうやらあの人はマジシャンらしい。一礼すると、スッとシルクハットを脱ぎみんなに中を見せた。どう見ても空っぽだ。そのシルクハットをマジシャンはステッキで3度叩いた。
『ポンッポンッポンッ!』
ワインのコルクが抜けるような音がして、シルクハットからはカラフルなゴムボールが3つ出た。
「お〜!」
前列で見ていた子達が声を上げる。マジシャンは次に自分の額に手を当てた。何をするんだろうと僕を含めた皆、夢中になって見ていた。パッ額から手を外すと、パラパラと大量のトランプカードが落ちた。手の中に隠すには到底収まりきらない量だ。
そのカードの1枚を取り、指をパチンッと鳴らすとカードは明るい火花を散らして緑色のスライムに変身した。
その後のマジックも全部面白いものばかりだった。全くタネや仕掛けが分からない。
最後にまた一礼をしてマジシャンのマジックは終わった。
パチパチパチパチパチパチと僕は大きな拍手をした。
「…ん?」
周囲の席。アレだけいた子供達が誰もいない。
席から僕以外の子供が忽然と消えていたのだ。
「あ、あれ…?」
困惑する僕にマジシャンは言った。
「そうか…!キミが最後に来たお客さんだったんだね!」
確かに僕はこのテントに入ったのは、多分最後だった。けど、それが一体何の関係があるというのか。
怖くなって帰ろうとする僕にマジシャンは言った。
「駄目だよ〜キミには、新しいお仕事をしてモラワナキャ!」
マジシャンは僕の目に手袋をした自分の手を重ねた。
逃げようとするけど、
体は動かない。
段々、意識が遠くなってきた。
あれ、僕は…ボクハ…
なんでここに、いるんだっけ…
「うん、いい夜だ。」
今日も、ボクは暗くなったこの時間帯に夜の街を散歩する。手には美味しいポップコーン。まぁ、ボクが食べるわけにはいかないんだけど。
しばらく歩いていると元気がなさそうな少年がいた。少し近づくとキュルルとお腹が鳴っているのが分かる。ボクは持っていたポップコーンを少年に見せ、話しかける。
「ねぇ!そこのキミ、お腹空いてるの?コレ食べない?あっちにはもっと沢山屋台があるよ!」
少年はパッと顔を輝かせた
「本当?!」
ボクは頷く。
「本当ダヨ!オススメは、マジックショーナンダ!」
いかがでしたか?目の前で繰り広げられた不思議の数々、お楽しみいただけたでしょうか?
次は、あなたの前にも…現れるかも知れません。
見覚えのない黄色いテントには…くれぐれもお気をつけを。




