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ep.40 Ⅳ亜ゎSe 乎 8⌒ぶモ之

生徒会長・リアム・アルジェント・プラータ


彼の目的は、

かつてこの高校を救ったといわれている

フィオーリを呼び出すことだった。


彼の執念と思いを知った満は

彼に問う。

何故、自分が選ばれたのかー


不安と迷いが交錯する中、

フィオーリは時間を貰うと告げ……


「じゃあ満、行ってくる。遅くなる時は、先に夜ご飯を食べていてくれ」


「うん、わかった。二人とも、部活頑張ってね!」


「何をどう頑張れっていうんだか。一人だからってガンガン音楽流さないでよ、隣の部屋に迷惑だから」


「そ、そんなことしないよぉ」


放課後、虹己君と恭弥君と分かれ、一人学校の中を歩く。

うすら寒い中、はぁっとため息をつく。


会長と話した日から、3日後。

あの後ミミルから一旦寮に戻れと言われた僕は、とりあえず職員室に用を済ませに行くと先生に出す提出物は遅すぎと呆れられてしまった。

時間が時間で先輩たちの元に行けずじまいに終わったせいなのか、虹己君からは連絡くらい入れろと怒られまくるし……

なんか、色々大変だったなぁ。


遅くなったのには訳がある、二人には生徒会室で起こった一連のことを話そうとも思った。

二人はフィオーリを知る、唯一無二の存在だから。


でも、やめた。

フィオーリに選ばれたのは、僕―赤羽満だけ。つまり、僕の問題だと思ったから。

二人を巻き込んじゃいけない。なにかされる前に、答えを出さないといけないんだけど……


叶えるべきか、そうじゃないか。

そればかり考えているせいか、何にも手が付かない。

ミミルはミミルで、時間をくれの一言だけで何も音沙汰ないし……

そんなことを考えながら、部屋の電気をつけようとスイッチに手をかける。

途端、室内全体に青白い光が一つ、二つと目の前を舞った。

なんだろうとそうっと入ると、その中心にはミミルがいた。


中心となっている大きな光に両手を添えて、何かぶつぶつ話しているようにも見える。

何とも神秘的で、不思議な光景だろう……


「……何してるの? ミミル……?」


恐る恐る声をかけると、光が次々と中心に集まりはじけるように消える。

ゆっくりと目を開けた彼の目はなぜか赤く染まっていて……


「………やっと来たね、満」


にやりと笑みを浮かべると、パチンと指を鳴らす。

同時に舞っていた光が消え、部屋の明かりが灯された。

やっと僕の顔を見てくれた時の彼の目は、元の瑠璃色に戻っていた。


「分かったよ、満。あいつが、あそこまでフィオーリに詳しい理由」


「あいつって会長のこと?? ミミル、生徒会の人と相性悪かったんじゃ……」


「前に時間を貰うっていったろ? 奴に対抗できるよう、力を蓄えていたのさ」


そっか、知りたいと言った僕に教えるために裏で動いてくれていたんだ。

そう思うと嬉しい反面、知ってしまっていいのか怖い部分もある。

やっぱりあの二人も一緒に聞いてほしかった、なんて今更不安になってしまって……


「まずひとつ確かなことがある。奴はこの学校が荒地だった頃、創設に関わっていた血縁者であり……フィオーリが選んだ、最初の人間の子孫だ」


「えぇ!? そうなの!? じゃあ、あのお話は……」


「実話だよ。おそらく救ってくれた救世主の話を、後世に伝えるために物語として残したんじゃない?」


やっぱり、そうだったんだ。

あまりにも物語というにはリアルすぎたから、そうなんじゃないかって思っていたけど……

叶えてもらったことがあるからこそ、あんなに詳しかったんだ……

あれ、ってことは……


「じゃあミミル、会長の祖先と会ったことある、ってこと?」


「悪いけど、それは違う。俺はフィオーリの名を継いだ後継者みたいなもの。先代の記憶、データ、力を使って奴のことを調べてみたらビンゴだったってわけ」


あ、フィオーリって何人もいるんだ……


「…かつてこの高校を救った救世主の名はたちまち広まり、その力を求めた人間が幾度となくフィオーリの元を訪れた。何をするにも、何かに困った時も、すべてフィオーリ頼り……もちろんいいように使う奴もいた、逆にそれを悪いように使う奴もいる……いつしかそこは、フィオーリが存在して当たり前の世界になってしまった」


ああ、なんだか昔の童話のようだ。

花咲かじいさんや、おむすびころりんと言ったお話にもいい事があると知った悪いおじいさんたちが揃って痛い目にあった。

それはきっと、今もおなじ。


なんでも願いが叶うと聞いたら、それを泥棒や事件などに繋げて考える人もいると思う。

実際、ニュースでそういう話題が尽きないのも事実だ。

そう思うと、そんな人達に使わされたフィオーリの人たちが可哀想で……


「存在価値を見失った先代のフィオーリは、自分達の存在を未来永劫封印することにした。人間の記憶を操り、自らを伝説とし、噂として曖昧に残す。この本に記すことで、悪用されないようするために」


「じゃあ……僕がフィオーリに選ばれたのは……」


「お前の澄み切った心、そして純粋な思いがこの本へと導いたのさ。まさか、退学したくないから彼女くださぁいっていうあ〜んなしょぼいものって言うのは予想出来なかったけど」


しょ、しょぼいって……そこまで言わなくても……


「その者が願いを叶えるに値するかどうか見極め、導かれた者の前に現れる。それがフィオーリ、納得していただけましたか? 主さん」


つまり会長より僕の方が純粋な気持ちで探してた、ってことになるのかな??

それはそれで何だか嬉しい気もするけど、子供っぽいって言われてるような感じもして複雑だけど……


「さて、ここからが本題だよ満。奴は選ばれなかった。フィオーリを呼ぶに値しないと判断されたような男、何を願うか分かったもんじゃない……そんな奴の頼みを、叶えたいと思う?」


いくら純粋だからという理由で、選ばれた僕。それでも僕なんかより悩んでる人は、たくさんいる。

選ばれなかったからと言って、みんな悪い人だとは思えない。

あの会長がいい人だって言いきれる自信はない、けど……


「僕は、会長のお願い事を聞きたい。叶うなら、叶えて欲しい。ミミルに、フィオーリとして」


ここまでして、叶えて欲しいにはきっとわけがある。

仮に悪いお願い事だとしても、きっと話せば考えが変わるかもしれない。

選ばれたのは僕、だからこそできることをしよう。

困っている人達を、助けられるように。


「仰せのままに、我が主よ。お前なら、そう言うと思ってたよ」


わざとらしくお辞儀をしながらも、にやりとほくそ笑む。

いつものミミルの顔だ、そんなことを考えながら僕は決意するように拳を固めてみせた。


(つづく・・・)

今回のサブタイトル、気づきましたか?

実は副題でもある、しあわせをはこぶもの

とかいてあるんですよ。

決して文字化けなどではありませんので、何卒…


40話目にしてやっと、やっとフィオーリの秘密を

明かすことが出来ました。

実を言うと、ミミルの名は、私が初めて創作した

キャラクターの名前なんです。

初めて、ということもあってか

すごくすごく、大切な名前です。


え? なぜこのタイミングなのか、って?

それはぁ〜……ここで言わないと忘れそうなので……


次回は8日更新。

最終決戦、開幕!?

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