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ep.39 狙われたフィオーリ

時は20XX年。

満、虹己、恭弥の身に起きた事件は無事解決し、

世間に平和が訪れた。


が、それは突如となく崩される。


職員室に向かっていた赤羽満が連れられたのは、

四葉高校生徒会室。

そこには3人の従者を引き連れた生徒会長、

リアム・アルジェント・プラータが立ちすくんでいた。


彼は言った。

「この俺にフィオーリを渡せ」と。


混乱と不安が招く中、満がくだす決断とはー……

どのくらい、時間がたっただろう。

凍り付いたような空気、まっすぐ僕を見つめている表情に僕はどうしようもなくなっていた。


縛られている手足の痛みすら感じられない。

それぐらい、不安と焦りで胸が押しつぶされそうだ。

ただただ会長の眼圧と迫力に、怯えることしかできなくてー……


「そう身構えなくていい。俺は純粋に、フィオーリの力を借りたいだけだ」


「力を………」


「かつて俺は、図書室に訪れたことがある。話が本当なら、存在するはずだと見込んだが、結局フィオーリを見つけることは出来なかった……そこで、方法を変えたんだ。恋愛強制法を発布し、根も葉もない噂を立てれば、必ず図書室に人がやってくると……」


ま、まさか……強制恋愛法がフィオーリを呼び出すためのものだったなんて!

知らなかった。

そんなことも知らずに、僕はその噂を信じ、フィオーリであるミミルに出会うことが出来たけれどもー……


「思った通りだったよ。君に辿り着くまで随分と時間がかかったが……」


「あ、あのぉ……僕、フィオーリを渡せと言われても……何をどうすればいいかわからないんですがぁ……」


「そうか、なら言い方を変えよう。俺の願いを叶えてくれないか? 赤羽満」


「ぼ、僕が? ですか?」


「選ばれたのはお前だ。貴様がフィオーリに言えば、俺の願いも叶うことにつながるだろう?」


た、確かにそうかもしれないけど……

これではい、わかりましたと言っていいものだろうか。

前の僕なら簡単に言ってしまっているかもしれない。現に、困っている人の力になりたいのは今でも変わらない。


それでも躊躇してしまうのは、会長のやり方があまり気にいってないからなのだろうか。

そもそもこの人が、どうしてフィオーリに詳しいのか、根本的なことが見えて来ない気がする。

こんなに詳しいのなら、僕ではなく彼が選ばれてもおかしくはないはずなのにー……


「すぐに答えを出せ、とは言わない。考えてもらえないか? 報酬はそれ相応のことをしよう。いい返事を期待しているぞ、赤羽」


そういうと会長はにやりと笑みを浮かべながら、生徒会室を去ってしまう。

後の三人を引き連れて。

凍っていた空気がやっと解けて、一気に緊張がほぐれてー


「た、助かったぁ」


と安堵の息を漏らした。


「縛られたままで、よくそんな流暢なことを言えるね」


声が、聞こえる。

僕の隣には、彼―ミミルが立ち竦んでいた。


ぱちんと指を鳴らすと同時に、手足を縛っていたロープが切れる。

やっと痛みを感じた手首の痕をさすりながら、僕はミミルに安堵の言葉をかけた。


「あ、ありがとう、ミミル。ずっと見ててくれたの?」


「まあ、いざと言う時はお前を操って煮るなり焼くなりしようと思って」


「よ、よかった……そんなことしてたら今頃ただでは帰れなかったよ……」


「随分と知られているようだね、フィオーリのこと」


いつものように見えて、彼の目はまっすぐ前を見つめていた。

彼の視線にはさっきまで会長が座っていた椅子があって、その横顔はいつにも増して険しかった。


「ねえ……ミミル……あの会長、みんなが知らないことまで知ってるよ? どうして、会長の願い事は叶えられないの?」


「言ったろ、そういう決まりだって。あんたが叶えろっていうんなら別だけど……少なくとも俺は、あんな奴の願いなんて聞かなくていいと思うよ」


相変わらず厳しいなぁ、そう思ってしまう。

それでも僕は、だんだん申し訳なくなってしまっていた。

もし、会長のお願いが生死に関わるくらい重大なことだったら?

僕みたいなちっぽけじゃない、ちゃんとしたお願い事だったら?


「………ミミル……フィオーリは………どうして彼じゃなく僕を選んだの……?」


つい、言ってしまった。

心のどこかで、ずっと思っていたことを。

虹己君や恭弥君のお手伝いや、先輩達の悩みや葛藤に気づいた時、何度も思った。


どうして彼ではなく、こんな僕が選ばれたのか。

だって僕のお願いは、退学を免れるために彼女を作りたいという言ってしまえば邪すぎるものだ。

実際、彼女が出来るまでに時間がかかったのは虹己君の方だし、雲雀先輩なんて僕とは比べ物にならないくらい大きなプレッシャーと戦っていた。

それなのにー……


「……………教えてやろうか、フィオーリが何故、伝説と呼ばれるようになったのか。何故、奴が選ばれなかったのか」


えっと声が漏れる。

ミミルは相変わらず、まっすぐ真剣な目を僕に向けていてー……


「少し、時間をもらう。お前は一旦、寮に戻れ」


そう言うとミミルは、その言葉を最後に消えてしまう。

誰もいなくなってしまった生徒会室の中、僕は一人、おもむろにその場をあとにすることしか出来なかった。


(つづく・・・)

余談、ですが

リアムという名前は「強い意志」

という意味があるそうです。

意図せずつけた名前ですが、その意味を知り

ああ、彼っぽいなぁと思いました。


名前にはとことんこだわる性分なので

そこまで考えてるのすごい!!

と言われるのが地味に私の夢です。

今回のは偶然の産物なんですが……


次週は個人的都合で四日のみに更新します

ついに知らされる、フィオーリの秘密とはー

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