第2話 昼食
しばらく歩いていると三丁目を示す看板が見えた。
...少し傾いて錆びているが。
「ケンちゃん!一緒に最初の一歩!」
「...ああ、玄関のあれね。よし、やろうか」
「「せーの」!」
僕達は三丁目に足を踏み入れた...と言っても、雰囲気はさして変わらない。
「まずあの家!何があるかなー♪ケンちゃんは何食べたい?」
あやちゃんが僕の手を引っ張る。脚を絡ませながら僕は動き出す。
「うーん、ラーメンかなーカップ麺とかがあればいいんだけど。あやちゃんは?」
「私はねー、お肉がいい!」
「いいね、じゃあなんちゃってチャーシュー麺でも作ろうか。」
「やったー!チャーシュー麺なんて最高!」
まだ何があるかはわからないが、僕達は期待を膨らませた。新しい地域に心が躍っていたのかもしれない。
軋む音を立ててドアをこじ開ける。もう大分古びた木造の一軒家だ。その上...
「...ここはダメだな。隣の家に行こう。」
「えー、またケンちゃんの勘?」
「そうだ。入らない方がいい」
...悪臭がする。あやちゃんは鈍感だから分かっていないが。恐らくこの家の住人がいるのだろう。僕もだが、あやちゃんには特に見せたくない。
「うーん、ケンちゃんの勘は当たるからなー。仕方ない。 、隣の家に行こう!」
そう言ってあやちゃんは足を動かした。僕は静かに手を合わせた。
「ケンちゃーん!こっちはどうー?!」
「ちょっと待って、今行くよ」
ここにも、僕達と同じ、日常を送る人がいたんだ。僕達との違いは、ただ今を生きる意思があるか無いかだけ。
「ケンちゃん?なんで泣いてるの?」
「...なんでも無いよ。目にゴミが入っただけ」
そう言って目を擦った。あまり過去を振り返らない方がいい。そうやって自分に言い聞かせた。
僕達は隣の家に入った。こっちは大丈夫そうだ。
「冷蔵庫を見よう。」
「うん!お肉あるかなー!」
あやちゃんは勢いよく台所に向かった。
僕はゆっくりと後をついていく。
そうだ、これが僕の今の日常だ。
「お肉、あったよー!でっかい豚肉ー!」
「本当だ、これなら普通にチャーシューが作れそうだな、調味料もカップ麺もあるし、ちょっと作ってみるか」
「やったー!チャーシュー♪チャーシュー♪」
これはもう完全にチャーシューの気分になってるな。
さて、期待に応えないとな。
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「ふぅ、よし。これで完成だ」
「できたの?!」
「うん。味見してみる?って、もう食べてるし」
「もぐもぐ、むぐ、おいひい!」
「お、おう。それはよかったよ」
どうやらうまくできたようだ。僕も一口食べる。
「うん、うまい。よし、昼ご飯としようか」
「賛成!」
2つのプラスチック容器には汁一滴も残らなかった。
とりあえず2話投稿です。ストックはまだありますが、執筆スピードが遅いのでいつか追いつかれそうで怖いです。
修正
現在はなし