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卑劣!ブログ炎上事件 vs迷惑探偵






「ふふふふんたらららー

エンジェルッ!!!」


ダイニングキッチンで朝食のごはんや味噌汁を食べつつタブレットで動画サイトを起動、頭をぶんぶん振りながら俺はノリノリだった。

エンジェルというのは妹のことだ。

つい最近妹は、彼氏とのブログを書いている。それがまぁ、なんとも俺の生きる糧となっているわけである。


妹に、ブログ見てるよと言ったことはないが、ノリノリなのは仕方がない。


エンジェルッ!!

はあはあしながら動画をリピートする横を、 最近「忌まわしい下着泥棒のせいで」軽い鬱症状になってしまった妹が通りかかる。


「うるさいんだけど」


エンジェルッ!!

うんうん、わかってるわかってるよ。

下着泥棒問題は、前回、名探偵の俺がいち早く察知していち早く解決した。

日頃妹の下着の枚数を数え、柄やリボンの位置を把握していたからこそできた、ファインプレーである。


あれは大変だったな。

妹は俺の身を案じて、下着泥棒の件を自分で言わないし、どんな柄かも喋ろうとしないんだ。俺が危険なのを知って何度も調査はいらないから、お兄ちゃんは逃げて! なんていじらしいことを言ってもいたっけ。


けれど俺はやった。

成し遂げた。

男の意地ってあるだろ?

どうにか兄の威厳が保てたんじゃないかと思う。

何度もお兄ちゃん危ない!と止めさせようと、してくれた妹にもいい報告ができて万々歳である。


ところでこの妹のブログなんだが……最近、変な荒らしに捕まったみたいでコメントがすごく荒れている。

妹が機嫌が悪いのはそのせいに違いなかった。

下着泥棒、そしてブログが炎上となれば、そりゃあ気が滅入るよな。不安の種がわかるなら俺にもできることがあるはず。

こんなときのために妹のパソコンを操作しておいて本当に良かった……


 


 妹といえば、最近『下着泥棒の心の傷で』カウンセリングを受けているがやはり調子が良いときはまちまちで、ちょっと気分が悪いとすぐに兄を呪うようになった。

正義の味方、唯一のヒーローさえも、歪んで見えてしまうほどに彼女の闇は深い……

「俺は味方だよ!!!」

彼女の部屋のドアの前で、俺は毎朝叫ぶ。

「怖がらなくてもいいのさ!!!?下着泥棒なら、もう居ない!俺が見付けてやっただろ!?ほら、今外に干してある、ビーズが縫い付けられててちょっと裾にレースがついてる下着!お兄ちゃんが取り戻したから、あるのわかるな?」 

彼女を安心させたくて、毎日こうやって安心するように声をかける。

彼女は大抵、刃物や鈍器を投げつけてくる。

そして、「やめてぇ!  やめてぇ!!」と泣きそうな声で叫んでいた。  

愛情表現なのかは定かじゃないが、少なくとも下着泥棒のことをまだ警戒しているのだろう。


それから朝食を食べながらバイトが無い日は動画を見るのであった……



いつか、下着泥棒のトラウマから立ち直ってくれると良いのだけど。




 

未だに悪夢を見て、やめてぇと叫ぶあわれな妹に出来ることを考えなくてはお兄ちゃん失格だ。

妹の今回の落ち込みの原因は下着泥棒と、ブログのことに違いなかった。

立ち上がるしかないのか?

妹のブログは匿名でコメント出来るため、俺に犯人を割り出すのは無理そうなので、せめて……と、食べ終えた食器を片付けてから、妹の部屋のドアの前で、曲を流しておいた。「嵐のーなかでたららららららららー」

ついでに俺も歌っておく。

元気になってくれるかもしれない妹を想像して顔がにやけた。


「諦めないでー!!!!」

ばあん!と大きな音がしてドアの内側から妹が出てくる

「うるさい!!!?死んで!???本当に!!!近所にも聞こえてるんだけど!!!」

俺はカッとなって叫んだ。


「下着泥棒が辛いのはわかるぞ!!だけどな、外見てみろ、下着はもうあるんだ!!いつまでも、甘えていたらいけないんだ!!!わかるな? 


社会はもっといろいろなことがあるんだからな。いつまでも、お兄ちゃんが守ってくれると思ったら大間違いだぞ。

しっかりと、体調を治して、な?

下着泥棒のことは、もう平気だから。町中の人が捕まったやつ知ってるから!!

お前が立ち直るまで何度も言い聞かせてやる……」

妹はとても睨む目付きでこちらを見た。

見たことないくらいに冷たい目…………

これが、下着泥棒が変えてしまったいたいけな少女の悲惨な姿だ。たかが下着、されど下着。下着を他人に盗まれただけで、ここまで人を追い詰めてしまうんだ。


みんなも下着泥棒はやめようぜ!!

お兄ちゃんとの約束だ。





後日談。

そんな風に毎日叫んだ俺の励ましもあって、やがては、笑顔を取り戻し、出かけてしばらく帰ってこないくらい活発なアウトドアガールとなった妹。

ちょっと寂しいが、仕方がない。


それから俺の友達が炎上の犯人として捕まった。



友達も諫めたいものだがその前に俺は、妹の弁護人だ。

妹の事情を知る唯一の 弁護人なんだ!!

妹がたった一人家族で頼れる相手こそが俺なのである。最近の落ち込みはちょっと酷い。

下着泥棒の辛さは、妹を見ていればわかる。そんな妹を少しでも楽にしてやりたい!!!

俺はレトルト食品ばかり食べてる通称レトルト食品に電話をかけた。


『なぁレトルト食品、じつは……』


「もしもし? なんだお前か、ちょうど良かった!」

「あん?」

「ちょっと不味いことしちゃってさー、頼みがあるんだ。それでお前の妹、殺害予告されてるし、ちょっとあれは全部俺でしたって、言ってくれない? 俺がちょっと軽く騒いだだけなの


に寝覚め悪いし」



妹のため!

と聞いて俺が断るわけがない。


レトルト食品はちゃんと給料払うから、口止め料な?と通話を切った。

妹を守ればバイト料も増えるのだ。

下着泥棒を捕まえ炎上の様子を見守っていて本当に良かった。それを実質のバイトにしてしまえるなんて、なんて運がいいんだろう。

妹が不幸なおかげで、といってはなんだが。稼ぎが増えてしまう。

給料の件もしっかり取り付けて了承した。



その日から、俺は妹の外出中に部屋に入り、

化粧品を漁り、化粧をした。

勝手知ったる妹の部屋のタンスから、それらしい服を選び身に付ける。

少しずつフリをする環境を整えて髪は、ネット

でかつらを買った。



一方、俺のばんぜんな作戦の裏で、妹の『炎上による鬱』は進行を見せており、部屋に戻ってくるたびに、叫んでいた。

おびえている。当たり前だ。殺害予告されてるんだからな。だが、大丈夫!



腰をくねっとさせながら、お兄ちゃんは誇らしく胸を張る。



お兄ちゃんが解決してやるからな!




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