エンジェシカ、大ピンチ!!
この日私はお母様の誕生日プレゼントを買いに
1人デパートへ出かけていました
因みにお母様には、お友達の誕生日プレゼントを買うと言って出かけました
何処かへ行くかちゃんと報告しないと、お母様は外出を許してくれないので
「良いプレゼントが買えたわ、お母様喜んでくれると良いなー」
私がそうやって、あるテナントから出てくると
ドーン!
大きな音と共に
「キャーー!」「バイオレンスジャックだー!」
と、下の階から声がしました
私はフロワーに出て、吹き抜けから下を見ると
「ハッハッハッハッー!バイオレンスジャック怪人! ドクサイダー!参上!!」
ドイツにかつて実在したとされる軍人独裁者を思わせる軍服風の格好をして
黒のファントムマスクをつけた怪人が
戦闘員をぞろぞろ引き連れて、店内の中央に現れたのです
「このデパートは本日只今より、我々バイオレンスジャックの支部とする!!
店員に客ども喜べ!貴様ら一人残らず我が支部の奴隷として、生涯仕事に困らない様にしてやろう!!
さあ戦闘員共!ここに居る奴ら全員捕らえるのだ!!」
「バイジャーック!!」
命令に組織特有の返事をした戦闘員達は、逃げ惑う店員さんや買い物に来たお客さん達を次々にとらえてさ縛り上げて
怪人ドクサイダーの前に押し出しました
上の階にも続々と上がってきているのを確認した私は
『ここに居たら捕まってしまう!』
と強く感じたので
とにかく逃げる事にしました
他のお客さんや店員さん達と逃げる中で
私はまた記憶に残っている事が頭に浮かびました
『そう言えば、あの怪人ドクサイダー、見た事が有るわ
確か魔法少女エンジェシカのある回の冒頭で、エンジェシカにやられていた怪人だわ!
確かにあの時、デパートを襲っていた
迂闊だったわ、もっと早く思い出せれば良かったんだけど……』
そんな風に後悔していると
私達の前方に、バイオレンスジャックの戦闘員が3人現れました
「バイジャーック!やい奴隷共!逃げ場はないぞ!」
戦闘員達は銃を持っていました
道を塞がれ、後ろに逃げようとしましたが
後ろからは、4人組の戦闘員が現れて、私達は挟まれてしまいました
「バイジャーック!観念しろ!」
私達が逃げる手だてを完全に失ったその時
「そこまでよ!バイオレンスジャック!」
頼もしくも、この街の人が皆待っていたであろう声が響きました
「むむっ!現れたな小娘ども!!全戦闘員!人質は捨て置いて、戦闘配置につけ!!」
「バイジャーック!!」
私達を追い詰めた戦闘員達は皆、下に降りていきました
私は急いで吹き抜けに走り、1階の様子を見ました
そこにはバイオレンスジャックと対峙する
あの5人の姿が在りました
「炎よ燃えろ!世界を暖めよ!赤の魔法少女ファイアリス!!」
「水よ湧き出せ!世界を潤せ!青の魔法少女ウォルタニーヌ!!」
「花よ咲け!世界を包め!緑の魔法少女フラワネット!!」
「風よそよげ!世界を癒やせ!白の魔法少女ウィングレイス!!」
「光よ溢れろ!世界を照らせ!黄の魔法少女ライトゥミーナ!!」
「「「「「魔法少女!エンジェシカ!!」」」」」
それぞれの名乗りとポーズを決めたエンジェシカに
周りから歓声が飛んでいました
「エンジェシカが来てくれた!」
「もう安心だわ!」
エンジェシカが助けに来た事は、ここに居る全ての人達に希望を与えたのです
「エンジェシカ!今日こそ倒してくれるわ!
かかれーー!!!」
「バイジャーック!!」
ドクサイダーの一声により、戦闘員達はエンジェシカ達に襲い掛かりました
エンジェシカ達もステッキを構え応戦します
「ファイヤーボールアタック!」
ファアリスが無数の火球を飛ばし
戦闘員達にぶつけます
「うおー!」「うわー!」
「スプラッシュアタック!」
ウォルタニーヌが荒波を生み出し
戦闘員達に放ちます
「のあー!」「のまれるー!」
「フラワーハリケーンアタック!」
フラワネットが花吹雪を起こして
戦闘員達に向けます
「どわー!」「やられたー!」
「サイクロンアタック!」
ウィングレイスが強い風を吹かせて
戦闘員達を吹き飛ばします
「ぬあー…」「飛んでいくー!…」
「ホリーライトアタック!」
ライトゥミーナが眩い光を照らしつけ
戦闘員達の目を晦ませ動けなくします
「まぶしーー…」「前が見えない……」
こうして多くの戦闘員達がやられて行きましたが
その魔法攻撃を躱したり、防いだりして
近くまで来た戦闘員達も少なくは無く
次にエンジェシカはステッキを武器に変えて戦います
「炎の剣術!火炎の一振り!」
ファイアリスの剣が炎を纏って、戦闘員達に浴びせられます
「「「うおーー!!!」」」
「水流槍術!一流!!」
ウォルタニーヌの槍突きは、川の様に穏やかながらも
その流れで飲み込むかの様に戦闘員達を弾き飛ばします
「「「うおーー!!!」」」
「花の弓!三矢!!!」
フラワネットが放った矢は一気に3本、その矢の一本一本が戦闘員達を居抜きます
「「「うおーーー!!!」」」
「風のブーメラン!!」
ウィングレイスが投げたブーメランは、大きく輪を描いて戦闘員達を的確に倒していきました
「「「うおーー!!!」」」
そうしてブーメランは、ウィングレイスの元に戻ります
「ライトシールド!守り!」
ライトゥミーナは盾を前に出し屈みました
この姿勢になると、如何なる攻撃も通さず跳ね返されます
「「「うおーー!!!」」」
突撃した戦闘員達が攻撃を跳ね返され、飛ばされて行きました
その後透かさずライトゥミーナは立ち上がり
「ライトシールド!突撃!」
と叫んで、前に飛び出しました
その突撃を受けた戦闘員達はどんどん吹き飛ばされて行きました
ちょっと魔法少女らしくは無いけれど
まるで強硬戦車の様な突撃は、本当に強くてかっこいいです
アニメで何度も見ているエンジェシカの戦闘シーン
しかし記憶を思い出してから、こうして間近で見るのは初めてなので、私は興奮していました
周りからは
「良いぞーエンジェシカ!!」
「わるいやつらをやっつけてー!!」
エンジェシカを応援する店員さんやお客さん達の声が響いて居ました
私も他の人に混ざって彼女達に声援を送りました
「エンジェシカ、そこよ!頑張って!」
そうしてバイオレンスジャックの戦闘員達は皆、エンジェシカ達に倒されました
戦闘員を全員倒されたドクサイダーは
汗を流して歯を食いしばっていました
「観念しなさい!ドクサイダー!」
「もうあなたに勝ち目はありません!降伏してここを去りなさい!」
ファイアリスとウォルタニーヌはそう言って前に出ました
エンジェシカは敵と言えど、むやみやたらと倒そうとは思っていないのです
しかしドクサイダーは聞き入れませんでした
「小癪なエンジェシカめ!私は負けん!全てはバイオレンスジャック首領閣下の御為だ!!
かかってくるが良い!!」
ドクサイダーはそう言って、戦闘用と思われる先が鋭利なステッキを取り出しました
「やっぱりそうなるよね?」
「さすがはバイオレンスジャックって所かしら」
「でも、それが答えなら、覚悟はよいですね?」
フラワネット、ウィングレイス、ライトゥミーナが戦闘体制をとりました
ファイアリスとウォルタニーヌも同様です
「小娘ども!息の根を止めてくれるわ!!行くぞ!!」
ドクサイダーはエンジェシカ目掛けて突っ込んで行きました
その光景を見た私は、ドクサイダーに哀れみを感じました
『ドクサイダー、あなたはエンジェシカには勝てないわ
エンジェシカには合体必殺技、エンジェシカレインボーアタックが有るの、あなたはアニメの冒頭でそれを受けてやられてしまうの
あの時は、始まってすぐだったから、あなたの名前すら知らなかったけど
こうしてあなたの名前を知ってしまうと、倒される運命が悲しく感じ…』
私がそんな事を考えていた時
「きゃー!」
「うー!」
「ひう!」
なんと、ファイアリスとフラワネットとライトゥミーナが、ドクサイダーに弾き飛ばされたのです
「どうした?そんな物か?エンジェシカ達」
ドクサイダーはエンジェシカ達を侮っていました
「よくもファイアリス達を!」
「絶対許さないわ!」
ウォルタニーヌとウィングレイスが体制を立て直してドクサイダーに挑んで行きます
しかしドクサイダーは2人の魔法や物理攻撃を
ステッキで軽々と払って行きます
「どうしたエンジェシカ?そんな踏み込みでは私に当たらんぞ!!」
ドクサイダーはステッキを大きく振るい、ウォルタニーヌとウィングレイスを遠ざけました
よく見ると、二人共息を切らして居るようです
『エンジェシカが圧されてる!?
どうして?エンジェシカレインボーアタックさえ使えば勝てる………ハッ!!』
私はこの時大切な事を思い出したのです
『エンジェシカレインボーアタックは、 ダークネリアとの戦いでエンジェシカ達が一人ひとり経験を積んで使えるようになった技
でもエンジェシカはダークネリアと戦ってないから、経験値が本来より無い、だから使えないんだわ……
それに体力も不足しているんだわ、きっと多くの戦闘員達と戦って、ひどく消耗してしまったのね
それならファイアリス達が弾き飛ばされたのも、ウォルタニーヌ達が息を切らしているのも合点が……
って!そんな悠長に考えてる場合じゃないわ!
この状況は明らかにまずい!!』
私がそうして右往左往している時
「負けるなー!エンジェシカ!!」
「信じてるよー!諦めないで!!」
「そうだっ!悪に負ける正義は無いんだ!!」
皆がエンジェシカに声援を送っていました
その声に答えるように
弾き飛ばされた、ファイアリス達も立ち上がり
ウォルタニーヌ達の近くに行きました
目には闘志が宿っていますが、5人とももうボロボロでした
我に返った私は
『煮詰まってても仕方ないじゃない!
私はエンジェシカを支えるって決めたんだから、考え込んでるだけじゃ何にもならないわ!
今私が出来る事は、この状況をエンジェシカが乗り越えられる為に応援する事なんだから』
私は息を深く吸ってエンジェシカ達に向けて叫びました
「エンジェシカ!!負けてはダメです!!私達がついてます!!!」
そう叫んだ時、エンジェシカの5人は
「ハッ!」とした顔で一瞬私の方を見た気がしました
そしてその後すぐエンジェシカ達の目つきは明らかに変わっていました
「「「「「絶対!負けない!!」」」」」
エンジェシカ達はドクサイダーに向かって行きました
「無駄だ!無駄だ!諦めろ!」
ドクサイダーは嘲笑を浮かべながらステッキを振るいました
しかし、そんな言葉はエンジェシカの耳に入りません
「ファイヤーボールアタック!!」
「スプラッシュアタック!!」
「フラワーハリケーンアタック!!」
「サイクロンアタック!!」
「ホーリーライトアタック!!」
それぞれの魔法攻撃を一気にぶつけましたが
ドクサイダーはステッキで、それぞれ魔法を払い除け
「吹き飛べ小娘ども!!」
ステッキを大きく振るい衝撃波を放ちました
「「「「「きゃーー!」」」」」
エンジェシカ達はまたもや弾き飛ばされてしまいました
地を這う様な姿になった5人をみてドクサイダーは
「ハッハッハッー、エンジェシカ、最後の情けだ
お前達を倒した後、墓ぐらいは建ててやろう!」
自分の勝ちを確信している様です
私もこれは絶望的だと僅かながら思っていましたが
よーく見ると
ウォルタニーヌが皆に何か言って居るのが見えました
『亜友さん…いえ、ウォルタニーヌが何か閃いたみたい、さすがエンジェシカの参謀役』
他のエンジェシカ達も作戦を理解したようで
再び立ち上がりました
「最後の言い残す事は有るか?」
ドクサイダーがそう言ってステッキを向けました
「最後になるのはあなたよ!!ファイヤーボールアタック!!!」
「スプラッシュアタック!!!」
「フラワーハリケーンアタック!!!」
「サイクロンアタック!!!」
「ホーリーライトアタック!!!」
エンジェシカ達はそれぞれの魔法攻撃をまた放ちました
「ハッハッハッ!無駄だと言うのが分からないのか!?また払い除けてくれる!」
そう笑っていたドクサイダーでしたが
今回は様子が少し違いました
火球・荒波・花吹雪・強風・強光が
だんだん重なり合い、1つにまとまって来たのです
それは虹色の光線の様になり
ドクサイダーに迫ったのです
「な、何!?」
ドクサイダーが状況を飲み込めずにいると、エンジェシカ達が叫びました
「「「「「エンジェシカ!!デラックスアタック!!!」」」」」
技名を叫ぶと同時に、ドクサイダーは攻撃に飲まれて行きました
「おのれー!小娘ども!地獄の底で悪あがきをみとどけてやるー!!!」
ドクサイダーはそう一声あげたと共に消滅しました
それと同時に
「「「「「わーーーー!」」」」」
「エンジェシカありがとう!!」
「君達のお陰でまた街の平和が守られたー!!」
デパート中に歓声が上がりました
私もエンジェシカの勝利が嬉しくて思わずバンザイしました
しかしエンジェシカ達は
「うっうー」
「ふー」
へたり込んだり、片膝をついたり
とても苦しそうにしていました
私にはその理由が分かりました
『きっと今の体力では、あれは大技すぎたのね』
私を含めて、周りの人々から心配の声があがり始めると
ファイアリスがスッと立ち上がり
「皆さん、私達はこれからもバイオレンスジャックからこの街を守る為に戦います!
絶対にまけません!安心してお買い物楽しんでください!」
そう気丈に笑ってみせました
すると
「その通り!皆さんが私達を信じてくれれば」
「絶対に勝ちます!勝ってみせます!」
「皆さんの平和を脅かそうとするバイオレンスジャックには負けません!」
「だから安心ください!」
ウォルタニーヌも、フラワネットも
ウィングレイスも、ライトゥミーナも
気丈な笑顔で立ち上がりました
「それじゃあ、戦いで壊れてしまったお店の中を、元通りにしますね」
ファイアリスがそう告げると
エンジェシカ達は、ステッキを高く上げました
「「「「「エンジェシカヒーリング!!」」」」」
その言葉と共にステッキから放たれた光が
デパート店内の壊れた場所に行き渡り
直していきました
エンジェシカ達は、戦いで壊れた箇所を魔法で、戦う前の状態に戻す事が出来るのです
いわゆる魔法少女アニメのお約束というやつですね
そうして全ての箇所が直ると
「「「「「それでは皆さん、ごきげんよう!!」」」」」
そう一言挨拶をして、エンジェシカ達は去っていきました
「一時はどうなるかとおもったが、さすがは正義の味方だ」
「あの子達は、この街の為に戦ってくれているのだから、私達がちゃんと信じてあげなくちゃね」
「わたち!おおきくなったら!えんじぇちかはいる!!」
そんな会話をしながら、店員さんやお客さん達は持ち場や買い物に戻って行きました
私は近くのベンチに座り、考えました
『前世の記憶を元に考えると、エンジェシカがレインボーアタックを使えないとなると、この先の戦いがかなり厳しくなってくるわ
あのエンジェシカデラックスアタックも、今の状態だと体力をかなり消耗するみたいだから、そう何回も使わせられない、下手をしたら命にも関わるわ
まさかダークネリアが現れなくなっただけで、エンジェシカの戦闘力が伸び悩むなんて、誤算だったわ
どうしたものかしら?』
そうして考えていた時、私のスマートフォンが鳴りました
取り出してみると電話の着信でした
「お母様からだわ」
ピッ
「もしもし、お母様」
「あっもしもし!豊子世!?
今あなたの出かけたデパートをバイオレンスジャックが襲ったとニュースでやっていたわ!大丈夫!?ケガはしてない?!」
「大丈夫ですわお母さま」
「そう、良かったわ、お友達への誕生日プレゼントは買えた?」
「はい、買えました」
「ならもう帰ってきても大丈夫ね、今、番田さんを迎えに行かせたから、それで帰ってきなさいね」
「お母様、心配しすぎです、私もう大きいんですよ」
「何を言っているの!?たった一人しか居ない子供を心配しない馬鹿な親が何処に居ると言うの!?
お茶の支度して待っているから、気を付けて帰ってくるのよ」
そうして電話は切れました
「まったくお母様は……」
私は少しため息が出ましたが、でも少し嬉しい気もしました
『でも、愛されてるって悪くないわ、本来の宮楽豊子世ならきっと得られなかった経験だわ
とりあえず、番田さんの到着を待って、帰ってお母様とお茶をしてから、この先の事は考えましょう』
それから数分後
執事の番田さんの迎えの車に乗り、私は家に帰りました