吸血鬼vs吸血鬼 〜裏切り者の純血と混血は、血に染まった吸血鬼界を救う!?〜 短編集
02[ゼロツー]の話
私は、みんなと違う。
私は主様の最高傑作で、ショーケースの中でみんなに疎まれ、憎まれている。兄弟姉妹はとある人形師に作られ、どれも有名人形師に作られていなかった。
そんな中、主様に造られた人形が私だった……。
ショーケースの中で私に対する無意味な罵倒、主様の侮辱、クスクスと笑みを溢される。そんな毎日を送る。
「あのにんぎょうさえいなければ……」
「あのにんぎょうさえいなければわたしたちがふぉらすさまにあいされていたのに……」
「そっかっ! あのにんぎょうをけしちゃえば、ふぉらすさまはぼくたちをあいしてくれる、かまってくれる、あんないもうと、いらない」
ガチャっと扉が開く音が聞こえる。そう、彼が私を造った主様。
主様は沢山の兄妹たちが入ったショーケースに目もくれず、私に向かって歩いてきた。
「ほら」
「ふぉらすさまはわたしたちをみてくれない」
「なんでみてくれないの?」
「わたしたちがじゃまなの?」
「あんなにんぎょうなんてほうっておいて、わたしたちにもかわいいおようふくきさせてよ……」
「……うるさいぞ、お前ら」
「あ、るじ、さま……」
――主様は私にだけ尽してくれる。可愛い洋服や可愛いリボン、髪飾り、それらを私にだけ着けてくれる。特別だから。私は主様の最高傑作だから。
主様が私にだけ構ってるのが心底許せないのか、みんなは勝手にショーケースを開けて主様の方へと歩いてくる。
「あるじさま……」
「わたしたちにもそいつとおなじようなおようふくきたい」
「なんでそのおんなだけとくべつあつかいするの?」
恨みのこもった言葉の数々。
主様は私を仕立てながらぽつりと言葉を言い放つ。
「俺がなんでお前らの服を仕立てないか、教えてやろう」
「え?」
「りゆうあるの?」
「なんで? なんで?」
「お前ら、02[ゼロツー]の悪口を影で話してるんだってな」
横目でみんなの顔を睨むように見つめる主様。
「それは……」
「だって、ふぉらすさま、そのにんぎょうにだけかまって、わたしたちにかまってくれないじゃない」
「なんでそのおんなだけかまうの?」
「それはお前らがコイツの悪口を言うからだ、悪口を言わなければきちんと人形のように仕立ててやる」
主様のその言葉にみんなは言葉を詰まらせる。「うそつき」そんな言葉が出ると思った。けどみんなは口を揃えて「わかった」「あるじさまはうそつかないもん」「きをつけるね」等の優しく温かい言葉の数々。
「ほら、02[ゼロツー]に「御免なさい」をしろ」
「うん。おねえちゃん、ごめんね」
「ねえさん、ごめん……」
「わるいこといって、ごめんなさい……」
「ううん、つぎからきをつけてくれればぜんぜんだいじょうぶだよ」
「……お前たちがまた02[ゼロツー]に悪口を言わないよう、フィルナンシェに監視をさせておく」
私を仕立て直したのか、立ち上がりながらそう言った。
「あぁ02[ゼロツー]」
「? どうしましたか? あるじさま」
「フィルナンシェの事なんだが」
と、振り向きながらぽつりと呟く。
「かれがなにか?」
「アイツ、俺らの造った人形たちを逃がそうと動いているらしい」
(ルシェが……わたしたちを……?)
「万が一裏切るような行為をした場合、ショーケースの中にある緊急ボタンを押せ」
主様はそう言いながら部屋を後にした。
「おねえちゃんかおまっかだね!」
「ふぃるさまがすきなんだね! ねえさんはっ!」
「ふぉらすさまにばれてないといいねえ〜」
ちょこちょこと研究室を歩き回りながらそう言うみんな。
外からピピッとカードキーをかざす音が聞こえ、私は直ぐにルシェだと悟った。
「こんにちは、みんな」
「あっ! ふぃるさま!」
「ふぃるさまぁ〜!」
「よーしよし。」
そう言いながらルシェは、みんなの頭を交互に優しく撫で下ろす。
「02[ゼロツー]は居るかな」
「おねえちゃん? うん! いるよ!」
「あそこお〜」
そう私に指を差すみんな。ルシェは「有難う」とそう言い、私に向かって歩いてくる。
「久しぶり、“優”」
「うん、ルシェこそ……」
「あの約束、今日こそ守れるからね」
「え……?」
「君を、ここから出してあげるっていう約束」
「でも、そしたらルシェが……」
「俺はいいんだ。君を、人形を好きになってしまった俺の罪滅ぼしなんだよ」
そう言いながらルシェはショーケースを開け、私の頭を優しく撫でた。
「ルシェ、有難う……」
「ここを出ても行く宛がないと思う。俺の昔からの親友の住所がこの紙に書いてあるから、この研究所から出たらすぐに行くんだよ」
「ルシェ……」
「今からブレーカーを落とすから、そしたら君は直ぐにここから逃げるんだ、大丈夫、君とはまた会えるから」
そう言い残し全てのブレーカー、電子機器のブレーカーを落とす。ガシャンッッという凄まじい音で、みんなはきょとんとした顔で私とルシェの顔を見ている。
「うん……わかった」
こんなことがあり、私はルシェの親友であるツバキお兄様のところでお世話になることになった。
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