ホンモノの婚約指輪
困惑していると、スチュアートはわたしの腕を強引に引っ張った。
「きゃっ……!」
「こっちへ来い、プリムラ。そんな男より、俺の方がいいだろ」
ら、乱暴すぎる。
正直、こんな風に扱われると引いてしまう。
イベリスに目線で助けを求めると、彼は本気になってくれた。
「おい、止めろ」
スチュアートの腕を掴む。
……イベリス。
「止めろだぁ? お前ごとき男がプリムラを幸せにできるわけねーだろ」
「あぁ……一度は失敗した。だが、人間は失敗から学ぶ。過去の僕は愚かな選択をしたと思う。でも、今は違う。プリムラを愛している」
そんな急な告白に胸が高鳴った。
そ、それって演技だよね……?
でも、イベリスは真剣で嘘を言っているようには見えなかった。まさか……本当に?
「言っただろう。俺はプリムラを奪うと」
「させるか!!」
スチュアートの腕を掴むイベリス。
ギリギリと軋むような音がして、スチュアートが顔を歪ませた。
「……ぐぉ!?」
「止めろと言った」
「き、貴様あああ!!」
わたしを解放するスチュアートは、腕を振りかぶり――イベリスに殴りかかった。……嘘、暴力だなんて!
このままではイベリスが大怪我を追ってしまう。でも、止められない。
思わず両手で目を覆う。
…………イベリス。
けれど、次の瞬間にはスチュアートの巨体は地面に転がっていた。
「その程度か!!」
「ぐあああああああああああああ……!!!」
ゴロゴロと転がっていくスチュアートは、馬小屋に激突。汚物に塗れていた。
「イベリス、大丈夫ですか!?」
「なんとかね」
「お強いのですね。あの巨漢のスチュアートを倒してしまうだなんて」
「……プリムラを守れる男になりたいと、こっそり鍛えていたのさ」
それを聞かされ、わたしは驚いた。
まさか、イベリスがわたしの為にがんばっていただなんて……。
そうか、そうなんだ。
わたしの方こそイベリスを過小評価していた。彼は、商売や料理など努力で技術を身に着けていたんだ。今の格闘術も同じ。
……きっと、わたしの為に。
なのに、あの時のわたしは冷めていて、彼と向き合おうとしていなかった。――あぁ、悪いのはわたしだった。
「守ってくれてありがとう、イベリス。貴方はとても勇敢な男性ですよ」
「……お、おう。はじめて褒められた気がするよ」
「お花を買ってこの場を離れましょう」
「そうだな。ヤツが起き上がったら面倒だからね」
照れくさそうにイベリスは花屋へ向かっていく。
……わたしは、この“ニセモノの婚約指輪”を『ホンモノ』にしたいかもって思った。