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私の持つ闇の力

「う、うーん……」

私は気が付くと、白い天井が目に入りました

「ここは?」

その時、突然私の顔を誰かが覗きました

「まあ豊子世!目が覚めたのね!」

それはお母様でした

お母様は私を、覆いかぶさる様に抱きしめてくれました

ボッとしていた私でしたが、お母様の感触、温もり、香りを受けて

だんだん頭が覚めて来ました

やがて抱きしめられ過ぎて苦しくなって来た際

「あっ、そうそう!先生か看護師さんを呼ばなきゃ!」

お母様はそう言って抱擁を解き、近くのスイッチを押しました

それから間もなくして、看護師さんが2人入ってきたのを見て

私は今病院に居ると自覚したのです



やがて女性の医師の先生が来て、私を一通り診た後

「問題は無さそうですが、とりあえず今夜は病院でお過ごしくださいね」

と、笑いかけてくれました

先生はそう言って出ていくと、入れ替わりに診察中は外に出ていたお母様が入って来ました

「本当に良かったわ、あなた、登校中に事故に巻き込まれてから、もう半日目を覚まさなかったのよ」

「半日もですか!?」

「ええ、外傷は無かったけど、きっと精神的なショックが大きかったのね」

お母様がそう言った後、ふとお母様の顔を見てみると

お母様は目は赤くなり、少し腫れていました

きっと私の事を心配して泣いてくれたのだろうと感じましたが、口には出さずお母様に心の中で感謝しました

それから外を見てみると、綺麗な夕焼けが窓から見えます

お母様は私の近くに来て座ると

私が運ばれて来るまでの経緯を教えてくれました

「ニュースで見たわ、バイオレンスジャックが銀行の金庫を爆破した事で街がパニックになって、その反動で車が事故を起こしてしまったそうね

警察の方が調べてくれたわ」

お母様がそんな話をした時、私はハッとして

「そうだ!お母様!番田さんは?番田さんの容体は!?」

「番田さんも大丈夫よ、ただ頭を深く切ってしまって、10針縫う手術をしたから、まだ眠っているわ」

「そうですか、安心しました」

「あなたは本当に優しい子ね、事件後あなたのSOSを聞いた通行人の人の話によると、意識が朦朧としている中でも、番田さんを助けてと、伝えていたそうね」

「そう、なんですか?私あの後すぐに意識を失ってしまった気が……」

「実はさっきまで、清瀧院さんの所の亜友ちゃんも、吹舞木さんの所の春風ちゃんも、お見舞いに来ていたのよ

それから、ピアノ教室が一緒だったひのでちゃんも、学校の新体操部で一緒の芽々さんも、それからもう一人、後輩の子でえーと、キヅキさんだったかしら?」

日月ひづきさんじゃないですか?」

「そうそう、日月みちるさんね、とても心配していたわ、ただあなたがいつ目を覚ますか分からなかったから、今日はもう帰ってもらったわ」

「そうですか、嬉しいですけど心配をかけて帰らせてしまったのですね…」

私がそう言ってしゅんとした瞬間

お母様の胸が私の頭を包みました

「そんな悲しい顔をしないで、あなたも番田さんも助かったの、生きているのよ、それだけでお母さんは嬉しいわ、もちろんお父様もね」

「お母様……」

お母様にこんな風に抱きしめてもらっていると、やっぱり安心感が有りました

するとその瞬間、なんだか急に瞼が重くなってきました

「お母様、ごめんなさい…なんだか私、また眠く……」

それを聞いたお母様はハッとして

「そうよね、まだ色々有って頭が混乱しているでしょうから、ゆっくりお休みなさい」

お母様がそう言ってくれたと同時

私は「ありがと……」『うございます…』 

と言い切る前に、私は眠りに落ちてしまいました




「………め、

…………すめ!

娘!目を覚ませ!」

「う、うーん、誰?」

私が目を開けてみると、闇のエンジェルコンパクトが私の前で浮いていました

驚いた私は、思わず飛び起きました

「闇のエンジェルコンパクト!さん…」

驚きながらも、私は呼び捨ては悪いかと思い、とっさにさんを付けました

「堅苦しいのはよせ、私とそなたは、相方同士だ

呼び捨てでよい」

「ははあ、そうですか?……って!それより大丈夫ですか!?こんな所に出て来て」

「案ずるな、ここはそなたの夢の中だ、ちょっとそなたと話がしたくて少し魔法で眠ってもらったのだ」

闇のエンジェルコンパクトにそう言われて周りを見渡してみると

私が寝ていたのは、確かに病院のベッドでしたが

周りは暗く、窓もドアも有りません

私は状況を理解すると、闇のエンジェルコンパクトに聞きました

「話って言うのは?」

「単刀直入に言おう、娘よ、そなたは闇の魔法とトテモ相性が良い様だだ!まさかこんなにも早くダークデスオーラが使えるとはな」

「ダーク、デスオーラ?」

前世の私の記憶のなかで、確かに聞いた事がある技名でしたが

イマイチ、ピンと来ませんでした

私がしっくり来ないでいると、闇のエンジェルコンパクトが続けました

「敵に向かって、最大級に高まった怒り・怨み・憎しみ・苛立ち・破壊衝動の5つの闇感情の気を敵に飛ばす事で、相手の命脈を断つ技だ

まさか我を手にした数日であの様な技を会得するとは、そなたの持つ闇の力が強い証拠だ」

そう盛り上がる闇のコンパクトでしたが、私は今の話に断然聴き逃せ無い所が有りました

「命脈を断った?!私が!?」

私の驚きとショックをよそに、闇のエンジェルコンパクトは続けました

「しかし、あれはかなりの大技だからな、まだ魔法少女として覚醒して間のないそなたは今、酷く体力を消耗してしまったはずだ

ただでさえ今日は疲れていたようだからな

半日眠っていたのがその証拠だ

だが、きっとこれから経験を積んでいけばきっと使いこなせる様になる筈だ、そなたの信じた生き方で腕を磨くが良い

これからも共に歩んで行こうぞ」

闇のエンジェルコンパクトは、私にそう告げて消えて行きました

私はダークデスオーラの恐ろしい性質を聞き

震えが止まりませんでした

『あの時、私はゼツボーン男爵とバイオレンスジャックの戦闘員達を、一気に倒したと言うの?

闇の魔法で!?

ダークデスオーラなんて恐ろしい技……』

そしてそれと同時に私はまた思い出しました

「そうだ!この技、ダークネリアが終盤で一回だけ使ってた!?

でも強くなったエンジェシカには何の意味も成さずに掻き消されて

技の解説も無かったから、あまり印象に残らなかったんだっけ?

まさかこんなに恐ろしい技だったなんて…」

でもいつまでも震えている訳には行きません

まずは技が発動してしまった理由を整理にしてみる事にしました

「確かエンジェルコンパクトの話では

怒り、怨み、憎しみ、苛立ち、破壊衝動の5つが

頂点に達した際にダークデスオーラは発動すると言っていたわね

怒り、怨み、憎しみ、苛立ち、破壊衝動か……

確かに言えてるかも


ゼツボーン男爵によって私の友達は酷くなぶられて傷つけられた

その怒り


自分本位で行ったゼツボーン男爵の作戦によって

転生して以来忘れていた辛い思い出を呼び起こされた

その怨み


何よりゼツボーン男爵属するバイオレンスジャックに

街を幾度となく襲われて恐怖に震えさせられた

その憎しみ


エンジェシカ達を助けたいのに上手く行かなくてヤキモキした

その苛立ち


そしてそれを与えた張本人が目の前にいる事で生まれた

その破壊衝動


それだけの闇感情が私から溢れて、ダークデスオーラとして、ゼツボーン男爵と戦闘員達に牙を剥いたのね……


私は仲間にはなれなくても、ダークネリアとしてエンジェシカを、大切な友達を支えると決めたし、それは今も揺るがない

そしてそれは、バイオレンスジャックとも戦って行く事を意味する

もちろん覚悟は決めてる

でも、こんな残酷な技で敵を倒すなんて……

何よりそれだけの力が私に備わってしまって居るなんて

なんて恐ろしい、なんて悍ましい、なんて無慈悲な……

こんな運命しか私には無いの?」

気がつけば、私の目からは涙が出てきていました………

私は闇に包まれていく感覚に陥りました




「…………よっ!」




「………こよっ!」



「……豊子世!!

お願い!聞こえているなら起きて!」


「はっ!」

闇の中から聞こえた強いながらも何処か優しい呼び声に呼ばれて、私は目を覚ましました

そこには心配そうに私を見下ろしているお母様とお父様が居ました

「お母様、お父様」

私が目を覚ますと、2人は安心した顔を見せてくれました

「良かった、目を覚ましてくれて」

「涙と汗を溢れさせて魘されていたから、お父さんは心配だったぞ」

「えっ!?」

お父様にそう言われて両手で顔を触ってみると

確かにビショビショに濡れていました

私は恥ずかしい姿を見せてしまったと思い、顔から火が出そうでした

すると

「あなた!事実とは言え、嫁入り前の娘に恥をかかせないでください!」

と、お母様がお父様を叱りつけました

「そうは言っても、心配だったんだからしかたないだろう?!お前だって豊子世が心配だったんだろう!?」

お父様はそう言い返してますが、どうにも強く出られない様で、何処か覇気に欠けました

私はお母様とお父様のそんなやり取り見て

恥ずかしい気持ちは何処へともなく消え

温かな気持ちに包まれました

「お父様お母様、心配をかけてごめんなさい、ちょっと怖い夢を見たようで…」

私は身体を起こすと、近くにあったタオルで顔を拭きました

そんな私に、両親は口論を止め、優しい言葉をかけてくれました

「無理もない、あんな怖い目に遭ったんだ、心が乱れているんだ、豊子世は繊細な子だからな」

「何より、あなた最近、頑張り過ぎているわ、何となく気にはなっていたけど、家でも少し元気が無かったし、学校のお友達から聞いたけど、最近は色々助けてあげてるそうじゃない

お友達を大切にするのは良い事だけど、自分をもっと大切にしなくてはダメよ」

その言葉を聞いた私は、また涙が出てきそうでした

悲しみや絶望では無く、嬉しさの涙が

だって自分の両親は普段口に出さなくても、ちゃんと私を見守り、理解をしてくれているですから

でもここで泣いたら、また心配をかけてしまうので

涙を堪えて代わりにお願いをしました

「お父様、お母様、もし良かったら

私を挟むように抱き締めてくれませんか?

なんか2人にそうしてもらいたい気分なんです」

私はそう告げると、お父様とお母様は驚いた表情を浮かべていましたが

「「もちろん!」」

と、声を揃え

「愛する娘のためなら!」

「大切な娘のためなら」

と言って、お父様は右側から、お母様は左側から

私を抱き締めてくれました

『あったかい……』

これからも闇の魔法と真剣に向き合う事が必要になるだろうけど

今だけはそれを忘れてこの時間を過ごしたいと思いました

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