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ep.60 きおくとキズナが紡ぐ"STORY"

卒業式を終え、雲雀の門出を見守った満。


そんな中、不意に告げられる契約終了の声。


最後にどうしても会いたい。

そんな満の思いが、再び彼と結びつける。


それぞれの思いが交錯する中、

ついに「その時」を迎えるー……

どれくらい、時間が経ったのだろう。

真っ白な世界の中、二人だけの空間。


僕は何も、どうすることもできないままでいた。

そんな僕にお構いなし、とばかりにミミルは表情を変えないまま、指笛を鳴らす。

すると彼の指に、一匹の青い蝶々が止まる。

以前彼と契約を交わしたときにたくさん飛んでいたものと、同じようにみえて……


「その蝶々は……」


『俺達を結んでいた糸のようなものさ。こいつが空に帰れば、契約は終了する』


淡々と話す彼を、まともに見ることすらできない。

わかっていた、つもりだった。

彼とは一緒にいれないことくらい。

でも一緒に話して、一緒に物事を解決してくれて……まるで友達のようにそばにいてくれた。

だからつい僕も、甘えてしまって……


『そう落ち込むな、さっきも言ったろ? お前はもう、俺がいなくても大丈夫だって』


「で、でも……!」


『満、お前はこれまでに幾多の願いを叶えた。相良虹己、藍沢恭弥に始まり、早乙女雲雀、鳳結愛……そしてさらにリアム・アルジェント・プラータ』


彼の言葉と同時に、目の前に一冊の本が現れる。

よくよくみてみると、それは青く光っていたあの赤い本だった。

一ページずつめくられると同時に、映像がみんなの姿を映し出すように浮かび上がる。


強制恋愛報が発布された入学式や、夏祭り、そして定期演劇会や文化祭……

それはまるで、ミミルやみんなと過ごした日々を、アルバムをめくるように振り返っているようでー……


『お前はずっと、自分よりも他人のために力を尽くしてきた。そんなお前が、俺には眩しかった』


驚いて、つい顔を見上げる。

本の中の映像を懐かしむように眺めながら、ミミルは少し困ったように笑ってみせた。


『俺には先代のような莫大な力がない。大昔に自らの力を封印した影響から、手の届かないところへと眠っている。力も名前も何もない俺が、存在している価値があるのか分からなかった……何年も、何年も』


「ミミル……」


『初めてお前を見た時、直感した。こんな俺でも、何か力になれるかもしれない。自分ではない誰かのために一生懸命になれる……そんな奴といれば、少しは俺の力も役になれるかもって。現にお前はこれだけのページをお前は描いたんだ。予想以上の収穫だろ?』


本が、パンっと音を立てて閉じられる。

彼は持っていた赤い本をすっと、僕に差し出してくれた。

その本を受け取ってすぐ僕は、彼の目を見る。

いつも見ていた彼の顔とは違う、とても綺麗な笑顔だった。


『大丈夫、俺はきえないよ。気付かないだけですぐそばにある、幸せのようにね』


ああ、そうか。

今、やっとわかった気がする。

ミミルはいなくなるわけじゃないんだって。


以前、リアム先輩の願いを叶えるときも、言っていた。

幸せは気づいていないだけで、すぐそばにあるってこと。

それと同じように、ミミルはきっとこれからもそばにいてくれる。

僕が彼を、覚えてる限りー……


「……ありがとう、ミミル。この一年間、本当に、本当に楽しかったよ。大変だったことの方が多いけどね」


『一言多いなぁ、結果的に退屈じゃなかっただろ?』


「うん! すごく、すごく幸せだった。でも、さよならは言わないよ。ミミルとはまたどこかで、会える気がするから!」


気がついた時には、僕は笑っていた。

不安だった心が、一気に弾け飛んだようなスッキリした感覚だ。

きっと、またどこかで会えると信じているからこそ最後はお別れの言葉なんて言いたくない。

ミミルが僕を信じてくれたように、僕も彼のことを信じてみたいからー……


『またね、満。お前に会えて、よかった』


彼の声がする。

それと同時に、一匹の蝶が鳥の形になって空に羽ばたいていった。

何もない上空を舞うように、ずっと……

気がついた時には、元の図書室に戻っていた。


ハラハラと舞い落ちる羽も一枚、また一枚と消えてゆく。

ただ、彼から渡された赤い本だけは、ずっと手に残っていた。

本の表紙、空を舞う羽が一枚だけ、ひらりと落ちて消えてゆく。

それはまるで、彼からの最後のメッセージのように思えてー……


「あ、満君こんなとこにいた。何やってんの?」


「卒業の記念にみんなでパーティーでも、という話になったんだ。満も一緒にどうだ?」


図書室にやってきた、虹己君と恭弥君の声がする。

彼からもらった本をぎゅっと胸に抱き寄せ、笑みを浮かべ走りだす。


「……うん、今行く!!」


外へ広がる視界はやけに眩しくて、きれいで、まるで自分が未来へ向かっているかのようで。

僕は、一歩ずつ走っていく。

まだ終わっても、始まってもない。

僕だけの新しい物語が、今始まるー……


fin

お付き合いくださった皆様、

本当にありがとうございました!!

色々あった今作ですが、

その思いは、おいおい活動報告にあげるとして……


最終話に関しては正直、

ミミル視点の話も考えたりしました。

ですが、謎は謎のままで終わらせた方が

ミミルっぽいなと思って、こんな感じになりました。


彼等の物語はまだ、始まったばかり。

きっと、どこかで会えると信じています。

その時が来たら、またよろしくお願いします!


それでは!


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