ep.6 モテ期は突然に。
フィオーリにミミルと名を付けたことで
契約してしまった満。
最初の試練を言い渡される中、
突如現れた女の子から
「彼氏になって」といわれてしまい・・・?
「ねぇ君!! 私の彼氏になってくれない!?」
がっしりとつかまれたその手に、わずかに力がこもる。
その目はしっかり僕を見据えていて、冗談を言っているようには見えない。
でも……
「い、いきなりなんですか?! あなたは一体……」
「ええ?? 君、私のこと知らないの?? ならなおさらだよ! 私の彼氏になって! 強制恋愛法のせいで今、ひっじょ~~に困ってるの!」
「そんなこと言われても……」
「お願いします! なんでもするからあ!」
両手を揃え、ぺこりと頭まで下げられてしまう。
ここまでくると、もうあとにはひけない。
困っているって聞くと、どうしても断れない自分がいて……
「いたぞ! 雲雀先輩だ!!」
「早乙女さん! 私と付き合ってください!」
「雲雀様は俺達、ヒバリクラブにこそ彼氏になる権利がある!!」
「あんたらはすっこんでなさいよ!!」
と、僕が返事する直前に何人かの女子生徒、男子生徒が押し掛けてくる。
どうやら校舎で探されていたのは、この女性のようだ。
みんながみんな、雲雀先輩! と彼女の名らしきものを連呼する。
すると彼女は、がしっと僕の腕を取り……
「ごめん、みんな! 私、もう彼氏みつけちゃった♪」
にっこりと笑顔を浮かべて……
「えええええええええ!?」
全員と、僕の声が重なる。
彼女は僕にしーっと人差し指をたてながら、お願いと小さな声で囁く。
僕の腕に、先輩の胸が押し付けられて……
「隠してたけど~私達ちょ~〜〜ラブラブだよね~? ダーリン❤︎」
「ええ?? えーっと……そ、そうですね?」
「ってわけで……ごめんね♪」
先輩の笑顔にみんな、残念そうにとぼとぼ帰って行ってしまう。
誰もいなくなると、彼女ははあっと汗を拭きながらまた笑顔を浮かべた。
「ふう~助かったぁ」
「あ、あのぉ……」
「ああ、そうだった。ごめんねぇ君、かばってくれてありがと!」
自分の制服を正しながら、前髪などをいじっている。
なんだかかわいらしい人だなあと、のんきに見てしまう。
彼女はよしっといい、姿勢をすっと正して見せる。
「見たとこ、新入生だよね? 私、早乙女雲雀! これでも高校三年生! 君は?」
「赤羽満です。えっと、さっきのは一体……」
「いやあ、自慢みたいになるからあんまり言えないんだけど……実は強制恋愛法のせいで彼女になっての嵐でねぇ。私から彼氏ができたっていえば、撒けるかなあって思って」
つまり雲雀先輩は、この高校じゃ人気者なのかな?
でも男子の中に女性がいたけど、あれは一体……
「で、ぶっちゃけのところ……君、彼女いる?」
「いません、けど……」
「本当に私の彼氏にならない?」
「え? えええええ!?」
今日は驚くことばかり起こるなと、我ながら思う。
だけど彼女はずいっと僕に近づいて……
「多分、今日言ったことはすぐ広まっちゃう。これで嘘でしたぁってなったら、またさっきの繰り返しだと思うんだ。ここはお互いのためだと思って! お願いします!」
「いや、あの、今さっき知り合ったのにそれは……」
「もう俺の言ったこと忘れたの、満」
声が聞こえる。
それがミミルのものだとわかるのに、少し時間がかかった。
雲雀先輩の後ろの方にいる彼は、ふっと笑みを浮かべて見せる。
「現れる女の提案を飲むこと、それがお前のためだよ。満」
「提案が彼氏になることだなんて、聞いてないよぉ~」
「話は後だ。退学、したくないんでしょ?」
ミミルに言われ、何も言い返せなくなる。
彼女は「誰と話してるの?」などと、不思議そうに首をかしげている。
その姿はかわいらしく、とても断ることなんてできなくて……
「え、ええっと……僕なんかでよければ……お願いします」
「ほんと!? ありがとぉぉぉぉぉぉ! この恩は一生忘れないよ! よろしくね、みっちゃん!! 申請書出しちゃうから、名前の漢字教えて!」
先輩が笑みを浮かべながら、ぶんぶん手を握る。
流されるが否や、僕はあははと笑い返す。
何が起こっているのか、虹己君や恭弥君でさえも混乱しているかのように顔を見合わせていて……
「さぁ、物語の幕開けだ」
くつくつ笑うミミルワールドに、僕達は見事にはまってしまったのだったー
(つづく!!!)
ようやく女の子が登場しました!
満の相手役、でもある雲雀ちゃんですが
仮、という名で始まる二人の関係性・・・
今後どうなっていくか、
見守っていただけるとありがたいです。
次回は16日更新。
雲雀の意外な素性が明らかに!