表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/60

ep.42 白銀の皇帝は孤独に微笑む

かつて、この高校を救ったといわれている

伝説の存在・フィオーリ

その力を求め、願いを叶えようと

画作した生徒会長・リアム


選ばらし者・満により、

長年の思いが叶えられた。


そして、彼は語り出す。

あの日―全てが始まった時のことをー


☆リアムSide ☆


記憶は、時が経つにつれ薄れてゆく。

それはむなしく、時に残酷となる逃れられない運命―………


あれはまだ、俺が中学校に上がったばかりの頃の話。

俺の家―プラータの一族は代々から続く、大統領一家だ。


生まれてきた頃から国の長になることが決まっており、そのための英才教育を施される。

その勉強の一環で、他国で生活をしていた。

それでも親の公務や会議へ共に出席することも多く、授業にもあまり出なかったせいもあってか、自分から直接言わなくても「プラータの名を継ぐ後継者」ということは、周囲にも知られていた。


外に出ると、がたいのいい大人達が護衛につくのが当たり前。

学校などの人目がつくところでは小型カメラを搭載したドローンで、何かないか見張っている。

常に、誰かの監視があるようなそんな生活が俺―リアム・アルジェント・プラータの人生だった。


そのこともあってか、俺に話しかけてくれる同年代の子達は、みんなどこかよそよそしく、距離を置くように話しかけてくる。

当然、俺の周りには一人もいなかった。


「あの……次の授業、そっちじゃありませんよ?」


彼女に声をかけられるまでは。


「これは失礼。危うく遅刻しかねるところだった、礼を言う。おや? 君は、確か……」


「あ、いえ。えっと、リアム様……ですよね。母が侍従をさせていただいてます、娘の速水つばめと申します。もしよかったら、音楽室までご一緒させていただけませんか?」


侍従の娘、だと言った彼女はどこか見覚えがあり、優しく丁寧な子だった。

大人達しか周りにいなかった俺にとって、同年代の子はそれくらい貴重だったし、家の関係者とはいえとても嬉しかった。


「リアム様、最近お忙しいですよね? もしよかったらですが、私のノートを使ってください。少しは、お勉強に役立つかと」


中学生とは思えないくらいしっかりとした立ち振る舞い、大人顔負けの仕草。

何より彼女が優し気な笑みを向けられるたび、なぜか幸せな気持ちになった。


それが恋だというのなら、もうすでに落ちていたのかもしれない。

速水つばめという人間は侍従という肩書以上に、特別な存在になっていた。


「なあつばめ。この俺様に一生仕える、というのはどうだ?」


「? 何を当たり前のことをおっしゃっているのですか? ご命令などなくても、私はあなたに一生尽くすおつもりですが……」


「侍従としてではない。一人の女性として、だ。この意味、分かるか?」


歳を重ねていくにつれ、俺は彼女という人柄にどんどんひかれていた。

だから、気付けなかったんだ。

侍従と主という、身分の違いに。


「いくら坊っちゃんのご命令とはいえ、彼女との交際を許すわけにはいきません。坊っちゃんの婚約相手は、ご主人様が選びに選び抜いたプラータ一族を支えるにふさわしい方でなければ。どうか、その考えはお早めに捨てられますよう……」


どの大人に話しても、口にされるのはプラータの名のことばかり。

俺がここに生まれてさえいなければ、彼女と一緒になれたのだろうか。

気が付いた頃には彼女と一緒にいるにはどうすればいいか、そのことばかりを考えていた。


そして、思いついた。

主になればいい。主にさえなれば、どんな決まりも作れる。

そのための予行練習として、生徒会長になって、校則を発布しよう。

形だけでもいい、カップルにならないと退学する校則を作れば大人達も口答えできないだろう。


そう、そこまではよかったんだ。

なのに、彼女はー……


「ねぇ速水さんのこと、聞いた? 交通事故だって……」


「うん、聞いた……びっくりだよね……昨日まで学校にいたのに……」


その日は、雪が降っていた。

中学二年生になった年だった。

その頃の俺は生徒会長になったばかりで、早速法則をと思っていたのにー……


運命というのは残酷だ。どうして若い命を、こんなに簡単に奪えるのだろう。

つばめは死んだ。もう話すことも、隣にいることもない。

こんなにも悲しくて、切ないものだというのならいっそのことなかったことにしよう。

それが、一番いい解決策だと思った。

そして俺はー




「よお真純、お前も四葉高校への入学決まったんだってな。おめでとう。同じところに通えるとは、とても嬉しく思うよ」


「思ってもねぇ労いをどーも。てめぇも受けてたとはな。腐っても切れねぇ縁ってのは厄介なこった」


四葉高校。

その昔、先祖が作ったといわれている。

俺もそこに難なく合格を果たした。


小学時代から性格も、環境も全く違ったと言うのに、なぜかクラスも被ることが多かった真純も一緒だった。

なぜそこを受けたのか、答えはひとつしかない。


「あそこは俺様の祖先が作った学校でな。前に話したことはあっただろう? 幸せの運び人の話は」


「あー、あのうさんくせえ噂話? つかなんでそんな話……」


そこの高校では噂話のようで本当の話が、我が家には家訓のように代々受け継がれていた。

それが幸せを運ぶもの、フィオーリ。

それが本当かどうか、わからない。

ただ荒地だった地をすくったという力が本当なら、俺の願いも叶うはずだと思った。


そして、行動を起こした。

フィオーリに会うための、準備を。


「喜べ、真純! これでお前も、もう一度つばめに会えるぞ! これを見てくれ!」


「うわ……なんだこれ」


「無論、技術を駆使して俺が作らせた人間型アンドロイドだ」


「………お前ん家ほんと何でもありだな」


「……フィオーリだ……フィオーリにさえ選ばれれば、ここに魂さえ、命さえ吹き込めば完璧なはず…つばめにもう一度会える……待っていろ、フィオーリ……」


もう一度、つばめに会うために。

つばめに、隣にいてもらうために。

そうだ、俺の作戦は完璧だった。

完璧だった……はずなのに……


俺は見つけることが出来なかった。フィオーリも、その呼びだすための方法も。

ならば他の者に頼めばいい。

フィオーリを呼び出してくれさえすれば、こっちのものなのだ。

そうしてなるべくして、俺は生徒会長の座につき、強制恋愛法を発布した。


そして、こう計画した。

フィオーリが自分を選ばなかったのなら、選ばなかったことを後悔させてやろうと。

選んだものを利用して、俺の願いをかなえさせようと。


「はぁ!? 強制恋愛法!? あんた勝手に何やってんの! 私がいないところで! 雲雀は!? 雲雀の相手はどうなってるのよ!」


一人の女のためならこの身を捧げてもいい、そんな覚悟さえもしている鷲宮智恵。


「お前さぁ……俺がいねぇからって好き勝手何でもやりすぎだろ……まあ退学のとこを停学ですましてくれた借りがあんのは事実だし……今回は見送ってやる」


何かを壊すのではなく、何かを守るためにしか喧嘩を一切しなかった小谷真純。


「初めまして、ご主人様。なんなりと、ご命令ください」


そしてもう一人の、速水つばめー

フィオーリの力を見るために、あえて思考を読まれない道具の開発をした。

随分遠回りをしてしまったが、ようやく、ようやくフィオーリを見つけることも、力を見ることも出来た。

あんな形でつばめに会えるとは、思っていなかったが……


「……しぇんぱい……ぞんなごとがあったんでずね……」


大体話し終わった、と思った時だっただろうか。

気が付くと、目の前には彼―赤羽満が泣いていた。

それはもう見るからに、あふれる鼻水と涙を隠すことなく……


「えっと……どうしてお前は泣いているのだ?」


「だっでぇ、悲しいじゃないでずがあ! 大切に思っでいる人が、自分より先に逝っちゃうなんでぇ!」


『満~男の涙は見苦しいぞ~』


「ぞんなごといわれでもぉぉぉ!」


フィオーリに選ばれた青年、赤羽満。

調べれば調べるほど、彼が選ばれた理由が少しずつ分かってきた。

疑うことを知らない純粋さ、そして自分ではなく人のために動けるまっすぐさ。

俺のような不純な願いじゃ、どうりで引き寄せられないわけだな。


『まあ、あんたがその女を大切に思っていたことは分かった。でもさ、その願いが理由でフィオーリに導かれなかったんじゃないよ』


「なに? どういうことだ?」


『お前の幸せは気づいていないだけで、すぐそばにあるってこと』


フィオーリの青年が、優し気な声で言う。

すると途端、バタバタと足音が、中まで聞こえてくる。

勢いよくドアが開くと、そこにいたのはー


「ちょっとリアム! 提出物、またサボったでしょ!? 直接言えないからって私に先生が怒って……って、赤羽満!!」


「うぇ!? わ、鷲宮先輩!!!?」


そこに現れたのは生徒会メンバーが一人、鷲宮智恵だった。

相変わらずの勢いで登場したかと思うと、彼女は倒れてるつばめを見つけるが否や、また声を荒らげる。


「ちょっ、つばめ!? なんで倒れて……まさかあんた、雲雀だけじゃなくつばめにも何かしたんじゃないでしょうね!?」


「えぇっ、僕は何もしてないですぅ~!」


「ギャーギャーぴーぴーうるっせえなぁ。入口でたまってんじゃねえよ、ったく」


鷲宮の乱入に紛れて、今度は真純まで入ってくる。

怒りをあらわにする彼女とは逆に彼は落ち着いていて、倒れているつばめではなくまっすぐ俺の方に向かい……


「……だっせ……なんつー顔してんだよ、それが人の上に立つ顔か? ったく………おそすぎんだよ、色々と」


幸せは気づいていないだけで、もうすぐそばにある。

そうか、そうだったのか……

フィオーリが言っていたことが、ようやくわかった気がした。

何時いかなる時でも、俺様のそばにいると言っていたつばめ。

そして口に出さずとも、陰で支えていた真純や鷲宮……


「……………ありがとう………みんな……」


はらはらと、白い雪が窓の外で舞っている。

あの日、止まった時間が、少しずつ動き出すー


(つづく……)

皆様、大変、大変お待たせしました

休載を経て、連載再開です!

今後は年末年始関係なくやっていきますので

よろしくお願いします!!


そんなこんなで再開した本編ですが

まさかの再開がリアム回という…

しかも長……笑

サブキャラでもあり、ラスボスである彼の話は

こんなに長く、こんなにしっかりと

考えることになるとは思っても無かったです


でも、彼はこれからです。

個人的にはリアムと真純の距離感がすこです

え、聞いてないって? はい、黙ります……


次回は12月2日更新です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ