第6話:6話だけに!
今話もお開き下さり、誠にありがとうございます。
「まだぁ?」
パトさんはコアを片手に2つ、お手玉にして暇そうである。
【器用さ】にでも振っているのだろうか。
俺はというと、【体力】全振りでの格闘大会や、【力強さ】全振りの腕相撲など、検証を進めある程度の事が分かったため、1ずつパラメーターを割り振り、石で地面にメモしていく。
覚えれる範囲で増加するステータスを暗記している。
スマフォなり、メモ出来る物もって転移したかったなぁ……。
「――今終わった……かな」
そう俺が言うとパトさんはウィンドウを操作し、ステータスを元に戻している。
「調べた結果はこんな感じだった」
【力強さ】攻撃力+1 WP+1
【体 力】HP+4 防御力+1
【知 力】魔力+1 魔法防御+1 WP+3
【素早さ】回避+1
【器用さ】命中率+1
【幸 運】良く分からない
その他5毎にボーナスが貰えるようだ。
例えば【力強さ】だと、5,10,15と増える際に攻撃力が2,4,6と追加で増える。
のぞき込む様に地面のメモを見るが、パトさんは「ふーん」といった感じだ。
「まぁ、【素早さ】で回避が+1されるけど、重要なのはパトさんも体感しての通り、俊敏性の増加なのよね」
「うん、ステータスの事は拓人に任せるわ」
「あ、はい」
「それより、早く続きやろう!」
「そ、そうだね」
狩りに前向きなのはとても好ましい事なので、今は狩りに時間を割くべきだな。
ステータスに疎いのは、俺が何とかすればよい。
すぐ検証したがる癖が出てしまったが、これからは程々にしよう。
その後は、俺もパトさんと似たようなステータス割り振りにしてスライムを倒していく。
バウンドして転がっていたセンタリングも、バウンドすることなく綺麗な弧を描くようになった。
シュート役を変わってもらったり、二人でリフティングをして進んでいく。
今更だが、「お前ボールな」どころか既にボールと思い込んでいるレベルである。
ただ、途中俺のシュートが何度か空振りとなり、反撃を受けた時は焦ったが……。
結果、20匹程度倒し、二人のレベルは共に4となった。
「拓人ー、そろそろポケットにも入らなくなってきたんだけど」
「もうそんなに落ちたのか」
「うん、拓人も少し持って」
パトさんの上着の両ポケットが膨らんでおり、ポケットの口から少しコアが見えている。
手渡されたコアを受け取り、ジャージの両ポケットに入れる。
「これ、ズボン下がってきそうだ……」ジャージの内紐を結びなおし何度か小さく跳んでみる。
「これで良しっと」
「籠みたいなの落ちてたらいいのにねぇ」
「そうだねぇ…………あっ!」と思い出したかのように閃いた。
「パトさん、アイテムウィンドウ的なのがあれば、持ち運び放題だよ!」
「え、そうなの?」
えっとね、とパトさんが昔遊んでたゲームは何だったっけと思い出して続ける。
「あっ、パケットモンスターってやってたでしょ?」
「うん、小学生の時に流行ってた流れでね。うちはオレンジ欲しかったんだけど、友達が持ってたから、仕方なくパープル買ったのよね。でもそれが却って良くて――」
パトさんが蒼い瞳をキラキラさせながら思い出話をはじめ、俺もつい懐かしくなり話に花が咲いてしまった。
あのキャラクターはここが良いのに、パケット通信する時にウィルスが高確率で付くからあーなってこーなって――
あの頃はグラフィックがショボかったけど、あれはあれで味があって――
ラスボスに近づき過ぎると、全体攻撃[ソーシャルデスダンス]で初見全滅するから、教えてあげるべきよとか、全滅するのが良いんだよとか――
・・・
「で、うちら何の話してたんだっけ?」
「初めの4匹どれ選んだって所からだっけ?」
「あ、ちがうちがう、確かアイテムウィンドウがどうとかって」
「あっ」
ゲームの話になるとついつい夢中になってしまう俺の悪い癖。悪い癖という割には直す気は無いのだが。
「えっと」と話を戻す。
「パケモンだと回復材99個とか、武器とか防具とか、ほぼ無制限に入ったでしょ?」
「うんうん」
「あれがこの世界でも出来ないかなって、1か月分の食料とか、衣料品とか、テントやバーベキューセットがあれば、何処でも自由に生活できるんだぜ」
想像してごらんよと言うと、パトさんは顎に手を当て考え始めた――
「確かに……アイテムウィンドウの中って超快適そうね!」
「そ、そっち?」
――その発想は無かったわ……。
「いやパトさん、流石にアイテムウィンドウの中には入れない……とも言い切れないか」
確かに入れたら凄く安全そうだし、俺インドアだし悪くないんじゃないか……。
でも、中でバーベキューとかやったら煙とかどうなるんだろう……そうじゃなくて!
「パトさんが考えてる間に色々試してみたけど、ウィンドウは出ないっぽいね」
「そっかー、お店でカバン売ってたら買おう!」
「小さい見た目なのに、無制限に物が入るカバンか……」
「ふふっ、拓人何言ってるの、そんなカバン何億出しても買えないし」
「う、うん」
さて、進むわよと、歩を進めるパトさんが突如止まって振り返った。その後、勢いよく戻ってくる。
「拓人! これ見て!」
「ん?」
ステータス画面かと思われたウィンドウは、ステータス画面とは異なっており、しばらく開いていなかったスキルウィンドウだった。
――――――――――スキル――――――――――
【チーム作成】:ランク-
―――――――――――――――――――――――
「おおおおおおおお!」
「ウィンドウがどうのこうのって言うから、もう一つの方見てみたら……」
「流石パトさん! ほんと流石すぎる!!」
「う、嬉しそうでなによりね……それでチームって何なの?」
チーム作成はスキルだったのか! パトさんとスライム倒してる間にチーム結成ウィンドウ的なのが無いかと試し、スキルウィンドウにもその時は何も無かった。LV3か4で覚えたのかな。
「えっと、【チーム作成】押してみて」
画面をタッチするパトさん。
ウィンドウが現れ[チームを作成しますか?]と表示されている。
作成ボタンを押すと[チーム作成中]と表示されたウィンドウが現れた。
「「――――――ん?」」
「――拓人どういうこと?」
チームは作成されず、作成中の表示のままである。
心なしか、パトさんの全身が蒼く輝いている。
「こういうことかな?」
自分のスキルウィンドウから同様に存在した【チーム作成】を押すと、チームを作成とは別に、
[募集中のチーム]
パトリシア
と表示されている。
「なるほどね」と参加操作を行う。すると、参加完了のメッセージの後、ウィンドウが消えた。
「お、拓人が参加したって!」
こちらを向いたパトさんが続ける。
「う? 拓人の頭の上、何か映ってるけど?」
同様に彼女の頭上の青いバー表示を見て気が付く。
「あー、多分HPゲージじゃないかな。これでピンチか、そじゃないかとか一目でわかるわけよ」
「おー凄い凄い」とパトさんが騒いでいると表示が消えていった。不思議そうな顔をしている彼女に、ダメージ食らうと多分また表示されるよと伝え、消えない彼女のウィンドウをのぞき込む。
【募集終了】のボタンを指し、こちらを伺っている。
「うん、押してみよう」
お互いが一瞬蒼く光り、消える。
――――――――――――――――
チーム募集完了
チーム:パトリシア
参加者
★パトリシア、拓人
【経験値分配】:均等
【チーム名変更】
【作成完了】
――――――――――――――――
「おー作れたみたい?」
「そうだね、【作成完了】押して終わりだね」
「【チーム名変更】は?」
「チーム名は思いついたら変更すればいいよ」
そう言うと、こちらを少し不機嫌そうな顔をしならが「こういう事は最初が肝心なのよ!」とのこと。
そういえば俺は、チーム名の入力が必要なゲームは大体[くぁwせdrftgyふじこlp]とか適当な文字打ってて、いつもメンバーに「効率厨乙」とか言われてたなぁ。
「チーム名とかいつも適当だったからなぁ……」
「じゃあ、うち決めちゃうよ!?」
決めていいよと頷くと、早速ボタンを押し、チーム名を変更するウィンドウが出現した。
え、どうやって入力するんだこれ? と考えていると……。
「もふさん!」
「え? 音声入力?!」
その後パトさんが操作を完了させていく。
まぁそれもありか……そもそも空中にウィンドウが表示される世界だもんな……。
漢字とかどうやって入力するんだろうと考えていると、[チーム:もふさん]の作成が完了した。
「ワンチーム!」
「お、おう!」
やりきった感を出すパトさんに少し戸惑いつつも、ハイタッチする。
[もふさん]って何だろう。
俺はというと、チームの結成も嬉しいのだが、【経験値分配】:均等が気になってしょうがない。
「パトさん、1匹スライム倒すよ!」
「え、うん、また検証?」
どうやら俺の表情から検証作業が始まるのが、分かるようになってしまったらしい。
表情から思考を読まれるなんて、ゲームでは無かったが、この世界では注意が必要かもしれない。
「あ、いや、そうなんだけど直ぐ終わるよ」
「ふーん」
二人で探しながら進むが、なかなか見つからない。進むにつれてスライムの数が少なくなっている。
「拓人、スライム少なくなってきたね」
「うん、良い傾向かもしれない」
「どういうこと?」
「村や町が近いかも」
「どうして?」と首を傾げるパトさんに説明する。
普通村や町の近くに強いモンスターは存在しない。強いモンスターが存在する場合、危険で人が住むことができないからだ。また、スライムですら死ぬ可能性がある世界であれば、周辺のスライムを駆除する流れになるのは当然という考えだ。
ほうほうと感心して聞くパトさんから、賛辞を受けて思わずにやけてしまう。
褒めて褒められる。転移前より良い関係が築けてそうで素直に嬉しい。
「もふさんきーっく!」
5分ほど進むと、なんとか1匹見つけることが出来たので倒して検証する。
ふむふむ、ということは……とパトさんの後ろを歩きながら考えていると、頃合いよく声がかかる。
「で、何か良い事あったー?」
「うん、えっとね……お互い経験値3ずつ入って経験値6倍!」
「おー! 分かりやすくてよき!」
ニコっと親指を立てるパトさん。徐々にパトさんへの説明粒度が分かってきた。
今回の場合、チームボーナスとして、何もしなくても経験値が1加算されるのが仕様のようだ。
通常経験値1を均等に分割して、0.5となるが四捨五入して1、攻撃すると1増える、パーティー加入でさらに1増える。
まぁPT加入で1増えるのは当然で、もし増えないと20人チームで経験値10未満の敵を倒すと、攻撃した人しか経験値が入らない。大量に倒そうが支援職に経験値が入らない為の救済仕様だ。
チームの結成でテンションが上がり、鼻歌交じりに歩くパトさん。
その後ろ姿は美しく、肩まで伸びる薄い黄金色の髪が揺れている。
肌は白く細身の体躯。
「足の裏だけ真っ黒なんだよな……」
「拓人なんか言った?」
「いや、何でもない」
「う? あれ村っぽい?」
「え、マジで? ――本当だ、なんとなく村っぽいぞ」
どうでもいい事を考えて歩いていたら、とうとう村を発見してしまった。
大分小さい為、本当に村かは分からないが、人工物なのは確かなようだ。
「村発見きーっく!」
「何でもいいんだ」
こうして無事[村っぽい何か]を発見した二人であった。
(つづく)
お読みいただきありがとうございます。
やっと村?に着きそうです。(長かった)
ユニークも200を超え、ブックマークの数もアクセス数考えると多い気がします。
次回は楽しい話になる予定です。