許嫁に告白された、俺は幼馴染に告白した
※陸視点
赤田が料理の練習を頑張っている。
俺は赤田の料理を味見した。
「おいしい」
「ホント!?」
「ああ、うまいよ」
赤田の表情が明るく晴れた。
―――その後も、俺たち3人の時間はゆっくりと静かに流れていった。
そして、クリスマスの日。
「あんたのことが好き」
―――!?
突然赤田から言われた言葉で、俺の時間は一瞬停止した。
…………
「……何これ、ドッキリ?」
「違うわよっ!!」
赤田のチョップが俺の頭に炸裂した。
「……もう一度言うわ。あんたが好きよ、黄沢陸。
関係はこのままで、お付き合いしてほしいの」
赤田の顔は真っ赤だった。
俺は困惑しまくる。
「いや……ちょっと待てよ……これは親同士が勝手に決めた関係で……お互いに納得できないから親を納得させて婚約解消するって……そう言ってたじゃねぇか……!」
「確かにそう言ったわ。あの頃はあんたと同棲なんて絶対無理、ましてや結婚なんて死んでも無理って思ってた。
そう……思ってた……あたしもこんなつもりなかったのに……好きになっちゃったんだから仕方ないじゃない。
人の心は変わるのよ」
俺をまっすぐ見ながら赤田はそう言った。とてもからかってるようには見えなかった。
「我ながらホントにチョロいと思ってるわ……あんたにちょっと料理を褒めてもらっただけで、すごく嬉しくて料理にハマって、あんたに喜んでもらいたいって思うようになって……
あんた口は悪いけどなんだかんだで優しいし、料理とか何も知らないあたしにいろいろ教えてくれたし……
……好きよ、陸」
「……!!」
「で、どうなの返事は。どちらにせよこのままいくと結婚するのよあたしたち」
濡れた瞳が俺に向けられる。俺は動けない。
「答えてよ。今、この関係に決着をつけましょう」
「……俺は……」
ゴクリと喉を鳴らして、覚悟を決めた。
―――――――――
※空視点
クリスマスの夜、私は外に出ていた。
寒い。ちゃんと着込んできたのにブルッと震えてしまう。
それもそのはず。雪が降ってきていた。ホワイトクリスマスだ。
……りっくんは……赤田さんと一緒、かな……
邪魔しちゃ悪いよね。今こうして外にいるのも、2人の邪魔をしたくなくてできるだけ離れようと思ったからだ。
それに、2人のことを考えると泣きそうになっちゃうから……
「空ちゃん!」
「!?」
よく知っている声。大好きな声。
振り向くと、そこにはりっくんがいた。
急いで来たのか、りっくんは息を切らしていた。雪も白くて、息も白かった。
「……りっくん」
「おう」
「ど……どうしたの? どうしてここに……?」
「キミのお母さんに居場所を聞いて、すっとんできた」
「なんで私のところに……? せっかくクリスマスなのに、赤田さんと一緒にいなくていいの?」
「……いいんだ」
りっくんは拳を握りしめた。
―――――――――
※陸視点
俺は、空ちゃんのところに来た。
空ちゃんは不思議そうな目で俺を見る。
勇気を出せ。赤田もちゃんと言ったんだ。俺も、自分の気持ちに正直にならなくては。
「……いきなりで悪いけど……
空ちゃん、俺はキミが好きだ。ずっと好きだった」
クリスマスの夜、雪が降りしきる中、俺は空ちゃんに愛の告白をした。
ずっと伝えられなかった言葉を、やっと伝えられた。
空ちゃんは停止する。全く動かない。
「―――……
えっ……?」
数秒間停止していた空ちゃんは、カーッと顔を真っ赤に染めた。
「え!? ちょっと待って!? 赤田さんが許嫁なんじゃないの!?」
「婚約は解消した。赤田とも話し合ったし親にもそう言った」
「解消!? な、なんで……!?」
「だからキミが好きだからだよ、空ちゃん」
空ちゃんはさらに赤くなって俯いた。
「そ……そうだったの……私、てっきりりっくんと赤田さんが良い感じで関係が進んでるものだと……」
「昔からずっと、キミは俺の幼馴染だった。なんで今さらこんなことを言うんだって思うかもしれないが……
ずっと好きだったけど、想いを伝えたら今の幼馴染の関係が壊れるんじゃないかって思うとすごく怖くて、なかなか言い出せずにズルズルと時間が過ぎていった。
そんな時に始まった赤田との同居生活。
最初は衝突ばかりで絶対無理だと思っていたが、少しずつ打ちとけて赤田との生活もそれなりに楽しいと思うようになった。
俺は恋についてじっくりとよく考えたんだ。もしかしたらこのまま赤田に惹かれていって、赤田を好きになるかもしれないって思ったこともあった。
……だが、いくら考えてもどれだけ悩んでも、何度考えてもどうあがいても……
俺が好きなのは、空ちゃんなんだ」
「―――……っ!!!!!!」
俺の脳内に、赤田に言われた言葉がよぎった。
『人の心は変わるのよ』
「いくら時間が経っても、俺の心は変わらない」
そう、変わらない。空ちゃんを好きな気持ちは、永遠に変わらない。
「…………私で……いいの?」
「ん?」
「私……ドジでマヌケで弱虫で……赤田さんの方が元気で明るくて可愛いのに……
あとで後悔しない? やっぱり赤田さんにしとけばよかったってならない?」
「……空ちゃん。これ、覚えてるか?」
「えっ?」
いつも大切に持っているものを、空ちゃんに見せた。
見せたものは、ビー玉だ。
「……! そ……それはっ……!!
…………
……なんだっけ?」
「……覚えてないか……」
空ちゃんは覚えてなかったようだ。俺はちょっとズコーってなった。
「まあ覚えてないのも無理はない、小学生の頃の話だからな。
このビー玉は空ちゃんがくれたものだ」
「私が……キミに……?」
「ああ。忘れもしないあの日……
俺は父さんに怒られて泣いていた」
―――――――――
俺たちが小さい頃の話。
父さんにこっぴどく怒られた俺は泣きながら歩いていた。
その時、空ちゃんに会った。
「どうしたのりっくん」
「空ちゃん……」
「何かイヤなことでもあった?」
「……うん……」
「そっか……じゃあ、これあげる!
だから元気出して!」
笑顔の空ちゃんは、俺にビー玉をくれた。
何よりも輝いていて、俺はすぐに泣き止んだ。
―――――――――
「空ちゃんにとっては大したことないことだったかもしれないけど、あの日キミからもらったビー玉で俺はすごく元気をもらったんだ。
俺は……空ちゃんのいいところも知り尽くしている。
何事も一生懸命で、人が嫌がることでも自ら進んでやる空ちゃんの姿を俺はいつだって見てきたんだ」
「……りっ……くん……」
「とにかく誰が何と言おうと俺は空ちゃんが好きだ。
返事を聞かせてくれ」
―――ガバッ
「!!!!!!」
次の瞬間には、俺は空ちゃんに抱きしめられていた。
「私も好き……! 好きですりっくん!!」
雪が降りしきる夜空に、空ちゃんの愛の言葉が響き渡った。
「私も小さい頃から……ずっと……ずっと好きだった……!」
涙で震えている空ちゃんの声。とてもとても愛おしい。
「……ああ。
小さい頃の約束はちゃんと守る。
今度は恋人として、一生キミを守るから」
「……!!
約束……覚えててくれたの……?」
「当然だ。空ちゃんとの想い出はすべて覚えている」
「そっか……ごめんね。私だけ大切な想い出忘れちゃってて……」
「何も気にする必要はない。
想い出はこれからいくらでも作っていけるんだからな」
「うんっ!」
空ちゃんの笑顔がいっぱい咲き誇った。
―――
―――俺と空ちゃんが恋人になって3年の月日が過ぎた。
3年経っても俺たちは何も変わらずラブラブ交際を続けていて、今日だってデートだ。デートの待ち合わせをしている。
「りっくーん!」
聞き間違えるはずもない、大好きな彼女の声。
声がする方を振り向く。
「おまたせ!」
今日も空ちゃんはありえないほど可愛くて、私服姿もとても似合ってて俺は少し赤面した。
「じゃあ行こっか」
「あ、ああ!」
手を繋いで、デートを始めた。
「あっ、そうだりっくん!」
「ん?」
「私すごいもの見つけたんだ、見て見て!」
空ちゃんがスマホを見せてきたので、俺はスマホを覗き込む。
俺は画面に表示されている記事を見て驚いた。
『人気洋菓子店店長、赤田海』
記事には確かにそう書いてあった。
「あ……赤田……!? あいつ、パティシエになったのか……」
「すごいよね~!」
料理にハマったとは言ってたが、店長になるまでになったのか。
クリスマスの夜、赤田は家から出ていった。それから一度も会ってないけど、ものすごく頑張ったんだな。
感服せずにはいられず、俺はキレイな青空を見上げたのだった。
『許嫁の美少女と同居するラブコメが始まったんだが、俺は幼馴染を選びます』
―――END―――
これにて完結となります。
ありがとうございました。




