ep.51 新学期が始まったのに彼が職場放棄をしたんですが。
3学期に入り、
それぞれ新たに一歩踏み出していく。
生徒会も無事に引き継がれ、
平和な日常が戻ってくるかと思いきや……?
「プリント、行き渡ったかー? また音楽の時に話があったと思うが、今月末は合唱コンクールがクラス別に行われる。3年は受験で参加出来ねぇが……やるからには優勝目指すぞーいいなー?」
いつものやる気がなさそうな先生の声に、わずかだけど覇気を感じさせる。
そんな様子を珍しく感じながら、紙に目を通した。
楽しかった冬休みはあっという間に過ぎてゆき、あっという間に3学期だ。
徐々に二年生へとなるカウントダウンが始まってるのを感じるのもあるけど、それより先にとあるイベントが待ち構えている。
それが合唱コンクールだった。
四葉では毎年、1年の締めくくりにクラスの団結力を試すイベントとして開催しているらしい。
僕自身歌を聞くのは好きなんだけど、歌を歌うのはそんなに上手くなくて……
「……意外だな、秋山先生があそこまでやる気なのは」
休み時間が始まるが否や、恭弥君が僕に話しかけてくれる。
その彼の隣には、虹己君もいて心底面倒くさそうな顔をしていた。
「ただ負けたくねえだけなんじゃねーの? はぁ〜合唱とかくっそだるっ。オレサボっていい?」
「さ、さすがにそれは……でもみんなと力を合わせて何かするって、ワクワクするよねっ。体育祭みたいでっ!」
「……君、ほんっとお気楽だよね」
呆れたような声を上げながら、彼は先に席戻るからと足早に行ってしまう。
恭弥君も気にするな、とばかりに肩を叩いて少し離れた自分の席に戻ってゆく。
きのせい、なのかな。なんだかいつもより機嫌悪そうにみえるけど……
「虹己君、何かあったのかなぁ……」
「そう思うなら、自分で聞いてきたらどうなんだ? ご主人様よぉ」
ふと声がする。
気がつくと、目の前にミミルがいた。
どこかに行ってるクラスメイトの席を陣取って、肘をたてながら僕を見ている。
その姿になんだかすごく懐かしさを感じてしまって……
「ミミル、なんか久しぶり……だね」
「そう?」
「うん……最近全然姿見てないなぁって。いつもこんな風に、呼ばなくても来てくれるから……」
僕が彼に小声で話している。そのはずだった。
ミミルの姿がはっきりと見えない。
瞬きをしては消え、もう一度瞬きをしたら見えて。
僕、疲れてるのかなぁ。そう思い、目をゴシゴシさせていると……
「今日ここにきたのは、主人であるお前に提案をしにきたんだ」
「提案?」
「赤羽満。今後起こる事象はすべて、自分自身で解決しろ」
その言葉にたちまち驚きと不安で心がいっぱいになる。
なんで、どうしてそんなことを言うんだろう。
そんな僕の様子をお構いなし、とばかりに彼はたたみかけるように言葉をつづけた。
「俺さぁ生徒会の一件で、すんげー疲れたのよ~~~~だからあ、休みたいわけ。お前らの世界で言う、冬休み的な?」
「そ、それは分かるけど……冬休みの間も僕、力を使うようなことしなかったよね? それで十分休んだんじゃ……」
「人が疲れたって言ってるのに働かせようとするの~? 労働基準法違反だわ~」
「……よくそんな言葉知ってるね、ミミル……」
確かにミミルの言い分もわかる。
生徒会のことで力を解放してもらったこともあるし、それ以前にたくさんのことをしてもらった。
休みたい、そう思うのは無理はないけど……なんでこのタイミングなんだろう。
ほんとミミルって、よくわからないなあ。
「そこで、フィオーリ様は長期休暇をいただきます。今から起こる出来事に関しては、いっっっっさい手を貸しません! ご武運を、お祈りしますよ? ご主人さまっ」
まるでメイドカフェにいそうな言葉で、ウインクを浮かべながら消えてしまう。
同時に始業のチャイムが鳴る中、僕は1人ぽかんとすることしかできなかったー
(つづく・・・)
みなさん、あけましておめでとうございます!
今年も始まりました、FIORI!
新年早々登場するのは、ミミルですが……
実は、なんと8話ぶりの登場です
…忘れてたわけじゃないですよ?笑
これも、何かの予感……かもしれませんね。
ぜひラストまでよろしくお願いします!
次回は11日更新!
ミミルの衝撃発言にどうする、満!




