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宮楽豊子世として生を受けて

我が家に有った

謎のコンパクト


そのコンパクトの問いかけに「はい」と

返事をした瞬間

私は闇の魔法少女に変身する能力を得ました


そしてこれが、本来の私の運命だったと思い出したのです…

私の名前は宮楽豊子世みやらく・とこよ

中学3年生です


大富豪である宮楽家の一人娘として生を受けました


お父様である宮楽鳳之輔みやらく・ほうのすけ

我が家の家長で、いくつもの会社を経営する敏腕社長

大分高齢になってからお母様と結婚し

私が生まれたのです

忙しい人でなかなか家に居ませんが

帰ってくれば娘である私をとても可愛がってくれます


お母様の寿子ひさこはお父様の元秘書で

私が生まれる前にお父様の社長としての業務を支えており

お互いに独身であった事から周りに促され結婚したと聞いています

その為お父様とは大分年が離れています

お母様は少し厳しい方で、子供の頃の私は

物心がついた時既に、お母様から

マナーや道徳の熱烈指導を受けていました


やっぱり子供心に、それは苦痛であった私は

4歳の時にお父様に言いつけて

お母様に指導を止めさせてもらおうと思ったのですが

いざお父様の部屋の前まで来ると、不思議な事に『おかあさまは、わたしのために、きびしくしどうをしてくれてるんだ』と感じたのです

どうして突然そんな事を思ったかは分かりません

でもお父様に言いつけたら、絶対後悔するとそう感じたのです


私はお父様に言いつけるのは止めて

お母様のマナー・道徳指導に真面目に取り組んでみる事にしました

すると、少しずつではありますが、お母様が私を褒めてくれる様になり

指導の仕方にも柔かみが出てきました


ある時、お母様からお茶の淹れ方の指導を受けながら

一緒にティータイムを楽しんでいた時

お母様は私突然謝ってきました

「いつもいつも、口煩くしてごめんなさい

あなたの事が憎い訳ではないの、寧ろ可愛いわ

だからこそ、外で恥ずかしい目に遭ったり、人に嫌われたりして欲しくなくて

ついつい指導に熱が入ってしまって

ごめんなさい、本当にごめんなさいと」

そう言ってお母様は泣いていました

後から知った事なのですが

お母様は私が黙って指導を受けている姿を見て

自分を怖がっているのではないか?

もしかしたら憎くて恨めしく思っているではないか?

と、不安になったそうです

そんなお母様に私は言いました

「でもおかあさまのおかげで、わたしはすてきなれでー(レディー)になれました」と

それを聞いたお母様は「ありがとう、ありがとう」と涙流しながらも、私を強く抱き締めてくれました


お母様の指導が厳しかったのは事実ですが

おかげで私は幼稚園や習い事の教室でも先生に褒められたり、友達も沢山出来たので

子供ながらお母様には深い感謝の念を持っており

お父様に言いつけなくて本当に良かったと思ったのです

何より私を大切に思ってくれているお父様が

私を溺愛してくれる事で

お父様から受けた愛は、他の人に分けてあげようと考えられる様になったのもお母様の教えの賜物だったと思います


こうしてお父様の飴愛とお母様の鞭愛を受けながら

私は育ち

学校は両親の意向で、富豪の娘ではありますが

私立には進まず、公立の小・中学校に進みました

いつか多くの会社を継ぐ者として、沢山の人に会っていた方が良いという事で

それには閉鎖的な私立校よりも、開放的な公立校の方が適任であるという事でした

よく学び、よく鍛え、よく食べて、よく遊び、よく眠る

友達も沢山出来て幸せで平和な日々を送っていましたが

私が中学2年生の終わり頃に、私の住む街を魔の手が襲いました


どこからとも無く悪の軍団が現れたのです

その名はバイオレンスジャック

街に怪人や怪物、武装した戦闘員団を送り込み

破壊行為や略奪行為、時には命すら危機に晒す凶行等を繰り返し

街はたちまち大混乱に陥りました

バイオレンスジャックは、私達の街を手始めに

世界征服に乗り出したのです

強さも圧倒的で、警察隊や自衛隊でも刃が立たないほどでした

もう降伏するしか無い、そう誰もが思っていた時

救いのヒーローが現れたのです


赤、青、緑、白、黄

カラフルで愛らしいフリル服を着た5人の戦士

その名は、魔法少女エンジェシカ

炎の魔法少女・ファイアリス

水の魔法少女・ウォルタニーヌ

花の魔法少女・フラワネット

風の魔法少女・ウィングレイス

光の魔法少女・ライトゥミーナ

強くて可憐な魔法少女エンジェシカの5人は

バイオレンスジャックの悪辣な凶行を幾度となく

阻止してきました


街の人達の誰もがエンジェシカを応援している様に

私もエンジェシカを応援していました

不思議な事に、私は彼女達と他人の気がしなかったのです

でもその理由はある日の放課後に分かりました


その日私は、所属していた部活と生徒会の活動で少し疲れており

屋上で風に当たっている内に眠ってしまったのです

すると、屋上に誰が急いで入ってきました

それは

2年生で、昔私とピアノ教室が一緒だった安宅あたかひのでさん

3年生で、私と同じ生徒会所属で会長の清瀧院亜友せいりゅういん・あゆさん

2年生で、私と同じく新体操部所属の森林芽々(もりばやし・めめ)さん

3年生で、私が入っている人形愛好倶楽部のクラブ仲間の吹舞木春風ふぶき・はるかさん

1年生で、私と学校の曲がり角でぶつかってから交流を持つ様になった日月ひづきみちるさんと

皆、私の学友でした


声をかけようと思ったら

突然皆、胸ポケットから何かを取り出して高く上げ

不思議な言葉を唱えたと同時に

光に包まれまして

私は驚いて目を瞑り、また開いてみると

そこに居たのは、私の学友ではなく

エンジェシカの5人だったのです

更に驚いた私が声も出せずに居ると

エンジェシカ達は私には気づかず、そのまま飛んでいきました


私の学友はエンジェシカとして戦っていた

その事実を知り

道理で他人の気がしない訳だと、合点が行きました

でもまだ何か引っかかる感じがしましたが

それは気にせず

私はエンジェシカこと大切な学友5人の力になろうと決めて

次の日からサポートを始めました

サポートと言っても、少しマッサージをしてあげたり

重い物を運んでいる時は手伝ったり

時には飲み物やお菓子をごちそうしたりするくらいで

大した事はしていませんが

街の戦ってくれている彼女達へのせめてもの労いでした

無論、私がエンジェシカの正体を知っている事は心の秘事としました

そうとは知らずに学友達も私の気遣いを喜んでくれるので

私も役に立てる事を嬉しく思い、いつも気にかけました


でもそんな中でふと感じたのです

『私も魔法少女だったら、一緒に戦えたら

もっと力になれるのに』と

その思いは日に日に強くなり

こんな事しか出来ない自分に悔しみを感じて

気にかけている学友達にも心配をかけてしまった時は

作り笑顔でごまかしていました


そんな気分を紛らわせようと

私はある日、学校から帰った後、クローゼットの整理をしてみました

中から出てくるのは、私が子供の頃良く遊んだ玩具や洋服

家族や友達と撮影した写真等

懐かしく心温まる物ばかり

気持ちもスッキリしたので、片付けに入ったら

玩具を入れている箱の中に

見慣れない物が有りました

それは真っ黒い色をした真新しいコンパクト

『こんな玩具、持っていたかしら?』

そう思い、手に取って開いてみると

急に辺りが暗くなりました

何が起きたのか分からず私は右に左にと首を動かす事しか出来ずにいると

突然、声が聞こえました



「我はレイボシスの国に眠る魔法のコンパクトなり

娘よ、そなたは力を望むか?」

「ちから?」

「そう、力だ、我はそなたを魔法少女にする事が出来る

我と契約して、その力を得るか?」

「魔法少女!?あなたと契約すれば、私も魔法少女になれるんですか?!」

「如何にも、さあどうする娘よ

我と契約するか?否か?」

そう問われた私の頭の中には、答えは1つしか浮かびませんでした

「はい!是非とも!」

「では、復唱せよ、レインボシスエナジー・ダークネスオブメタモルフォーゼ」

私は唾を飲んで息を深く吸いました

言い間違えない様に頭でもう一度復唱して

口に出しました

「レインボシス、エナジー、

ダークネスオブ、メタモルフォーゼ」

「契約成立だ!!」

コンパクトはそう言った瞬間、闇を溢れさせて

私の身体を包んで行きました


その後起きた事はあまりよく覚えていません

でも

その中で私は

着ていた物が花びらの様に弾けて消えて

何かフワフワした何かが身体に巻き付いて行く

そんな感覚を覚えました

そして気がついてみると、私は黒い色をしたフリルの服を着て

真っ黒いステッキを持った魔法少女の姿をしていました

その時、私の口が勝手に開きました

「闇よ渦巻け!世界を静めよ!黒き魔法少女、ダークネリア!」

その瞬間私は思いました

『って!これ……魔法少女だけど

絶対に正統派のやつではない!

寧ろこれって悪寄りの……

ハッ!!』

その瞬間私の頭の中で、宇宙の大爆発でも起きたかの様な衝撃を受けました

私が、宮楽豊子世として生まれる前

こことは違う世界で人間の女性として生きていた時の思い出が再生されました……

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