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10/13

私はどうすれば・・・

病院で一晩過ごした私は

次の日の朝、退院しました

そのまま学校に行くつもりでしたが、両親の助言もあり、今日は家で安静にし、学校は明日から復帰です

今までに熱風邪と、インフルエンザ以外では学校や幼稚園を休んだ事が無かった私は

この状況が実に新鮮でした

まあ、病気ではないので、昨日今日と学校を休み生じた授業への遅れはのちほど家庭教師の先生に補填してもらう事になりました

それに多分ですけど、バイオレンスジャックは資金調達に失敗したので

少しの間は大人しくしている様な気がするので

今日はもう変身する事案も無さそうです


そうして家に帰ってきた私を使用人の皆さんも温かくむかえてくれて

私は心が温かくなりました

これもまた、わがままで傲慢だった本来の豊子世わたしだったら、受けられなかった事です

私はとりあえず、部屋着に着替えて、自分の部屋で机に向かいました

家庭学習までまだ時間が有るので

それまでに、自分の持つ闇とどう向き合っていくか考える事しました

いつものようにノートを広げます

『コンパクトの話だと、ダークデスオーラの発生は

闇の感情と呼ばれる怒り、怨み、憎しみ、苛立ち、破壊衝動が極限までに高まった時に発生すると言っていたから

その感情を抱かない様に、冷静でいる必要があるわね

心を清らかに、何事も冷静に、うん、魔法少女云々を差し置いても、それは大切な事だし心がけよう』

私がそう思ったその時、携帯が鳴りました

「誰かしら?」

見てみると、番田さんから電話でした

「まあ、番田さんからだ、目が覚めたのね」

私は嬉しくなって、すぐに出ました

「もしもし番田さん、豊子世です」

「お嬢様、お身体は大丈夫ですか!?」

「はい、大丈夫です、番田さんのおかげで何も問題ありません」

「そうですか、それは良かった」

「番田さんは大丈夫なんですか?」

「はい、まだ二三日は入院が必要ですが

もう命に別状はありません」

「良かったー」

「お気遣い感謝致します

所でお嬢様、大切なお話がございます」

「大切な、話?」

「お嬢様、お怪我が無かったから何よりですが

私は事故により気絶をし、お嬢様を避難させる事が出来ませんでした……これは宮楽家の執事としてあるまじき失態です、責任は取らねばなりません」

「えっ?………」

私は番田さんが何を言おうとしているのか嫌な予想が出てきました

「まっ、待ってください、番田さん…」

(わたくし)番田橋輔(ばんだ・きょうすけ)

退院したら、宮楽家の執事を辞めさせていただきます」

番田さんは、私の止めを遮るようにそう告げました

まさに私の嫌な予想が大当たりしてしまった瞬間でした

「番田さん、お願いです!そんな事を言わないでください!あれは番田さんのせいじゃ…」

「そう言っていただきありがとうございますお嬢様

あなたの様な方にお遣え出来て私は本当に幸せでした

でももう決めた事ですし、もう旦那様にも話してありますので

しかしお嬢様には一言断って置きたく電話させていただきました

豊子世お嬢様、本当にお世話になりました、どうかお身体にはお気をつけて」

そう言って番田さんは電話を切ってしまいました

「もしもし!?もしもし!?」

私はすぐに掛け直しましたが

「おかけになった電話は、電波の届かない所にあるか、電源が入っていないためかかりません」

と、音声メッセージが流れました

「そんな、どうして……お父様もなぜ許可なんかしてしまったの?引き留めてくれなかったの?」

私はもう泣きそうでした、でも泣く事よりもすべき事があります

「今すぐに病院に行って番田さんを説得しよう!」

私は立ち上がりましたが

その時、トントンとドアが叩かれました

「はい?」

「御嬢様、家庭教師の若桜わかさ先生がお見えになりました

お迎えしてよろしいですか?」

メイドの満島みつしまさんの声でした

私は『そうかもう時間か、ちょっと早い気もするけど』と思いましたが

お母様から教わった、淑女の落ち着き法を用いて心を鎮め

「もう来てくださったのですか?分かりました、準備をしますので、5分程待って頂くようお伝え下さい」

と、返すと

「かしこまりました」

と、満島さんの返事が聞こえました

私はいそいで作戦ノートを片付けて、勉強道具を出しました

『とりあえず今はお勉強をしなきゃね』

本当はすぐにでも番田さんの所に行きたいですが

宮楽家の令嬢たる者、物事の優先順位は守らなければいけません

そうして私の専属家庭教師である

若桜美千流わかさ・みちる先生をお迎えしました

先生は私の幼稚園時代からずっと勉強を教えてくれている

私にとってはもう一人のお母様の様な存在です

若桜先生曰く、「豊子世さんの事が心配で、早く来てしまいました」との事で

そうして若桜先生の指導の元、私は2日間の遅れを取り戻す為

国語、数学、英語、理科、社会と勉強をしました

しかし、私は番田さんの事が気にかかり

イマイチ集中出来ない所があり

それは若桜先生の授業で、必ずあるおさらい小テストでも出てしまいました

「うーん、今日は間違いや空欄が所々有りますね」

若桜先生はそう言って眉を下げていました

「はい、申し訳ありません」

「いえいえ、色々お有りだったのは聞いて居ますので、それに平均点には充分届いて居ますのでそんなに気を落とさずに」

若桜先生はそう言って背中をポンポン叩いてくれました

「とりあえず、出来なかった所は、もう一度教えますね」

「はい」

そうして若桜先生にしっかり補ってもらった為

病院の面会時間は過ぎてしまったので

番田さんの説得は明日に持ち越さなければいけなくなりました

そんな訳で私は次に、お父様に詳しく話を聞こうと電話をしたら

秘書の高見澤かたみざわさんが出て

「社長は海外企業の大切な打ち合わせが長引いていてしまっていて、次の予定もつかえているので、申し訳ありませんが今はお取り次ぎ出来ません」

と、謝られながら断られてしまいました

私は一言お礼を言って電話を切りましたが

『どうして今日に限って……』

と、頭を抱えて落ち込みました

すると

トントン

「御嬢様、御夕飯ができましたよ」

満島さんが知らせに来てくれました

「はい、分かりました、すぐに参ります」

『とりあえず、夕ご飯食べてから続きを考えよう』

私は食堂に向かいました


私が食堂に来ると

お母様は既に来て、もう席に着いていました

「お母様、只今参りました」

「席にお着きなさい」

「はい」

食事前のいつものやりとりを終え、私が席に着いた時

お母様がつけているブローチが目にとまりました

「あら、お母様そのブローチは」

「これ?これはね、この前美容院に行った時、雑貨屋さんの前を通った時に、つい見惚れて買ってしまったんだけど、似合うかしら?」

「ええ、とてもお似合いです…」

「ありがとう、それじゃあ御夕飯をいただきましょうね」

「はい、今日のお料理も美味しそうです」


食事を終えて、部屋に戻ってきた私は

椅子に腰掛け、ため息をつきました

「全く同じ物を買っていたなんて……」

実はこの前、お母様の誕生日プレゼントにと私が買ったのもブローチで

そのデザインがお母様付けていたブローチその物だったのです

つまりお母様はもう同じ物を持っているのです

「同じ物をあげるなんて、これじゃあ感動が半減してしまう、とりあえず4日後の誕生日までに新しいプレゼント探しに行かなきゃ………

でも、明日は学校終わったら、番田さんの説得にいきたいしなー

でも新体操部の練習にも出とかないと身体が鈍ってるだろうし、生徒会の仕事もしなきゃだし

って、あっ!そうだ!

エンジェシカ道場の計画もすすめとかなきゃ!

バイオレンスジャックの動向にも目を光らせておかないと

ダークネリアの未介入で、大分ストーリーが変わって来てしまってるから、急がないと……」

そうやって考えていると、段々頭が痛くなって来ました

「やる事がてんこ盛りねー、熱が出そうだわ」

なんだかドッと疲れた私は

「今日は、もう寝る支度をしよう」

と思い、お風呂に行きました

しかし、モヤモヤと言う物は底意地が悪いのか

シャワーを浴びても、湯船に浸かっても

お風呂に上がって髪を乾かしていても、アイスココアを飲んでも

歯磨きをしていても

私の中では何だか嫌な感じがする物が燻っていました

寝支度を整えても、なかなか眠りにつけません

『うーん、頭が重い……気持ちが落ち着かない……』

でも眠らなくてはどうにもなりません

私は瞼を閉じました、しかしなかなか意識を離せません

『うーん、眠れない、眠れない、眠れない、眠れない……寝れない…………』



ふと気がつくと

私は町を歩いていました

何だかとても気持ちの良い日でした

すると、魔法少女エンジェシカとして日々戦っている私の学友達が前を歩いていました

「あっ!ひのでさん!亜友さん!芽々さん!春風さん!みちるさん!

おはよう!」

そう声をかけた時、学友達は振り向きましたが

何故かとても厳しい目をしていました

怒ってる?いや、これは憎しみの視線かしら?

「ど、どうしたの?皆そんなに怖い顔して…」

私が恐るおそる聞くと

「豊子世先輩って、闇の魔法少女だったんですね」

と、ひのでさんが言いました

「えっ!?」

私はそう言われてふと近くにあるお店の窓ガラスに写った自分の姿を見ると

私はダークネリアの姿に変身していました

「えっ?!どうしてこの姿に!?」

「影にかくれて、ずっと私達を付け狙っていたのも分かっているわ」

状況が読み込めずに、オロオロする私に

亜友さんがそう投げ掛けました

「それは違うわ!私はあなた達の力になろうと!…」

「闇で町を滅ぼした人が何言ってるのさ!?」

荒々しく芽々さんが、私の後ろを指さして言いました

「えっ!?」

私が振り返ってみると

そこには朽ちたビル群に、力無く倒れている人々

そしてそこだけ夜が来たように暗くなっていました

「ウソ!?これを私が!?ち、違う!私はやってない!!」

「白々しいわよ、トコちゃん、いえ、ダークネリア!」

「悲しいですけど、私達はあなたを倒します!!」

春風さんとみちるさんはそう言って、エンジェルコンパクトを取り出しました

ひのでさん、亜友さん、芽々さんもです

「違う!違うんだってば!私じゃない!!私知らない!!本当にやってないの!!信じて!!!」

私がいくら身の潔白を訴えても、誰も聞いてくれませんでした

「「「「「エンジェシカ!

「ファイヤーオブ」

「ウォーターオブ」

「フラワーオブ」

「ウィングオブ」

「ライトオブ」

メタモルフォーゼ!!」」」」」

私の学友達は魔法少女に変身していきます

やがて、変身は終わり

「炎の魔法少女!ファイアリス!!」

「水の魔法少女!ウォルタニーヌ!!」

「花の魔法少女!フラワネット!!」

「風の魔法少女!ウィングレイス!!」

「光の魔法少女!ライトゥミーナ!!」

「「「「「魔法少女エンジェシカ!!!」」」」」

名乗りを上げた学友改めエンジェシカの5人が私に向ける目は

明らかに私を敵とみなしたそんな目をしていました

私は思わず後退りします

「や、やめて………来ないで……戦いたくない…」

私の目からは涙が出てきましたが

その気持ちはエンジェシカの5人には届かず

「「「「「闇の魔法少女ダークネリア!!

覚悟!!!」」」」」

一斉にかかってきました

「やめてーーー!!!」

私が思わず叫んだ時、身体の中から大きな気がエンジェシカ目掛けて飛んでいき

その気を浴びたエンジェシカ達は

一気に生気を無くしてその場に倒れました

それを見て私も血の気が引きました

「ダークデスオーラが、発動しちゃった……」

私はその現実を目の当たりにした後、恐るおそる皆に近づきました

「ね、ねえ………皆、起きて…起きてよ!」

私はエンジェシカ達を一人ひとりを

呼びかけたり、揺すったりしましたが

誰一人返事もしません

「そんなっ!……うそ………大切な友達を私自分の力で………

いやっ………………いやーーーーーー!!!!」

私が頭を抱えて崩れ落ちたと同時に………




ハッ!!!

私はベッドに居ました

「ゆ、夢?」

私はゆっくり身体を起こすと、酷く寝汗をかき、涙を流しているのが自分でも感じられました

「昨日は色々な事がおきたから、すっかり疲れていたみたいね

それにしても恐ろしい夢だったわ

でもよく考えてみれば、エンジェシカの変身の言葉も違ったし、名乗りも短かったし

おかしな所がいっぱいだったわ

その時点で夢と気付けないようじゃ

私もまだまだだわ」

私はそう思いながら、汗を拭きましたが

ふと夢の中で見せた学友達ことエンジェシカ達の顔が浮かびました

『………あの表情、あの目付き、本当に恐かった………』

思い出せば思い出すほど私は恐ろしくておぞましくて不安になって堪らず

震えが止まりませんでした

『私の闇の力が暴走したら、きっとこの町は大変な事になる

そうなれば、エンジェシカ達とも対立する事になる

闇をコントロールしなきゃ…

私は闇の力を皆の為に使うんだから!

本来のダークネリアの道から上手く外れたんだから!

私は悪の道に堕ちたりなんてしない!!

とにかく今日から闇をコントロールする特訓を……

って、その前にやる事があるじゃない!

番田さんを説得して、お母様への新しいプレゼントを買って、エンジェシカ道場を整えて、それから

それから……』

その瞬間、私の頭の中で思考が完全に停止してしまいました

私に今できる事は頭を抱えてうずくまる事だけでした

「私、一体どうしたら?………」

私は大きな音を立てながら暗礁に乗り上げてしまった船の様な気持ちになりました

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