我ら不滅なり
カチカチカチとパソコンを操作する男。
「お、これはアイツか……」
何かを見つけては、しきりに呟き、にやける。
「おお、これもか……がんばっているな。こっちは新人かな? ほほう……」
時折、悔しそうに。
しかし、その度に負けてられないと気合を入れるように座り直し、画面を食い入るように見つめる。そして。
「……お、もうこんな時間か。日が暮れたな。そろそろ行くか」
ネットカフェから出たその男は、近隣の中学校の通学路に向かった。
そして、部活帰りだろうか、一人で歩いている女子中学生の背を見つけると、さっと別の道から先回りした。
「うえーんうえーん」
「あれ? 君、どうし……ん?」
「おぶってぇ」
「い、いやああああ!」
しゃがみ込み、子供の泣き真似をする男が顔を上げた瞬間、女子中学生は悲鳴を上げ、走って逃げてしまった。
「チッ、焦ったな。もうちょっと引き寄せればよかった。勘を取り戻すのに、まだまだ時間がかかりそうだ……」
そう呟いた男だったが、実に満足げな表情。
これでまたあのサイトに載れるだろう。
不審者情報サイト。実に素晴らしい。すっかり影が薄くなった現代でも同胞たちの頑張りがすぐにわかる。
ああ……身を潜めている他の奴らにもいずれ伝わるといいな。
ワシはここにいると。
我ら、不滅なり。
子泣きじじいは夜空を見上げ、星たちと頑張る現代の妖怪たちの姿を重ねると、とてもやさしい微笑を浮かべたのであった。