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ダークデスオーラ

私はバイオレンスジャックの戦闘団で構成される窃盗団を1人残らず捕らえ

エンジェシカの事をよく研究していたベテラン戦闘員も、キョンシーとしてこちらに引き込む事に成功しました

下水を被せられた私は

帰ってすぐにシャワーを浴びました

宮楽家は富豪

お風呂場はちゃんとありますが、実は自室にも小さな浴室が付いているのです

「ふーー、ひどい目に遭ったわ、でもなんとか阻止出来て良かった」

私は石鹸の泡がみんな落ちたのを確認して、シャワーを止めました

浴室を出て、身体をよく拭いて、パジャマを着て

ドライヤーで髪を乾かして行きます

「すっかり寝るのが遅くなってしまったわ、明日は寝不足ね

でも軍資金を手に入れる作戦は阻止したし、少しの間はバイオレンスジャックもおとなしくしてるんじゃないかしら?

とりあえず明日から、エンジェシカ道場の調製を始めて、1日も早くエンジェシカに戦闘経験を積ませないと!

手遅れになってしまう前に!」

私はそんな事を思いながら、髪を乾かし終え

ベッドに入ると間もなくして眠りにつきました



次の日

私はなんとか、寝坊もせずいつもの時間になんとか起きる事が出来ました

眠気に負けそうでしたが、顔をジャブジャブ3回洗い

お尻をつねって自分をしっかりさせました

そうして朝ご飯もしっかり食べて、制服に着替えた私は

『今日もエンジェシカを支える為に頑張ろう!』という決意を胸に玄関を出て

送迎の車に乗りました

「豊子世、今日も良く学んでいらっしゃい」

「はい、お母様」

「では番田さん、今日もよろしくお願いしますね」

「はい、奥様」

「ではお母様、行ってまいります」

私は見送りに出ていたお母様にそう挨拶すると

窓を閉め、車は宮楽家を静かに出発しました

周りでは使用人の何人かが出て来て会釈をしながら、私の乗る車を見送ってくれていました

幼稚園の頃から見ている光景ですが、前世の記憶が戻った今は、なんだか恥ずかしさも有ります


「お嬢様、昨夜はあまりよく眠れなかったみたいですね」

番田さんがハンドルを取りながら私にそう聞きました

「分かりますか?」

「ええ、なんだか目がとろりとしている様に見えますので」

「番田さんには敵いませんね」

「お嬢様が生まれた頃よりお仕えしておりますので」

そうして楽しく会話をしていると

あの銀行の前に車が差し掛かりました

『昨日は大変だったけど、金庫をバイオレンスジャックの魔の手から守れて良かったわ』

私がそう思っていたその時でした

バーーーン!!

激しい音がして、銀行の内部から強い風と粉塵が車に襲いかかってきました

「きゃっ!!?」

私が思わず身を屈めると

パン!!!

今度は車の後から何かが弾ける音がしました

どうやら今の衝撃で後のタイヤがパンクしてしまったみたいです

「お嬢様!!しっかり掴まっていてください!!」

番田さんが強い口調でそう言うと、車は右に左に動きました

他の車にぶつからない様にコントロールをしながら

なんとか安全な場所で車を止めようと番田さんが全力を尽くしてくれているのです

私は恐怖に震えながらも番田さんを信じて伏せていました

しかしその中で、私の記憶に何か禍々しい物が溢れてくる感覚が有りました

『私、以前にも似たような状況に陥った気がする……

この気持ちは一体?……』

その時

「お嬢様!!頭を守って歯を強く食いしばってください!!」

番田さんはそうしてハンドルを左に強く切ると

強い摩擦音と焦げ臭いにおいと共に

バーーーン!!

車は強い衝撃を持って止まりました

私は番田さんの言った通りにしたので、怪我をした感覚は有りませんでしたが

受けた衝撃が身体に響き

間もなくして意識が遠退いて行きました……



私が気がつくと

目の前に広がったのは

綺羅びやかなイルミネーションが光って

ロマンティックな音楽が流れる街の中

目の前に有るのは飾り付けられた私が十人肩車してもまだ高いもみの木

「ここは、何処?」

私はそう口に出しましたが、不思議な事に私はその言葉が外に出ていない感じがしました

すると

「みまもっちー!」

「ミモちゃん先輩!」

見守みまもー!お待たせー!」

3人の女性が私に手を振りながら近付いてきました

孝子たかこ先輩、更紗さらさちゃん、一美かずみ

私の視線がその女性の方に向き、どんどんその3人の方に近づいて行きました

ただ、移動しているのに、私は何故か身体がまったく動いた感覚がありませんでした

でも何より私が気になったのは

「今、見守って呼ばれたよね?」

そこで、私は悟りました

「これはもしかして、私の前世・四束見守しづか・みまもの記憶の中!?

つまり私は今、映画館みたいに前世の記憶をみているという事かしら?

確かにそれならさっきまでの不思議は皆説明がつく

これは四束見守の記憶だから宮楽豊子世である私では干渉できないって事なのね」

私は謎が解けて、頭がスッキリしました

「この風景と感じからするとクリスマスの時期よね?

確かに、入社3年目のクリスマスイブの日、社内の仲の良い友達で集まって遊んだっけ?」

そうして見続けていると

見守時代の私は、友達3人と

楽しく食事をして、プレゼント交換会をして

カラオケにも行ってとクリスマスイブの日を謳歌していました

懐かしくて、ほっこりする思い出を見返す中で

私はなんだか胸騒ぎがしました

何だか嫌な予感がしたのです



楽しい時間があっと言う間に過ぎて、私たちはカラオケ店の前で解散しました

「楽しかったねー」

「盛り上がったねー」

「新年会も4人でやりましょう!」

「じゃあ皆さんメリークリスマス!!」

「「「メリークリスマス!!」」」 

そうして私達は家路に着き、それぞれ人混みの中に消えて行きました

『会社でも良い友達に恵まれて幸せだなー私』

そうして今日の余韻に浸っていた私

本当に今日は楽しかった

そう、この時まではそう思っていました

「ハッ!?そうだ!この後!……」

私がそれを思い出した時、それは起こりました

ビー!ビー!ビー!

ビー!ビー!ビー!

見守である私のスマートフォンが強く鳴りました

周りの人達のスマートフォンも同様に

『このアラームは!?』

見守である私がそう思った瞬間

突然起きた激しい揺れ

お店の立て看板がバン!バン!と倒れ

ビルの窓ガラスも割れ始め

街中の人々が悲鳴をあげました

そう、この日私の暮らすこの地方を大地震が襲ったのです

私も恐怖で動けなくなっていると

突然街灯が私目掛けて倒れてきました

『ハッ!………』

急いで逃げ出しましたが、手遅れでした

「うわー!」

私は街灯の下敷きになってしまいました

「い、痛い……苦しい……動けない……誰か…助けて……」

私はそう声を出しましたが

誰もが皆自分の事だけで手一杯

私を助けてくれる人は居ませんでした

やがて揺れは収まり、私は街灯の重みと身体の痛みに耐えながら助けを待っていました

「嫌よ……こんな素敵な日に死ぬなんて………私は生きる!………生きてまた楽しい事するの!!」

私は決意を胸に歯を食いしばりましたが

その決意は運命に寄って踏みにじられました

直後に街の壊れたスピーカーから

ウーーーーー!

というサイレンが響きました

地震の警報ではありません、それは

『近隣国からミサイルが発射された合図!?

どうしてこんな時に!?』

しかもサイレンの後、スピーカーから聞かれたのは

「ミサイル、落下警報!…ミサイル、落下警報!」

私の絶望が最大限にまで引き上がった瞬間でした

『どうして!?いつもなら飛び越えて海に落ちるのに……』

私は逃げようともがきましたが、何だか身体が痺れた気がしました

街灯に下敷きにされた時、どうやら背骨が傷ついてしまった様です

そしてその瞬間、大分遠い所からヒューンという落下音と共に

小さいながらも人々の悲鳴、そして爆発音が響き

激しい風で何もかもが真っ白になった瞬間

私の視界から全て物が消えました

四束見守としての私の人生は、こんな形で終わったのです………



「ハッ!!……」 

気が付いてみると私は、宮楽豊子世に戻っていました

「今のは夢?」

その時、頬に何かを感じたので触ってみると

それは涙でした

前世での悲惨な死に方が、今起きた事に重なり

知らずしらずのうちに私は泣いていたのです

顔を上げてみると

番田さんがエアバッグに守られてはいましたが

頭から血を流し気絶していました

「番田さん!?番田さん!しっかりしてください番田さん!」

私は番田さんを揺すりましたが、反応がありません

その時です

「ファイヤーボールアタック!!」

「サイクロンアタック!!」

ファイアリスとウィングレイスの声が聞こえてきました

私は番田さんが心配でしたが、エンジェシカを支えるのが私の使命

車を降りて外に出ました

するとさっき爆発が起きた銀行の所でエンジェシカが戦っていました

その相手はなんと、ゼツボーン男爵でした

「私は視覚が無い分、空気の感じ方には自信が有るのですよ」

そう言って、優雅に避けたゼツボーン男爵

外れた攻撃は近くのビルに当たり、傷がついてしまいました


「あっ!」「いけない!」

ファイアリスとウィングレイスが攻撃失敗に動揺した瞬間

「その隙いただきましたよ!」

ゼツボーン男爵はあっと言う間に、2人の間の距離を潰し

2人の腹部辺りを持っていたステッキで突きました

「ぐっ!」「うぐっ!」

私の目にはさほど強く突かれた様には見えませんでしたが

ファイアリスとウィングレイスは強く弾き飛ばされてしまいました

「ファイアリス!ウィングレイス!」

「よくも大切な仲間をやってくれたね!!」

「ゼツボーン男爵と言いましたね?絶対に許しません!!」

ウォルタニーヌ、フラワネット、ライトゥミーナは激しく怒りました

するとゼツボーン男爵は

「私は早く帰って朝御飯ブレックファーストをいただきたいのですよ

しかし、昨日資金集めに向かった部下達が全員行方不明になってしまったので、穴埋めとして大総帥様からじきじきに資金集めの命令が来てしまったので、こうして部下共々銀行におじゃまさせていただいたのです

早く事を済ませたいので、金庫を爆弾で爆破させていただきました、まあ少し威力が強すぎてしまったようで、それについては私も悪いと思わなくは無いですが」

と、丁寧ながらも悪意たっぷりに言い放ちました 

私はゼツボーン男爵の悪逆非道な行動と言動に

『人のお金を盗むだけでも許せないのに、そんなぶっそうな物で街と人達を混乱させて!!」

全身が燃え盛る様な怒りを感じていると

「今ので私の堪忍袋の尾は完全に切れました!!」

「あたしも本気の怒りモード突入したよ!!」

「あなた達を絶対に基地には帰しません!!」

と、ウォルタニーヌ、フラワネット、ライトゥミーナは攻撃再開のスタートを切り

ゼツボーン男爵と激しく戦い始めたのを見て

私は気を取り直しました

「私も見ていないで変身しなきゃ!」 

そうしてカバンからコンパクトを取り出したその瞬間、私は思い出しました

『そうだ!番田さんが今怪我をしているじゃない!

早く病院に!!……

でも、エンジェシカを、しかも3人だけでこのままゼツボーン男爵と戦わせたらまずいわ

番田さんごめんなさい、すぐに済ませて救急車呼びますから!』

私は番田さんに心で何度も詫びながら、物陰に入り

「レインボシスエナジー、ダークネスオブメタモルフォーゼ!」

ダークネリアに変身し

ビルの影に飛び込んで潜みました

『ゼツボーン男爵め!ダークマリオネティスかけちゃうんだから!』

そうして私はゼツボーン男爵の隙を探しました

でも、なかなか隙が掴めません

「スプラッシュアタック!」

ウォルタニーヌが激しい水流を放つと

ゼツボーン男爵はギリギリで水流に杖を差し

見事に二つ割りにしてしまいました

「私は目が見えない代わりに耳も良いのですよ、水の流れる音を聞けば、何処をさせば水が割れるか等お手の物です」

そう言うとゼツボーン男爵は、技を破られて固まってしまっていたウォルタニーヌとの間隔を、即座に潰し

「はっ!……」

ウォルタニーヌが気づいた時には、もう回避不可能な所に居ました

「あなたには退場願います、ごきげんよう」

そう言って、ウォルタニーヌをステッキで突き

「きゃーー!」

ウォルタニーヌは強く飛ばされて、ビルの壁に叩きつけられてしまいました

『あっ!ウォルタニーヌが!』

私はウォルタニーヌも心配でしたが

今はゼツボーン男爵を止めなくてはと気を取り直しました

でも、その時には

「うわー!」

フラワネットが私の隠れているビル陰のすぐ近くにまで飛んできて、電信柱に激突してしまいました

『あっ!フラワネット!』

私が気を取られてよそ見をしていたばかりに

フラワネットまでこんな目に

私の中に、今まで感じた事の無い程の自責の念が湧いてきました

『いやいや、今は集中しなきゃ!つまり今残っているのは…』

私がゼツボーン男爵が居る所に目をやると

ライトゥミーナが1人で戦っていました

ステッキを盾に変えたライトゥミーナは

ゼツボーン男爵の突きをその盾で懸命に受け止めています

「これは面白い、話には聞いていましたが、その構えだと攻撃を全く通さないのですね」

ゼツボーン男爵は盾の性能に驚きながらも、何処か楽しそうにしていました

「しかし、守るだけではどうにもなりませんよお嬢さん」

その通りで、ライトゥミーナは守るのに必死で

全然反撃の間を掴めずにいます

表情には明らかに苦しさが出始めて居ました

『早く男爵を止めなきゃ!』

私は、ダークマリオネティスをかけようと必死にタイミングを探しますが

思った以上に早いゼツボーン男爵の動きでなかなか狙いが定まりません

いけない事ですが、私は段々とイライラしてきました

『ゼツボーン男爵め!ちょこまかと!

エンジェシカを傷つけただけでなく

街と銀行をめちゃくちゃにして、パニックに陥れて!

それにせっかく私の思い出すだけでも悲しくてつらい記憶まで呼び起こして!

ゼツボーン男爵!あなたなんか!!バイオレンスジャックなんか!!必ず私の手で!!!……』

私の感情が激しく揺さぶられたその瞬間

ポプッ

なんだか私の身体から空気が一気に抜けた様な感覚が走ったと思った瞬間

突然全身から力が抜け私はへたり込んでしまいました

そしてその瞬間

「うっ………」

ゼツボーン男爵が急に動かなくなり

バタンと倒れたのです

その近くに居た戦闘員達もです

「えっ?」

ライトゥミーナも何が起きたか分からない様です

近くで見ていた私や街の人達も同じでした、でも

「うおーーー!エンジェシカの粘り勝ちだー!!」

「さすがエンジェシカ!奇跡を見せてくれた!」

街の人達は歓声を上げました

その歓声を聞き、倒れて動けずに居たエンジェシカのメンバー達も起き上がって来ました

「ライトゥミーナ!あなた勝ったのね!」

「凄いよライトゥミーナ!!」

皆駆け寄ってきて、ライトゥミーナを褒め称えました

ライトゥミーナは自分の手柄でないと分かっているので

右往左往していました

私も、一体何が起きたのか全く分かりませんでしたが

ある事に気が付きました

なんと、知らない内に私の変身が解けていたのです

「元に戻ってる?!どうして?変身解除はしてないのに?」

色々疑問は残りましたが

私には優先事項が有りました

「そうだ、早く助けを呼ばなきゃ、番田さんが!」

私は立ち上がろうとしましたが、力が入りません

更には目眩すらして来ました

『でもここで倒れる訳にはいかない』

私はずりずり這いながら前に出て、今出せる1番の声で言いました

「だれかっ!……きゅ、救急車を、呼、ん、で、く…」

しかし、私の体力も、もう限界でした

一瞬、ライトゥミーナとファイアリスがこちらを見てくれた気がしましたが

私の意識は闇に消えて行ったのです…………

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