こちら第二地上捜索隊
ネズミの捜索隊の話です。
ある冬の寒い夜です。
「ちゅーちゅー、ちゅーちゅー」
静かな子供部屋のすみ、よーく目を凝らすと五匹の二本足のネズミが立っていました。
「こちら第二地上捜索隊、目的の地点につきました。」
「無事についたか。今回のご依頼人はアンジェリーナ様だ。田中邸みか部屋にてご静養のおり、田中母に遭遇。逃げる途中、大切な赤いバラのブローチを無くされたようだ。諸君らの任務は、そのブローチを探すことだ。」
「了解。」
隊長は、おもちゃの無線機を切ると、隊員たちの方を向き言います。
「これより我ら第二地上探索隊は、ブローチを探す任務にあたることとする。」
「隊ちゅ!」
一匹の隊員が手を上げました。
「なんだ。貴様訛りが、抜けきっておらんぞ。俺の事は隊長と呼べ!隊長と。」
「ブローチとはどのような物なんでありますか?」
「バラの形をした物だ。」
別の隊員も手を上げます。
「隊ちゅー!」
「なんだ。貴様もか俺の事は隊長と呼べ!」
「ブローチとは、どのような色なんでありますか?」
「赤だそうだ。」
「隊ちゅー」
「隊ちゅー」
「隊ちゅー」
「ええーい。つべこべいってないでとっとこ探してこーい。」
痺れを切らした隊長は、ついに怒り出し、隊員たちは部屋中に散らばりました。
「どこだ!」
『ちゅーちゅー』
「ここでもない!」
『ちゅーちゅー』
「貴様らちゅーちゅー以外言えんのか!?」
「ですが、」
『ちゅーちゅー』
「自分たちは、ねずみであります。」
「もうわかったから、早く探してくれ。」
隊長は肩を落とし呟きました。
それから二時間くらい経った頃でしょうか、ふいに外からドスン、ドスンと大きな音がします。
「この足音は……」
隊長が耳をすますと、足音は子供部屋に近づいていることがわかりました。
「集合!集合!」
隊長は急いで隊員達を集めると、そっとベットの影に隠れます。
と同時にバーンと部屋のドアが開き、人間が現れました。
「フーン。フーフン。」
人間がランドセルから、中身を出していきます。
「みかちゃーん!宿題を先に済ましてしまいなさい!!」
「はーい!!」
遠くの方から別な人間の大きな声が聞こえます。
「隊長、自分たちは大丈夫でありますか?」
「大丈夫だ。多分。」
「そんな無責任な……」
「大丈夫と言ったら大丈夫だ。」
第二探索隊は、ベットの影に隠れぶるぶると震えながら人間が部屋を出ていくのを待っていました。
「ノート、ノート。」
人間は、巨大な台の上に大きなノートを広げ始めなにやらしているようです。
「あっあれは!!」
隊長の目には、巨大なノートに挟まれた赤いバラのブローチがありました。
遂に第二探索隊は、ブローチを見つけることが出来ました。
けれどブローチは巨大なノートの間、それも人間の元にあります。
「むーどうしたら……そうだ!」
隊長にあるアイディアが浮かびました。
「お前たち、巨大ノートまでいって逃げ回ってこい!!その間ブローチは、おれが回収しておくから。」
「そんな隊ちゅー!自分たちはおとりでありますか!!酷い!酷すぎます!」
『ちゅーちゅーちゅー』
隊員たちは抗議の声を上げます。
「馬鹿!聞こえるだろう!」
「ん?ねずみの声?」
「もう良い。俺が行く!」
勇ましい声と共に隊長は、机をかけ上るとぬいぐるみの影に、隠れました。
「一、二、三、GO。」
隊長は、ぬいぐるみの影から隠れると、ノートの真ん中に立ちます。
「ちゅーちゅー、ちゅーちゅー」
「キャーねずみ!!」
隊長は叫び声を聞いた途端、一目散に逃げました。
「なんですってねずみですって!!」
大きな声が追いかけてきます。
走って、走って、走り回っていると、急にお尻が軽くなったような気がします。
「なんだ。これは……」
そのまま隊長は、逆さまの状態で宙づりになってしまいました。
それにしっぽも何かに挟まれて痛い気がします。
「きったないねずみなんてぽーいいよ!」
大きな声は、隊長を窓辺まで運ぶっと窓を開けて、ポーイと放り投げてしまいました。
隊長は宙を舞いました。ぽつぽつと降る雪が、隊長の体にあたりはじけていきます。
そのまま隊長は、ズーンと雪に埋まってしまいました。
薄れゆく意識の中隊長は、今まであった楽しい思い出、辛かった経験色んな思い出を思い出して、いきました。
そのしている間に、どこからか声がします。
『隊ちゅー隊ちゅー』
それは隊員たちの声でした。
その声を聞いた瞬間、隊長は飛び起きます。
「こらっ俺の事は隊長と呼べと言っているだろうが!!」
「よかった。隊ちゅー気が付いて。」
気が付くと隊長は軒下にいました。そして隊員たちは、互いの体をくっつけて温めあっています。
「ブローチもほら、無事に回収できたんですよ!」
「おう、みんなありがとう。」
今回の事で隊長は、わが隊の隊員たちは皆優秀ですと日誌に書きました。