ep.52 こうして伏線は回収されてゆく
季節は三学期。
一年の終わりのイベントとして、
合唱コンクールが開催されることに。
やる気十分な満だったが、久々に現れたミミルは
突如、しばらく休むといい……?
ピアノの音が、なめらかに音楽を奏でてゆく。
両手で振られた指揮棒がゆるやかに止まると同時に、演奏もとまる。
「皆さん、とてもいいですね。男女ともにバランスが取れています」
副担任でもあり、音楽教師でもある南先生がぱちぱち手をたたく。
ほんとかなぁと思いながらも、僕はふうっと溜息をついた。
合唱コンクールまでの期間中、自由な場所で今日も今日とて放課後練習中である。
ちなみに女子はソプラノとアルト、男子はテノールとパート別に分かれて歌うことになっている。
僕はもともと声が高いこともあって、女子のアルトパートを手伝わされてるんだけど……
合唱ってやっぱり大変だなぁ。ついつい他の人につられちゃうし、姿勢をひとつ変えただけで声の出が変わる。
僕達のクラスが歌うのは、「時の流れるままに」という曲。
混声三部声、といわれる形に作られていて、ゆったりと始まる旋律から、サビのところでダイナミックに盛り上がってゆく。
歌詞も一つ一つが心に響いてきて、高校生みんなへの応援歌みたいなー……クラスみんな、満場一致でこの曲に決まった。
先生が候補に出した曲は全部オリジナルらしく、なんでもリアム先輩が外部にお願いして作ってくれたものなんだそう。
しかもその人が、相当な有名人で……
「それにしても、いい曲だよね~これ! なんといっても、あの音波弦だもん!」
「わかるぅ~ほんと、あの会長ただものじゃないよねぇ〜!」
女子達がきゃっきゃっ言いながら、凄いよねーと声を漏らす。
音波弦、数々の賞を取った有名なピアニストだ。
アイドルのことしかあまり詳しくない僕は、クラシックなんて縁遠くて名前を聞いたことあるくらいしか知識がないんだけど。
そんな人に、どうやってリアム先輩は頼んだというのだろう。
やっぱりリアム先輩って、思ってる以上にすごい人なんだなぁ……
「じゃあ先生は、会議に行くから。あとはよろしくね、藍沢君」
「はい、お任せ下さい」
先生が足早に出ていってしまう。
ふうっと一息つくと、お疲れと彼が、そばにやってきてくれた。
「みんな、だいぶいい感じに仕上がってるな。練習してそんなに日がたっていないと言うのに」
「恭弥君こそ! 指揮者、すっごい様になってるよ!」
「俺はただ、先生にいわれたからやってるだけで……あまりからかわないでくれ、満」
照れるように頬をかく彼は、なんと指揮者という大役を任された。
先生の推薦とはいえ、みんな異論一つなくあっさりきまった。
これこそ恭弥君の人柄がなせる技ってやつだよね!
「そうかなぁ? 自分じゃ気づいてないだけで、すっごい似合ってる。お世辞なんかじゃないよ」
「……お前は嘘が苦手だからな。ありがたく受けとるとしよう」
「そういえば虹己君、遅いね? 日誌出してから来るって言ってたのに」
「確かに……ここのところ、様子がおかしいのも気になるが…」
考え込む彼は、今は誰もいない空間に語りかけるように言う。
合唱コンクールの話が始まって以来、虹己君はどこがおかしい。
この曲を選ぶ時だって乗り気じゃなかったし、練習もさぼりがちだ。
元からこういうイベントごとに参加するのが嫌な性格なのは分かっていたけど、いつも何だかんだ言って楽しんでいたのに……
「僕、様子見てくる」
いてもたってもいられず、音楽室のドアを開けようとするとー
「ええ!? 佐多さん、手捻挫しちゃったの!?」
室内はみんなのお喋りで、普通なら聞こえるはずのない叫び声が、微かにではなくはっきりときこえた。
なんで、どうして聞こえるのか。
そんなこと考えもせず、僕はそうっと扉から覗き込んでしまう。
「す、すみません、体育でうっかり……」
「まあ大変……じゃあコンクールで伴奏をするのは無理かしら……」
「あの、それで……なんですけど、相良君に代わりをお願いしたいなって」
「………は?」
目をこしらえて見ると、後ろの方に虹己君の姿が見える。
佐多さんと一緒に来たのだろうか。彼女は迷う様子もなく、彼の手を取ってー
「だって相良君、ピアノ経験者なんでしょ!? 私聞いたの。本当は優れた才能を持っていたのに、やめちゃった子がいるって!」
「……っ……それ、どこから……」
「お願い! 私の代わりに、ピアノ伴奏してくれない!?」
え、ええぇぇぇぇ!?
(つづく!!)
今年も雪が降ったりして、寒いですね
そんな中、私はイヤホンを新調しました。
まだ聞ける、と思ってズルズル使っていましたが
いざ変えると、こんなに違うの?ってくらい
変わりました。イヤホンってすごい…
そんなことはさておき、
本編は合唱コンクール編へと進んでいます。
指揮者を恭弥にしたのは、個人的に
めちゃくちゃ様になるだろうなという
妄想からだったり……
次回は19日更新。
去年は遅れた分一気にやってましたが
今年はラストにも向かっているので
のんびり、ゆっくり更新していきます
虹己に最大のピンチ到来か!?




