第一章6 文芸部2
四季に会いたかった真冬は、放課後旧校舎の一階で部室であろう空き教室を探していた。
だが、どの教室を覗いても誰も居なかった。四季から聞いた情報通りにやってきたつもりだったが、何か聞き違えただろうか? それとも自分の記憶が間違っているのか……。
考えつつも見つからないものは仕方が無いと諦めようとした時――
「ええええええええええええええ!!!!????」
女生徒の声が聞こえた。
部室の中では丁度真冬の名前を聞いて小夏が声を張り上げた時だった。
声がした方向を見ると教室は無く、二階に続く階段しかない――二階から聴こえてきたのか?
四季の説明をもう一度思い出してみる。
『旧校舎の一階の一番隅っこのスペースを勝手に使って活動してるから』
という事だった筈。やっぱり二階では無く、一階――階段を上ろうとした足を止めて、もう一度考えてみる。
「勝手に使って……?」
これは――もしかするともしかするかもしれない。
真冬の目の前――階段の下に、扉が一つあった。
どう見ても、少し大きな掃除道具入れだが、声が聞こえた方向にあるのはこれしかない。
だが、本当にこれが部室なのだろうか?
扉に近付いて耳を澄ますと、やっぱりそこから話し声が聴こえた。
「――ここだ」
確信する――が、開け辛い。とても。
中の様子を知りたいが、さすがに教室の様な窓は無い。
「あれ? お客さん?」
困っていると、聞き覚えのある――様な声がした。
振り向くと、見知っている――様な顔。
「あ――四季、さん……?」
でも、ちょっと違うかもしれない。
声をかけたが反応が無く、その『四季のそっくりさん』は自分に焦点を当て、目を見開いたまま固まっていた。
気を取り直してもう一度声をかける。
「あの……?」
その人は正気を取り戻した様で、慌てて話し始めた。
「え、あ、わ、悪い! えっと、あの……文芸部に用、か?」
「四季さんがここにいるって聞いて」
「え……」
その顔は少し嬉しそうに見えた。真冬が不思議に思っていると、その人は言葉を続ける。
「あ、あー! 四季!? ――の、お客さんか! そりゃそうだよな! 四季のお客さん、だよな……」
今度は少し陰った様に見える。どうしたのだろうと考えつつ、思っている事を口にした。
「四季さんにそっくりですね?」
「え? ……まぁね」
北斗は諦めた様に笑った。