幸せのキス
一ヶ月後。
あれからも、イベリスとのニセモノの生活が続いている。
トラブルなく。
わたしは自然とイベリスのことが好きになっていた。
努力する彼の姿に胸を打たれた。
そんな彼のお店を手伝うようになり、彼自身もわたしの見る目が変わったみたい。
最近のイベリスは優しくて、一緒に過ごすことの方が多くなった。
そのせいか、周囲からも“夫婦”として認知され始めていた。
もうこれは……ニセモノではないのかもしれない。
「あれから一ヶ月が経過しましたね」
「そうだな。お店も順調で稼げているし」
「いっそ、本当に結婚しますか……?」
「……プリムラ。本気かい?」
「ほ、本気ですよ。だって、この一ヶ月は無駄ではなかったのですから」
「良かった。その言葉を僕は待っていたよ」
「え……」
「僕は君の気持が本当かどうかずっと見極めていた。でも、分からなくて……」
恥ずかしそうにするイベリス。
そっか、彼はわたしの言葉を待っていたのね。
「昔は氷のように冷たかったかもしれません。今は違います。貴方だけを見ている」
「プリムラ……君を愛している」
「はい、わたしもです。イベリス」
この瞬間を待ちわびた。
もうこの指輪は『ニセモノの婚約指輪』ではない。
今この瞬間にホンモノになった。
「この店を一緒に経営していこう」
「わたしもがんばりますね」
静かな時間が流れる中、わたしとイベリスはキスを交わした。
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