ep.57 Dream with two us
バレンタイン直前。
春夜は恭弥と付き合うきっかけとなった約束が
叶うことに不安を感じていた。
そんな不安を知った満は
雲雀や結愛と共に励まし、
とうとうバレンタインを迎えるー……
☆恭弥Side☆
お正月商品だったものは終わった直後、あっという間にバレンタインへと様変わりされてゆく。
通り過ぎる度に聞こえてくる人々の声はいつも楽しそうで、ワクワクしていて……見ているこっちまで幸せを分けてもらっているような、そんな気分になれた。
「はい、きょうちゃん。ハッピーバレンタイ〜ン!カレカノになって初ってことで、初めてチョコ作りました〜〜春夜ちゃん頑張りましたよぉ〜」
三年前の今頃、春夜は俺にとチョコレートを持ってきてくれた。
市販で買ったチョコの箱を可愛らしく自分で包装したらしく、自信満々でニコニコしながら渡してくれた。
それが俺には、嬉しかった。
「春夜、よかったら来年もチョコレートをくれないか? お返しは、ちゃんとするから」
「もちのろ〜ん。来年も再来年も、ずっとずぅっと差し上げますよ〜」
彼女は常に笑顔で、優しくて、俺にとっては癒しでもあった。
部活で彼女がいるだけで成績が良くなったり、練習を頑張ろうって思えたり……
恋をする、というのは単純だ。
この高校に入って彼女といれる時間が増え、さらに愛しさが増した気がする。
彼女となら、どんなことでも乗り越えられる。これから先も、ずっと二人でいれたらいい。
そう、思っていた。
「きょうちゃ〜んすごいね〜今日も皆中じゃあん。絶好調すぎて先生大興奮だよぉ〜これなら、今年の総体も大丈夫だね〜」
あの日ー彼女の作ったような笑顔を、見るまでは。
ちょうど、今日はバレンタインだった。
毎年俺と彼女はその日は一緒に過ごそうと、連絡を取り合う。
今年は彼女からの連絡はなく、俺から入れた時にしばらくして返事が来た。
そんなことがあったからか、彼女に何かあったことは、なおさらすぐに感じ取れた。
毎日の勉強も、部活の練習も、頑張れば頑張るほど彼女は作った笑顔をみせる。
だから、支えてやらなければ。彼氏としても、一人の男としても。
「そう言えば、今日はバレンタインだな。春夜」
隣にいる彼女に、あえて声をかける。
彼女ー春夜はいつもの様子で、あちゃ〜と声を上げて笑みを浮かべた。
「あ〜そうだっけ〜? 最近三年生への準備とかで忙しくって忘れてたよ〜」
「珍しいな、毎年用意してくれてたのに」
「ごめんごめん〜買ってあげるから、好きなの探してきなよ〜」
春夜もあっちみるね〜と言って、少し離れたポップの所へ行く。
やはり、まだ笑顔がぎごちない。
無理に聞くのはよそう、と思いつつもどこか踏ん切りがつけにくく、彼女の背中を見送れずにいると……
「なぁぁんちゃって」
ふいに彼女が振り返る。
次の瞬間、視界が真っ暗になってー
「えへへ〜ごめんね〜びっくりした?」
気がつくと、俺は春夜の胸の中に抱き寄せられていた。
いつもと同じで暖かく、とても優しい温もりが肌を通して伝わってゆく。
「は、春夜? 急に、どうし……」
「ねえ、きょうちゃん。きょうちゃんは、約束してくれたよね。春夜の夢、一緒に叶えるって」
急に何を言い出すのか、そう思った。
俺達のきっかけはそもそも、彼女が叶えられなかった夢を俺が背負うこと。
だがなぜ急にそんなこと……今年が最後の大会だっていうことと、関係あるのか……?
「ああ、言ったな。それがどうした?」
「その夢が叶ったら、春夜はもう用済み?」
「……え」
「きょうちゃんは、どこにも行ったりしない?」
彼女の顔が、あまり見えない。
それでも抱き寄せている手が、少し震えているのがわかった。
初めて感じた、彼女の不安。
今まで聞いた事も、見た事もなかった。
一緒にいるが故俺は、大事なものすら見落としていたのかもしれないな……
「約束なんて、きっかけにすぎない。俺は春夜が好きだ。だからお前との約束を果たしても、果たさなくてもお前と一緒にいる」
「きょうちゃん……」
「だったら、もう一つここで約束をしてみるのはどうだか? 俺はお前以外の女と付き合わない。来年も、その先の未来も二人で過ごすことを」
彼女の背中をそっと自分に、抱き寄せてみせる。
これは俺自身への賭けと、未来への賭けだ。
彼女を不安にさせてしまうこと自体、彼氏として失格だ。
そのことに気づけなかった、悔しくて、悔しくて仕方ない。
だからこれからは不安にさせないよう、どんな時も、どんな時でも彼女と共に……
「そっか……ふふっ、やっぱり満ちんの言うとおりだったなぁ。春夜が言うより先に約束するなんて、ずるいよ……」
「春夜?」
「あーあーなんか春夜、悩んでたのがバカみた〜い。じゃあ、約束してくれる? 春夜ときょうちゃんは、ずっとずぅっと一緒だって。もし破ったらぁ、きょうちゃんの苦手なものいぃっぱい食べさせてやるぅ〜」
やっと離してくれた彼女の笑顔はいつも以上に優しくて、明るくて。
その笑顔がみれただけで、俺は……
「あ、でもバレンタインのチョコを買ってないのはほんとなんで〜……これからチョコフェアにでも行って食べますか〜」
「ああ、そうだな。せっかくだし、春夜も好きなものを買って一緒にシェアしないか?」
「いいね〜それ〜採用〜〜」
重なった左右の手が、冬の寒さなんて溶かすくらい暖かくて心地よい。
俺たちの行く道はまるで雲ひとつない、とても綺麗な青空のように広がっていた……
(つづく!!)
今日はバレンタインですね!
偶然にも時系列が合ったので当日に更新しましたが…
いやぁ〜……リア充爆発しろって感じですね。
この二人は本当に無敵というか
どんな困難でも乗り越えていけそうです。
個人的にイケメンを描くときは
「彼女が聞いたらかっこいいけど、
他者が聞いたらイラっとするよね」
的なことを目指します。
今回もかなりイラッとしたので
それなりにイケメンに仕上がってるかと笑
そんな感じでお送りしていたFIORIですが
残すところ、あと3、4話くらいです。
え?って思うでしょう?
実は私もそう思ってます…笑
次回は22日更新。
いよいよ……その時です。




