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ep.37 此二人相思相愛、故天下無敵

春夜が浮気している。

疑いが晴れぬ中、恭弥は一人、

春夜との出会いを思い出していた。


そんな中、春夜から

屋上に来てと言う連絡が入り…

☆恭弥Side☆


オレンジ色に染まる夕日が、きれいに見える。

屋上にある手すりのところに、春夜はいた。

風でなびく髪と、優し気な横顔がいつにもましてきれいに見える。


「春夜」


久しぶりに呼ぶ名前に、彼女はすぐに振り返る。

弱気な俺に対し、春夜はいつもと同じ様子で話し出した。


「お~~きょうちゃん。久しぶり~~ごめんね~~全然話できなくて」


「構わない。それで、話とはなんだ?」


「ふっふっふ〜これを聞いたら、きょうちゃん腰を抜かしちゃうと思うよ〜? 心の準備はいいかね〜〜?」


それは振られる覚悟をしろ、ということなのだろうか。

大丈夫。何が来ても、俺は彼女の意思を尊重する。


きっと俺に、何かが足りなかったんだ。

自分ではできていると思っていても、春夜には何か物足りなく思ったり、不快に思うこともあったのかもしれない。

春夜と別れる、か。

となると、テストを待たずして退学になってしまいそうだが……


「きょうちゃん! 三年目おめでと~~~~~~」


パンッとクラッカーが鳴らされる。

予想外すぎて俺は、事態を飲み込むのについていけなかった。

俺の反応に気付いたのか、春夜は意地悪そうな笑みを浮かべた。


「あれ? もしかして忘れてた? 今月で春夜ちゃんとのお付き合いが三年目になったんだよ?」


頭の中が、上手く整理できない。

つまり、どういうことだ? 今、別れを切り出されたのでは無いのか?

事態を読み込むのに必死な俺は訳が分からず、つい


「……別れ話……ではないのか?」


と、彼女の笑みに水を刺すような言葉をかけてしまった。


「およよ? なんの話? 春夜、そんなつもりないよ〜?」


「だ、だが知らない男の人と会っているのを見たと……」


「ありゃ、みられちゃってた? あれは色んな人に相談に乗ってもらってたんだよ~これをプレゼントするためにね〜」


そういうと彼女は後ろから、あるものをジャーンと取り出す。

それは弓道の矢をいれる、矢筒だった。

金色の文字で、俺の名前も入っていて……


「大好きな大好きなきょうちゃんへ。いつも春夜と一緒にいてくれて、ありがとう」


そんな考え込む必要はない。

ミミルがそう言っていた理由が、わかった気がする。

きっと春夜は俺を驚かすために、地道に準備をしていたのだろう。

こんなサプライズを計画していたとは……


「礼なんて、春夜らしくないな……疑ってすまなかった」


「もぉ、きょうちゃんってばらしくないなぁ。そんなに春夜ちゃんのこと好きなのぉ?」


「……そうなのかもしれないな」


もし春夜が、いなくなってしまったら。

今までそんなこと、考えたこともなかった。

他の人と会っているのをみただけで、不安や心配で何も手がつかなくなるとは思わなかった。

自分に、こんな感情があるなんてな……


「いやぁ、かっこいいきょうちゃんにこんなに愛されてるなんて春夜は幸せ者だなぁ〜もしかしたら春夜達、結ばれることが運命だったのかもね〜」


「……かも、ではなく運命の相手だったんじゃないか? 俺にとっても、春夜にとっても」


「おやおや? きょうちゃんにしては、随分ロマンチックなことを言うんだね?」


「少し変わった占い師に、そういわれてな」


二人には物凄くうるさく言っていたのに、俺に対しては何も文句ないとばかりに言わなかった彼。

何故なのか一度だけ、聞いたことがある。


フィオーリが導き、二人が出会った運命の相手。

それが俺にとって誰なのか、それを知った時どうしようもなく嬉しくてー


「春夜、俺はお前が好きだ。これからもずっと……俺の恋人でいてくれるか?」


「当たり前だよ〜。春夜はきょうちゃんのこと、大大大だぁいすきなんだから」


細い彼女の体を、自分の方へ引き寄せる。

吸い込まれるように重なる唇は、ほんのりと甘い香りがしたー



∋∋

「リアム様、これが集めたデータになります」


カーテンが閉め切られた、薄暗い教室。

その中心に、彼はいた。

女性から何枚もの紙を受け取り一瞥すると、彼はくすりと笑みを浮かべる。


「……そうか……やはり、そういうことか。これでようやく尻尾を掴むことが出来た……礼を言うぞ、お前ら」


「礼を言われる筋合いないわ。私はただ、雲雀をあいつから離したかっただけ」


「珍しくこいつと同意見だな。俺は俺のやりたいようにやっただけだ」


青年を囲むように、二人の男女が口を開く。

その言葉をききながら青年は、やれやれと肩をすくめてみせた。


「二人は冷たいなあ。少しは俺への忠誠心を持ってほしいものだ。なあ、つばめ?」


また一人、隣にいる女性に問いかける。

その彼女は何もいわず、こくりとうなずいただけだった。


「さて、舞台は整えられた」


勢いよく、紙をその場でばらまく。

一枚、また一枚と紙が、彼の宙を舞う。


「もう少しだ……もう少しで俺様の思い通りとなる。待っていろよ、フィオーリ………」


くつくつ笑う彼の腕には、生徒会長とかかれた腕章がつけられていたー


(つづく・・・)

はい、というわけで恭弥編はおしまいです。

まあね、おそらく、

誰もがそんなことだろうと思った、

ってオチなんでしょうけどね。

そんなオチも恭弥にとっては大事件ってことです。

私は悪くないですよ? 

春夜のことになるとどうしようもなく

ポンコツになる彼が悪いんです


あとあと気付いたのですが、恭弥編のタイトル

ぜーーんぶ点(、)がついてるんですよ

偶然の産物って怖いです


次回は26日更新。

ついに物語が核心へと進みます。

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