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ep.41 信じる者だけが見れる「奇跡」

生徒会長・リアムに対抗するべく、

フィオーリは力を解放した。


そして同時に、フィオーリに隠された過去が

明かされる。


真実を知った満は、それでも願いを叶えたいと

リアムの元へ行くー……

「この俺様に自ら会いに来てくれるとは……嬉しいよ。ここで待っていて正解だった」


相変わらずの気迫に負けないようにと、ごくりと唾を飲み込む。

ミミルの話を聞いた、翌日。


決めたら即行動、という彼の方針のもと、二人が部活というのを利用し、一人でやってきたのは言わずと知れた生徒会室だ。

会長ならここにいるだろうという当てずっぽうな考えで向かったけど、そこにはつばめ先輩と彼だけがいて、他の先輩たちの姿はなかった。


「ここに来たということは、その気になった、ということでいいのだろ? 赤羽満」


力を解放したと言っても、ミミルの姿が会長達に見えないのは変わらない。

だから、僕が何とかしなきゃ。会長のお願いを聞くためにも。


「あの、会長はフィオーリの力に頼ってでも、お願いしたいことがあるんですよね?」


「……そうだが?」


「よければ、会長が叶えたいお願い、聞かせて貰えませんか? あれから色々考えたんですけど、やっぱり僕、会長の力になりたいんです。僕のお願いなら、ミミ……フィオーリがきいてくれるそうなので」


「……やはりデータ通りの人材だな。話が早くて助かる」


彼はふうっと一息つくと、両腕を机につく。

その顔つきはさっきと違い、どこか思いつめたようなーそんな風に見えた。


「そこにいる速水つばめのことは、もう知っているか?」


「あ、はい。あの……何度かお会いしたので……」


「信じられないとは思うが、彼女は人間ではない。プロの技術者によってつくられた、人間型アンドロイドだ」


ええ??! アンドロイドぉ!?

そう言われて、彼女の方を振り向いてしまう。

驚きの視線を向けているのにも関わらず、彼女はぺこりと会釈する。

こんなに間近で見ても、僕達と変わらないように見えるけど……


「よくできているだろう? 世界的に有名なロボット開発会社が、あらゆる技術を駆使して制作した代物だ」


「す、すごいんですねぇ、最近の技術って……」


「だが、所詮はアンドロイド。会話をかわすことはできても、そこに心はない……俺は彼女に、人間として生きてほしいと思っている。赤羽満よ、どうかつばめに命を吹き込んではくれないか……!」


なんだか大変なことを引き受けてしまった、後々ながらにそう思ってしまう。

確かにミミルは何でもできちゃうし、難しいことでも簡単にやっちゃいそうだけど……

ロボットを人間に、か。そんなこと、出来るのかなぁ。


『悪いけど、できない相談だね』


と、そこに声だけが生徒会室に響く。

まるで放送しているかのようにこだまするその声は、間違いなくミミルのものだった。


「この声………まさか、フィオーリの者か……」


『やぁっとコンタクトを取れたよ。ここまで大変だったんだぞ〜? あんたがありとあらゆる技術でフィオーリに対抗してくるから、力を解放せざるおえなかったしぃ』


相変わらずの口調で、ミミルが淡々と言う。

普通の人なら驚いても当然のことなのに、彼はそれさえも予想してたかのように笑みを浮かべていた。


「それこそが俺の目的も同然……力を解放したのなら当然、俺の願いも叶えられるのだろう?」


『……悪いけど、それは出来ない。かつてこの学校を救えた先代ほど、俺に力はないんだ』


え? と、つい声が漏れる。

それってもしかして、無理ってことなんじゃ……?


「……まさか、力不足を理由に俺を選ばなかったとでも言うのか……? ふざけるなっ! 俺はただ、つばめに生きていて欲しくて……!」


『言われなくても、分かってるよ。俺は先代より名を継いだフィオーリだ、力はなくとも何をすればいいかは簡単に見いだせる……………聖霊よ、ここに眠りし魂を呼び出せ』


姿はないミミルの声がそう響いた時、部屋の窓からどばーっと蝶が飛んできた。

大量の蝶は僕達に構うことなく、つばめ先輩の周りを囲むように舞う。


途端、彼女は電源が切れたようにその場に倒れてしまった。

会長が駆け寄ろうとするのもつかの間、すぐに蝶が青白い光を放ち、だんだんと人の形になっていって……


『リアム様』


まるで映像を映しているように、薄く透けている

人の形から発せられた声、表情は紛れもなくつばめ先輩のものだった。

でも、何かが違う。優しそうな笑みを浮かべている彼女は、僕の知っている先輩ではなくって……


『初めまして、フィオーリの主さん』


「あなたは……つばめ……先輩……?」


「つば……め……本当につばめなのか?」


『まったく、いつまで引きずるおつもりですか? らしくないです。私が知っている貴方は、そんな弱 くはなかったと思ったのですが』


その姿はまるで幽霊のようで、今にも消えてしまいそうで。

それなのに彼女の手は優しくすっと、会長に差し伸べられていた。

そのたびに蝶が動いたり舞ったり……二つの動きがシンクロしているようにも見えて……


『大丈夫です。私がいなくても、あなたはプラータの名を継ぐに相応しくなれます』


「……つばめ……俺は………お前に……隣にいてほしくて……」


『あなたは、一人じゃありません。私はずっと、あなたを見守っています。何時いかなる時でも、私はリアム様のおそばに……』


その言葉を最後に、彼女の姿が眩い光を放つ。

その光は、部屋全体を包み込んでー……


『……ありがとう、フィオーリの名を継ぐもの……そして……心優しき主さん……』


気が付くと、たくさんいた蝶は一匹残らず消えていた。

その場にいたのは眠るように目を瞑っている、アンドロイドのつばめ先輩の姿だけでー


「………今の人、って……」


『彼女が、本当の速水つばめ。数年前、事故で故人となっている』

「えっ!? そうなの!?」


『………あんたも、色々大変だったね』


ミミルの声が、いつにも増して優しい気がするのは会長の事情を知ったからなのだろうか。

彼の変化に気づいているのかいないのか、会長は膝を落としそっとつばめ先輩の頬を触れた。

今にでも涙が零れてもおかしくないその顔は、見るからに辛くて、苦しくてー……


「………教えてくれませんか、リアム先輩。何があったのか………」


「赤羽満………」


「話せば楽になることもあります。つばめ先輩も、あなたにそんな顔をしてほしくはないはずですよ」


優しく寄り添うように、ね? と声をかける。

今の会長には、支えになってくれる人が必要だ。

つばめ先輩がいない今、僕がするしかない。

こんな僕に、何をどうできるかは分からないけど。

困ってる人を、見過ごすなんてできないから。


「……… フィオーリは信じる者だけが見れる奇跡……そう、語り継がれていた……俺が見たのは奇跡でも、なんでもない……あれは正しく本物のつばめだった……」


会長は一人でつぶやくように、彼女の頬を撫でる。

しばらくすると、彼は僕の目を見てー


「……つばめに会わせてくれた礼だ。こんな昔話を聞いてくれると言うのなら、お願いしたい。あの時から俺の時間は……止まったままなのだからな……」


そうして、会長は話してくれた。

この強制恋愛法を作った、きっかけのことをー…


(つづく・・・)

今回はこれでもか、というほどの

ファンタジー回ですね。

後にも先にもこれっきりな気がします…

ちなみに、蝶はフィオーリの象徴なんです。

初登場以来かもしれない登場なので、

もう忘れられてるかもしれませんが……


本来は、この話で完結させるつもりでした。

ですが全部語るにはあまりにも不十分で……

なので次回は、生徒会側のお話です。

が、実は更新分が追いついておらず、

次がいつになるかわかりません……


次回の更新日については

Twitterにてお知らせ致します。

それまで、待っていてくれると嬉しいです

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