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ep.29 To protect your “smile”・・・

彼女を失った満は、ミミルの力を借りなんとか雲雀のもとへ

そこで、彼女が二週間後に定期演劇会を迎えることを知る。


何やら様子がおかしい彼女のことを心配した満は、

あることを決意するー

時が過ぎるのは、残酷にも早い。

あっという間に僕の退学のタイムリミットとなる、九月末になってしまった。

それは同時に、雲雀先輩の大舞台の日も意味する。


定期演劇会、それは三年生のためにやる最後の大舞台。

毎年大きなホールで開催され、大人から子供まで入場自由ならしい。

本当に規模が大きいらしく、強豪校である四葉だからできることだと前先生も教えてくれた。

そんな日まで彼女候補も探さず、ただ雲雀先輩のためにと思ってやってきてしまった僕。

もはや明日になれば、退学まっしぐらの危機的状況だ。


それでもここにいるのは、賭けと言っても過言じゃない。

とはいっても、鷲宮先輩に敵視されている僕が来たら門前払い確実。

そう思いミミルにお願いしたんだけど……


「思ったより様になってるじゃん。どうみても変な人に間違いないよ、満」


「……確かに別人にしてとは言ったけど……こんないかにも不審者って格好にして、なんて言ってないよね? ミミル……」


僕が赤羽満だとばれないようにするために、僕はミミルの助言を借りて別人へと変化していた。

変装でもよかったんだけど、ばれた時に言い逃れが出来ないというミミルらしい理由で断られてしまった。


その結果、分厚いメガネにバンダナ、サスペンダージーンズにボーダーシャツ。

ひげもじゃもじゃな、いかにもオタクです! って人になってしまって……


「虹己君が一緒じゃなくてよかった……こんな姿見られたら、絶対馬鹿にされる……」


「愚痴を言ってる場合じゃない。見ろ、来賓席が埋まってる。あの女が言っていた通り、全員スカウト目的だろうな」


彼が言った目線の先には、大学の先生らしき人やどこぞの芸能事務所の人がそろっている。

あの人達だけじゃない、ここには雲雀先輩を目的に見に来ている人がたくさんいる。

こんな大勢の人が、彼女をみにこんなところまで……


「俺が手に入れた情報だと、あの女も演劇部らしい。この舞台の監督をしているんだと」


「そうなんだ……ねぇミミル、いつもはそうやって何でも教えてくれるのに、鷲宮先輩がこんなことをするって僕に教えてくれなかったのはどうして?」


「……それは……」


なにかを言いかけたその時、ミミルはしっと口をふさぐ。

慌てて僕も前を見ると、同時に幕が上がり演目がスタートした。


演目内容は、『思い出のかけら』。

もともとあったらしい童話を、演劇部なりにアレンジしたと配られた紙に書いてあった。

あまり有名じゃないのか、題名を聞いても浮かんではこなかった。

はず……なのに……なんだろう……この話、どこかで聞いたことあるような……


『分からない……分からないの、自分のことが。ねぇ、教えて! 私は何!? 何のために生まれたの!? 答えてよ、ミミル!!』


その時。僕の中で、何かがはじけた。

聞いたことのある名前、登場人物のセリフ。

そっか……この話は、昔僕が読んだことある……ミミルの名前の原点……

こんなところでまた聞けるなんて、思っていなかった。

だけど、それだけじゃない。妙に覚えてしまうこの違和感……雲雀先輩……?


『分からない、思い出せない……私は、わた、し、は……』


まるで時が止まったかのように、彼女の動きが止まる。

雲雀先輩は口をパクパクさせながら、見られないようにとその場にしゃがみ込んでしまった。

途端、周囲がざわつき始める。

これって、まさか……!?


「やっぱり、こうなったか」


「ミミル! もしかして先輩、緊張してセリフが?!」


「緊張、なんてものですませたらいいもんだよ。主役としてのプライド、失敗してはならない重圧、そして他者からの期待のまなざし……普通の人間が、耐えられるもんじゃない」


「そんな! どうして……!」


その時、やっとわかった。

雲雀先輩がどうしてあの時、困ったような顔をしていたのかが。

彼女はSOSをすでに僕に出していたんだ。

なのに僕は、全然気づいてあげられなくて……


馬鹿だな、僕は。

決めたじゃないか、笑顔にするんだって。

そのために僕は、ここにいるんだから。


「たとえあなたが忘れたままでも、僕が! あなたを導きます!! あなたに、笑ってほしいから!!」


気が付いた時には、その場に立って叫んでいる僕がいた。

みんなの視線が僕を向いている。

それでも僕は舞台から目を、そらさなかった。

しゃがみ込んでいた雲雀先輩は顔を上げ、目から涙をこぼして……


「ああ……ここにいたんだね、私の探していたものは……」


その時の先輩は、笑っていた。

それは僕に対していったのか、演技だったのかはよく分からない。

その後演劇は無事終わり、誰も文句なんてないとばかりに称賛をお互いに言いあっていてー


「赤羽満!!!」


一人、みんなが出終るのを待ち、やっと出れると思ったのもつかの間、怒声がとんだ。

つかつかと詰め寄った彼女―鷲宮先輩は誰もいなくなったホールで、僕の胸ぐらをつかむ。


「あなた、どういうつもり!? 脚本を知ったような口で、あんな大勢の前で雲雀に醜態をさらさせるなんて!」


「ぼ、僕は、満なんかじゃな……」


「黙りなさい! これ以上雲雀にかかわるなって言ったのに!!」


なんだ、この人には全部ばれているんだ。

せっかくこんな格好してまで、来たのになあ。

申請書を出すのも明日までの期限。もう先輩にかかわるのは、今日で最後にしよう。

編入できないか、高校も探し直して……


「まって、ともちゃん!」


聞き慣れた声がする。

そこにはまだ衣装や化粧を落としていない、雲雀先輩がいた。

彼女の姿を見ても怒りを隠せないように舌打ちをし、嫌々ながら離してくれる。


「お願い、ともちゃん。私のためって言って、みっちゃんを傷つけるのはやめて!」


「それは出来ないわ。この子は雲雀の邪魔をしてるのよ。あなたは騙されてるの!」


「違う!! 邪魔をしているんじゃない、私を助けてくれたんだ!!」


雲雀先輩の剣幕に、僕も鷲宮先輩も圧倒される。

それなのに先輩の浮かべる顔は笑顔で、優しい声色で、いつもと変わらない先輩の姿だった。


「新入生歓迎の時、代役を買って出てくれたのは彼だった。夏の大会でダメだった時、私のそばにいてくれたのも彼だった。そして今日……私の声にならない叫びに、気付いてくれたのも彼だった」


「雲雀……何言って……」


「私ね、本当はダメダメなの。みんな天才だっていうけど、言うほどメンタル強くないし緊張だってする。将来がかかってる~なんて言われて、死ぬほど怖くて逃げだしたかった。そんな私を救ってくれたのは、そこにいる赤羽満君、ただ一人なんだよ」


雲雀先輩はそう言って、衣装のポケットに入っていた紙を出す。

それは雲雀先輩と鷲宮先輩の名で書かれた、カップル申請書だった。

彼女はにこりと笑いながら、勢いよくその紙を破って見せてー


「退学なんてさせないよ、みっちゃん。だって私は、あなたの彼氏になるって決めたから」


ひらひら舞う紙切れが、地に落ちてゆく。

その光景を、鷲宮先輩は呆然と見ていた。

同時に雲雀先輩が、走ってと僕の腕をつかむ。

遠くなっていくホールを見ながら、絞り出した声で彼女に話しかけた。


「い、いいんですか? あんなに先輩のこと思ってくれたのに!」


「ともちゃんは分かってくれる。だって、親友だもん! そんなともちゃんより一緒にいたいって人がいるってだけ」


「そ、それって……」


「ふふっ、もちろんみっちゃんにきまってるじゃん!」


すると彼女は急に足を止めると、振り返り際に唇を重ねてくる。

それは人生初めての、キスというものだった。

理解が追いついていない僕に対し、彼女はえへっと舌を出してー


「大好きだよ、みっちゃん。これからもこんな私でよければ、よろしくお願いしますっ」


その笑顔は、今まで見た以上にきれいでまぶしくて暖かくて。

嗚呼、僕はこの笑顔が見たかったんだー

止まっていた時間が、またゆっくりと動き出した瞬間だったー



∋∋

「いやぁよかったですなぁ~途中のあの人は演劇部の人かな~? サプライズで他校から呼んでたのかな~? 今度雲雀先輩に聞いてみよ~っと」


「あれも含めて演技だったのだったのだろうか……あえて客席から演じるとは、なかなか面白いな……」


「いやいや、あの人どう見ても一般人だったでしょ。すっげー変な人だったけど、な~んかどっかで会ったような気がするんだよね~……なんでだろ」


不思議に思いながらも、呆れるようにため息をつく。

定期演劇会後、虹己は友人でもある恭弥とその恋人である春夜と帰っていた。


満は何かやることがある、とかでなぜか三人で来させられていたのだ。

だったら自分は行かない、といったのだが春夜の強制で現在ここにいる。

なぜ二人のデートもどきに自分が付き合わされているのか……虹己のため息は、また深くなるばかりだ。


「しかしいい演技でしたね~春夜ちゃん満足~~ってあれ? あそこに見えるのは結愛ちんじゃぁないですかぁ、おーーい」


聞き慣れた名前に、虹己の顔はしかまる。

少し先の道、そこには自分の相手役でもある結愛がいた。

それだけなら、まだよかったのに。


「来てたんなら言ってよ~人多いから、来ないと思って誘わなかったのに~」


「ご、ごめんね……どうしようか、迷ってたんだけど……真純君が来てくれたから……」


「ますみ~~?? おやおや、誰か思えば~」


「よぉ、久しぶりだな鷹匠。で? お前ら、誰?」


結愛と一緒にいるのは女性、ではなく男性。

嵐の脅威はまだ、始まったばかりー……


(つづく・・・)

強敵、智恵に対するは満君の男気ですね。

退学危機というピンチにもかかわらず、

好きな人をすくおうとする彼の勇気はもはや脱帽ものです。

かっこいいよ、満・・・


あ、そういえば明日九月九日は虹己君の誕生日なんです!

にもかかわらず、ちょっとしか出てきませんが・・・

そのかわりといってはなんですが、次回は虹己君のターン!

13日更新予定ですので、お楽しみに♪

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