ep.44 飛べ、空高く。舞え、ヒバリのように
生徒会長・リアムに協力したことで
お礼をもらった満
そのお礼はまさかのTOWAの
観劇チケットだった!
一方、TOWAの大ファンでもある彼女ー早乙女雲雀も
とあることで頭を悩ませており……?
☆雲雀Side☆
『わらわの封印をときしものよ、今ここに望みを聞き届けよう。さあ、願いを言いたまえ。若き勇者よ』
小さい時に見た、彼の演劇。
それが私の、全ての始まりだった。
大好きだったお兄ちゃんがやっていた演劇、それの参考にと一緒にみせてもらったDVD。
その時のことは、今でも思い出す。
それくらい彼―TOWAの演技は、衝撃だった。
彼のようになりたい、彼のような演者になってあの舞台にたちたい。
その思いで、演劇を始めた。
演じれば演じるほど、自分が自分じゃないみたいで他の誰かになれるような……そんな気がした。
そして、私はー
「君は天才だ!! 将来、大物になる!!」
いつからか、人に見られるのが多くなった。
あんなに楽しくて、何もかも忘れられる舞台が少しずつ怖くなるように感じた。
みんなが期待している、ならそれ以上のものを演じなければ。
早乙女雲雀という演者にしかできない、唯一無二の演技を……
「たとえあなたが忘れたままでも、僕が! あなたを導きます!! あなたに、笑ってほしいから!!」
苦しくて闇の中を彷徨っていたあの時―彼に出逢えた。
初めて会った時から純粋で、まっすぐでどこか不思議な……
赤羽満。私にとって初めての、白馬の王子様―……
「ひ・ば・りぃ? なぁに、この二学期末テストの結果は」
にこにこした笑みが、怖さをも帯びている気がする。
そんな彼女に私も負けじと、えへっとウインクをしてみせるのだった。
早乙女雲雀、高校三年生! もうあと3ヶ月ほどで、卒業します!
……ってほんとは胸を張ってそう言いたいんだけど……
「あんた、進路決まったとはいえ、こんな結果出して……どこがわかんないの? 補習あるから、教えてあげ……」
「えっとねー、全部☆」
「ひぃばぁりぃ?」
「ご、ごめんごめん! 冗談! 冗談だから!」
二学期の期末テストにて私、最低点数を記録しちゃいましたっ!
それもこれも早めに進路決まっちゃったせいか、勉強なんかしなくていいやぁって投げ出したのが原因なんだけど……
いやぁ、さすがにこれはダメだよねぇ。全教科赤点とか、シャレにならないというか……
「ほんっとあんたって演劇以外てんでダメね。演劇バカって言われるのも無理ないかも」
「ともちゃぁん、それって褒めてるの?」
「さあ、どっちかしらね。あら? 雲雀、メールきてるわよ」
そういいながら彼女ははい、と私に携帯を渡してくれる。
誰からだろうと思いながら、おもむろにメールを開くと……
「と、ととととととTOWAの観劇チケットぉぉぉ!?」
「うわっ! な、何よ急に……」
「やばいともちゃん!!! 私、TOWAの劇見れるかもしんない!!! みっちゃんと一緒に!!!」
私が言った言葉に、彼女は眉をひそめる。
こんな時に何を言っているのか、とでも思っているのだろうか。
でも私にはそれどころじゃなかった。
「補習終わったら私も声かけようと思ってたのに、あっちから誘ってくれるなんてなぁ〜しかもあのTOWAだよ!? 生で見れるなんて、最高じゃない!!?」
「………それは分かったけど、誰からの誘いですって?」
「え? 誰ってぇ……みっちゃんだけど……もしかしてともちゃん、まだみっちゃんのこと……許して、ない?」
やっと気づいた、とばかりにともちゃんははぁっとふかぁい溜息をつく。
それでも彼女は仕方ないとばかりに、私に言葉をかけてくれた。
「別に、雲雀自身の問題だから、これ以上首を突っ込むつもりはないけど……あんな男で本当にいいのか、少し心配なだけ」
「大丈夫だよ、ともちゃん! みっちゃんってちょっと弱々しいけど、いざとなるとすっごくかっこいいんだよ!」
初めて会った時は、ただの後輩だった。
私の仮の彼氏として、一緒にいてもらうだけ。
そしたらお互い助かるし、ウィンウィンだなって思ってた。
けれどそれはいつしか本当の恋のようになっていって……今ではずっと一緒にいたいって思ってる。
こんなこと、みっちゃんに言ったら照れて真っ赤になりそうだなぁ。
「みっちゃんって不思議な人なんだ。無理無理~って言う割に、最後はビシッと決めて……ここぞって時は本当に頼りになるっていうか……この人なら大丈夫だって思えるんだ」
「……あっそ、相変わらず大好きなのね」
「えへへ、みっちゃんにはナイショだよ?」
こんなに人を好きになるなんて、思わなかった。
後輩ということが、こんなにももどかしいとは思わなかった。
同じ年で、同じ教室で、もし一緒に授業を受けたり、一緒におしゃべり出来たらどんなにいいだろう。
ほんの少しだけ、彼と一緒にいる二人の友達が羨ましく思えてしまう。
いつも彼のところに行こうとすると、仲良さそうに話している三人はどこか私の入る隙がないようで……
みっちゃんのことだから浮気とかの心配はないって思ってるけど……
「その赤羽が、他の奴に取られないように補習はしっかりしないとね」
「うう……頑張りまぁす」
「ま、大好きなTOWAもかかってることだし? 仕方ないから、私がみっちりおしえてあげる」
みっちゃんともっと、もっと一緒にいるためにも。
私は、私のことを精一杯やろう。
いつかみっちゃんに、私のステージを特等席で見てもらうためにも。
「じゃあともちゃん! そうと決まれば、ご指導ご鞭撻よろしくね!」
待っててね、みっちゃん。
私、必ずあなたを迎えに行くからー!
(つづく・・・)
前回のあらすじで、デート開幕!
とか書いちゃったのでもしかしたら
期待していた人もいたかもしれませんが、
まさかの雲雀回をお送りしました。
サブタイに名前を分からないようにいれよう!
と思ったのですが、難しすぎました。
まず「ばり」がつくいい単語なんてないです笑
もし見つけた方がいたら教えてほしいものです
冬休み編ではこんな感じで
他キャラクターの話をたまにお届けいたします
内容が一応本編と繋がっているので
これが番外編になるのかならないのかを聞かれると
正直困ると言うか……作者自身、分かっておりません笑
次回は11日更新。
次こそ、ちゃんとデートします。
ほ、ほんとです笑




