ep.55 もう2月になったって思うとなんだか急に心が重くなるんだ……
ついに迫った合唱コンクール。
ずっと一人で戦ってきた虹己に、
満と恭弥だけでなく
結愛も手を貸してくれ、
無事成功をはたす……
しんしんと、白い雪が空から一つ、二つと空を舞う。
ただ歩いているだけなのに、体は正直なのかがたがたと震えてしまう。
寒くて寒くて、身も心も凍えてる僕に対し、どこかクラスは楽しそうな笑い声が絶えずー……
「ねえねえバレンタインどうする?」
「作りたいんだけど、私手作りとか初めてなんだよねぇ……」
「じゃあ一緒に作ろうよ! 寮の台所借りてさ!」
「あ、ありがとう……うまくいくかなぁ?」
どこを歩いていても聞こえてくるのは、同じ話題ばかり。
なんだか聞いちゃいけないことを聞いたみたいで、少し肩身が狭く感じてしまった。
あっという間に合唱コンクールも終わり、もう2月だ。
2月といえば、女子が好きな男子にチョコレートをあげるイベントでもあるバレンタインデーがある。
うちの学校ではお菓子の持ち込みは禁止されておらず、チョコのやり取りの約束をしたり、どんなのを作ろうか話す光景が見られるのは極めて普通らしい。
そりゃ、強制恋愛法なんてものを作れるくらいだからここの先生達って緩いんだなぁとは思ってたけど……
こうやって普通に話されると、聞いちゃっていいものか悩むというか……
「ふうん、バレンタインねぇ……リア充にはうってつけのイベントってとこか」
そんな中、聞き慣れた声がする。
久しぶりに聞こえたその声につい、周りをきょろきょろ見渡してしまう。
どこを見ても、彼の姿はなく、気のせいかと思いつつもどこか寂しさが心に募る。
「やっほ、満」
視界の中、ふいに人が出てくる。
思わず、わあっと大きな声が出てしまった。
数人のクラスメイトがなんだなんだと僕を見ているのにも関わらず、彼は相変わらずの調子で……
「相変わらず反応が面白いよな、お前って」
予想通り、とでもいうように意地悪そうにくつくつ笑う。
無論、ミミルだ。
彼の急な登場にびっくりしすぎた僕は視線を向けたみんなへ、何でもない! と慌てて返す。
視線がそれたのを確認しながら、僕はそうっと席に座り直し、
「ミミル……急に出てくるの、いい加減やめてくれる?」
と小声でささやいて見せた。
「まあ俺が神出鬼没なのはいつものことじゃん? そう怒るなよ」
「……もう、またそんなこと言う」
「それよりお前、結構頑張ってたじゃん。合唱コンクール。虹己が安心できるよう、緊張しないようあれやこれや調べてたみたいだし」
ふいに話題をそらされ、少しムッとしてしまう。
確かに虹己君のためになにか出来ないかと二人で緊張しないコツを調べたり、練習になるべくつきあったりしていたのは紛れもない事実だ。
けれど、なんで知られてるんだろう。休むって言ってたのに……
やっぱり……あれは……
「……ミミル……ボールを操って佐多さんにけがさせたでしょ?」
「ん? なんで?」
「佐多さんが話してるの聞いたんだ、ボールが急に飛んできたって。他の子に虹己君がピアノ弾けるのよく知ってたね、って聞かれた時にも、なんでだっけとか忘れたとか曖昧なことばっかり言ってたから……気になって……」
今思えば、あの時虹己君が佐多さんや先生と話している内容全てが聞こえたこと自体もおかしなことだったと思う。
もしミミルが休むと言って僕を見ていたというのなら、聞こえるように仕向けたり、虹己君を伴奏者にしたりとやっていてもおかしくない。
現に何回も彼の能力は、この目で見てきたから……
「へぇ、俺を疑うんだ? ま、その通りだけど」
「やっぱり……なんでそんなことしたの? 休むって言ってたのに……」
「まあ、いいじゃん細かいことはさ。俺がいなくったって自分達の力で何とか出来たんだ、それだけで立派な進歩だろ?」
そう言うミミルの笑みは、いつもと変わらない様子だった。
てっきり何かたくらんでるんじゃないか、なんて疑っていたけど……そうでもない、ってことなのかなあ。
「んじゃ、その調子で頑張れ。影ながら、応援しとくから」
「えっ、影ながらってまだ休むの!?」
「いやあ、ほんとは力になりたいんだけど寒くて寒くて~……つーわけで冬眠してくるわ、次の春まで起こさないでね☆」
そういうとミミルはじゃ、と小さく別れを告げ、次の瞬間には誰もいなくなってしまう。
忘れてた、ミミルってこういう人だった……
「赤羽君、先生がノート返すから運びにきて〜って言ってたよ」
ミミルがいたことなんか知らないクラスメイトが、僕に話しかけてくる。
わかった、と返事しながら僕は職員室へと歩き出したのだった。
「んじゃ、これで全部な。随分危なっかしいが……大丈夫か?」
「へ、平気です! これでも僕、男子なので! では、失礼します!」
わざわざ扉を閉めてくれた先生に会釈をしながら退室する。
まさか一人で全部運ぶことになるとは、なんて思いながら落とさないようによっと持ち直した。
男の子なのに、どうしてこんなに力がないんだろうなぁと我ながら自分の情けなさを今更悔いてしまう。
これが恭弥君だったら、すっと持って行ってくれるんだろうなぁ。
同じ男性なのにこの差はなんだろう……
「えっ!? じゃあはるちゃん、バレンタインまだ決めてないの!?」
あれ、この声。聞いたことある……
そう思いながら、そうっと壁から覗いてみる。
そこにはやはり雲雀先輩がいた。
彼女の隣には春夜先輩と、鳳先輩の姿もある。
そういえば3年生は今自宅学習期間に入っちゃったんだっけ。
今日が登校日だから、放課後少し会おう! って連絡きてたから……ちょっと楽しみなんだよなぁ。
「声が大きいですよぉ〜雲雀ぱいせぇん。そんな大事ですかぁ?」
「え、だって……もう来週だよ? バレンタイン。去年はもうこの時期から準備してたよね?」
「ん〜〜そうだっけ〜〜?」
「雲雀先輩の言う通りだよ……何作るかとか……トッピングはこれ、とか色々決めてたのに……どうしちゃったの? 春夜ちゃん」
「……春夜、きょうちゃんと付き合えるのあと4ヶ月しかないかもしんないんだよねぇ……」
!!!?
(つづく・・・)
本編同様、暦も今日から2月ですが
狙ったわけではないです。
ただの偶然です笑
この話は実は昨日書き直した
かき立てほやほやのお話だったりします
あえて続きが気になるところで
終わらしてみました、えへへ。
……自虐する感じになっちゃいますが
この作品書き直してばっかりなんですよね。
いつになったら、彼等は自立してくれるのやら……
次回は9日更新。
春夜の言葉の真意とは!?




