眠れる森のオネェ
むかしむかし。
とある深い森のなかに、塔がありました。
その塔の最上階には天蓋付きのベッドがあり、純白のドレスに身を包んだ人が眠っていました。
悪い魔法使いにより、『心から愛するものの口づけで目を覚ます』という呪いをかけられた、オネェさまです。
鍛え抜かれた筋肉質の腕と足、割れた腹筋。大胸筋もドレスを着ていてもわかるほどムキムキです。
波打つ金髪は、シルクのような手触り。
実はこのオネェさま、かつてこの地にあった小国の第一王子さまなのです。
悪い魔法使いに呪いをかけられてから、かれこれ百年経っていました。
そんなある日。森のことを知らず、とある国の騎士が迷い込んできてしまいました。
森の中に不思議な塔が見えたので、近くにあった村の民に聞きました。
村人は、呪われた王子が眠り続ける塔だと答えます。
呪われたままでは気の毒だと、騎士は馬を走らせ塔にむかいました。
騎士が来るのを待っていたかのように、塔を塞いでいた茨が道を開けます。
らせん階段を登っていくと、王子の眠る部屋にたどり着きました。
「こ、これは……! なんて美しい筋肉だ! この上腕、腹筋。ここまで鍛え抜かれた筋肉を持つ人、初めて出会った!!」
実はこの騎士、周囲がドン引きするレベルの筋肉フェチだったのです。筋肉がつきにくい体質なので、筋肉には並々ならぬあこがれを持っていました。
通りすがりの妖精さんが、愛する者の口づけで目覚めるよと教えてくれたので、騎士は迷わずオネェさまに口づけをします。
するとどうでしょう。百年眠り続けていたオネェさまのまぶたが開きました。
目の前にいるのは、騎士の格好をした、凛々しい少女です。
「まあ。呪いを解いてくれてありがとう。アナタが助けてくれたのね! お礼に、アタシにできることならなんでもするわ」
「お礼ですか。では、私と結婚してください! あなたの筋肉に惚れました!」
かっこいい人が好きなオネェと、筋肉フェチな男装騎士。性癖ベストマッチな二人は騎士の国に帰り、結婚式をあげて末永く幸せに暮らしましたとさ。
マッスルマッスル。