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ep.32 Step to the future

満、虹己、恭弥は春夜から

結愛がいとこである真純だけは

触れられることを知る。


だが彼は、結愛の男性恐怖症を引き起こす

きっかけを起こした人物だった。


それを知った満は運悪く、真純と対面!

しかし彼はどうすることもなく、

「結愛を守れ」と伝えて欲しいと頼まれ…


☆虹己Side☆


『多分だけど、小谷先輩っていうほど怖い人じゃないと思う。そうじゃなきゃ、僕つてでわざわざ守れだなんて言わないよ』


それが文化祭が始まる朝、彼がオレにかけた言葉だった。

月日はあっという間に過ぎ、いよいよ今日は文化祭当日。

あっという間にその日を迎えることとなった。

他校の生徒や、保護者、そして子供達……どこもかしこも色々な人で賑わっている。


「ほ、本当にごめんなさい。私なんかと回ることになってしまって……」


そんな人混みの中、オレ―相良虹己は先輩である鳳結愛さんと二人きりである。

なぜこうなったのか、説明するのもめんどくさい。

それもこれも、文化祭は二人でまわった方がいいとあの二人に言われたからだ。


満君も恭弥君も、変なところに気を使う。

特に満君は、彼女のいとこだという小谷先輩にも会って話したんだとか。

初めて聞いた時は、何やってるのって言わずにはいられなかったけど。


「別に……そのメガネ、ちゃんと稼働? してます?」


「は、はい……今のところ………今朝、赤羽君が、調子を見に、来てくれたので……」


「……そーいやそんなことしてたっけ。心配なら満君もいればいいものを……そこまで2人にさせてぇのかねぇ、あのインチキ野郎は……」


「……? インチキ、やろう?」


「ああ、こっちの話っす」


男性恐怖症かつ人見知りが激しい彼女が普通に接することができるのは、以前インチキ野郎ーもといミミルがオレに貸してくれた眼鏡のおかげだろう。

なんでも、かけると男子が女子に見えるとか何とかで。

二人で回らせたい、ということであればメガネは必須。それだけじゃなく、もう一つ、奴はオレにあるものをくれた。


「俺は決まりで満から離れらんないけど、手助けくらいなら出来る。こいつが何かあった時に、頼りになってくれるよ」


それが、この指にぴったりはまった指輪だった。

なんでとか、からかってんのかと文句を言ったが、


「人間は何かときれいなものが好きでしょ? だから指輪」


という取ってつけたような理由でごまかされた。

本当、ミミルって意味わかんない。好きでこんなこと、やってるわけじゃないっていうのに。


「あの先輩、前から思ってたんすけど、私なんかっていうのやめません? 誰も嫌なんて一言も言ってないっすよね?」


「そ、そうですよね……ごめんなさい」


「だから謝ってほしいんじゃなくて……あーもー」


相手が彼女だからか、何なのか。どうもうまくいかない気がする。

こんなに自分の気持ちが伝わらないことにもどかしさを感じるのは、何年ぶりだろう。

素直に言葉を届けることが、こんなにも難しいことだったなんて……


「とりあえず、どこか回りましょーよ。行きたいとことか、ないんすか?」


「あ、あの、私、相良君のクラス、見に行ってみたいです」


「えっ、オレの? いいけど……オレんクラス、子供向けっすよ?」


「相良君が作ったパペット人形が見たくって」


つくづく変わった人だ、と思う。

オレ達のクラスは全員で案を出すに出した結果、子供が遊びたがるような縁日をテーマにというよくわからないものに落ち着いた。

それも、最終的に子供受けのものがいいと言い出した、秋山先生の策に乗っかったからである。


お祭りにあるような射的や輪投げ……そしてパペット人形劇など、色々な係りに分担してそれぞれ作成したりして。

ちなみにオレは手芸部だから、という理由でパペット人形の作成を頼まれたんだが……そのことを、部活で少し話したせいだろう。

カノカレになったからか部室にいると、たま~~に少しず〜〜つ、彼女からオレに話しかけてくれるようになった。

とはいえ、眼鏡をかけていればの話だけど。


鷹匠先輩の話が本当なら、この人は不良達に絡まれたことで男性を怖いものだと認識してしまっている。

それをすぐに克服するのは難しいだろうし、これ以上関係が進展する希望ははっきり言ってない。

別にオレ個人的にはどうでもいいけど、彼女の将来的にそれじゃまずいもんなあ。


「お、結構にぎわってる。先輩、ここがオレのクラスで……」


「虹己くぅぅぅぅぅん!」


ドアを開けるが否や、飛び込んできた人影にあっという間に押し倒される。

こいつが誰なのか、声を聞けば確認しなくたって分かる。

今にも泣きだしそうな、弱々しいこの声は……


「ちょっ、満君! なんだよ、急に!」


「聞いてよぉ~~大変なんだよぉ」


赤羽満。オレの友達一号。

ただのバカのくせに言ってくる言葉はいっちょまえで、最近じゃ彼女もできたらしく前よりは男らしく見えてきた。

まあそれでも満君は満君のようで、相変わらずオレに泣きついて来るけど。


「で、何? ガキみたいに半べそかいて」


「一言多いよ! それが……子供たちがかわいいとかほしいとかで、パペット人形の取り合いが始まっちゃって……気が付いたらこんな姿になっちゃったあ」


何をどうしたらそうなるのか、パペット人形の糸の切れ目から綿がはみ出てきている。

つけたはずの目までとれていて、見るも無残な姿に変わってしまっていた。


「あのさぁ……こうならないようにしろってあれだけ言ったよね? 子供にも勝てないの、君は!」


「うう……ごめんなさい」


「仕方ないだろう、虹己。子供というのは、そういうものだ」


同じように壊れたパペット人形を手に話しかけてきたのは、友達二号の恭弥君だ。

彼の周りにも好かれているのか、子供たちが寄っているのが見える。

その後ろには彼女である鷹匠先輩の姿もあって……


「あーもー……先輩、ちょっと待ってもらってていいっすか? ちゃちゃっと直すから、よく使うものから貸して」


そう言ってオレは自分で持ってきた裁縫道具を取り出し、わざと隅の方まで行き綿がはみ出ているパペット人形を、ちまちまと縫い直す。

先輩も待たせてるし、早く終わらせないと……


「うわぁ、お兄ちゃんすごぉい!」


「お兄ちゃんはお人形さんのお医者さんなのぉ?」


「ねえねえ、そんな隅っこにいかないではなたちにも見して!!」


直し始めた途端、オレに向いたのは幼児たちの視線、視線、視線。

心なしか保護者や、来ていた他の生徒もオレのことを見ている気がする。


そう思うときりがなくって、それがオレには耐えられなくって。

気が付いた時には手の震えが、止まらなかった。

見られている、注目されている。そのことがどんなに苦痛なことか……

目立ちたくない。見られたくない。だから一人隅にいたいのに……


「あの、相良君」


必死に震えを隠していたさなか、鳳先輩がゆっくりとしゃがむ。

覗き込むようにオレを見つめると、優しい声色で


「よかったら、変わりましょうか?」


と言ってくれた。

有無を言う暇もなく、彼女はオレよりも小さい手でパペットを直し始めた。

オレよりも人目が苦手なはずなのに。


分かったとでもいうのだろうか、オレが注目されることが苦手だということを。

それよりなにより、手芸をする彼女の横顔がいつにもましてきれいに見えて……


「おねーさんさぁメガネかけてないほうが美人じゃね?」


そんな時、だった。

子供たちが彼女からメガネを取り上げたのは。


「ほらあ、やっぱり美人さんだぁ!」


「すっげーー! お姉さん、オレのお嫁さんにしてやってもいいぜ!」


「オレもオレも!」


この光景が、彼女にはどう見えているのだろう。

メガネがない状態ではきっと今まで普通だったものが、急に恐怖の光景に変わってー


「いやあああああああああああああああああああ!」


「鳳先輩!! くそっ! 満君、ちょっと直せそうにないから平気なのでその場しのいどいて! 頼んだよ!」


「えっ、こ、虹己君!」


考えることもないまま、オレは無我夢中で彼女の背中を追い続けたー


(つづく……)

今回のメインは虹己、ということもあり

目線も彼からお送りしています。

この作品は実質3人が主役なので、

より彼らに寄り添えるようなものになっております

ということはつまり…? 

ふふふ、お楽しみに。


過去作品を見てて思ったのですが、

私、文化祭編はなにかと力を入れたり、

個人的に推しているキャラが

メインになることが多いです。


キャラ同士で差が出ないよう、

なるべく推しは作らないスタイルを

突き通していたのですが

まあ、できちゃいますよね。自然に。

最近はふつーーにあとがきに公言しちゃうので

他のキャラを好きな方々に申し訳なく思いつつも

この子もいいよ、と魅力を伝えまくる私であります


次回は5日更新!

二人の行方はいかに!

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