ep.26 お待たせいたしました、本作の修羅場でございます♪
夏休み中、大好きなアイドルの
ライブビューイングに参加した満は
偶然、雲雀と再会する。
彼女の演劇に対する思いを受け、
ミミルの策略にまたもはまる中
雲雀から「本当に付き合ってみる?」といわれ・・・!?
まだ蝉の無く声が、どこかで聞こえてくる気がする。
暑すぎた気温はいつからか少し涼しくなってきて、過ごしやすい時期へと移り変わってゆく。
「はぁぁぁ!!?!? 付き合ったあああ!?」
夏休みも終わり、どこか浮ついている同級生の声よりも大きな声がクラス中にこだまする。
あまりの大きさに僕は慌てて、しーーっと唇に人差し指を立てて見せた。
なんやかんやで宿題も無事に終わった僕―赤羽満は、登校日でもある今日、虹己君と恭弥君に現状報告をしていた。
あのライブがあったのが月末だったこともあり、二人には言う機会がなかなかなかったけど。
報告した途端、虹己君はこの反応……まあ、当然っちゃあ当然なのかな。
「わっけわかんない。告白したと思ったら付き合ったとか……この夏休みで何してんの、君は!」
「そ、そんなに強く言わないでよ~ほとんどミミルのせいなんだから~」
「だがそこまで進展しているのは、いいことじゃないか。せいではなく、ミミルのおかげ、ではないのか?」
恭弥君の的確な言葉に、何も言い返せなくなる。
確かにミミルの力があったからこそ、告白も成り行きだけど付き合うことにもなった。
だからってこんな形でしなくても……
「ミミルって本当強引。最近何かあると、すぐあいつ疑うんですけど」
「虹己君と恭弥君も、宿題はちゃんと終わったの?」
「ああ。いい思い出を作れた」
「……あーぼちぼち?」
一瞬、虹己君の顔が曇ったのはどうしてだろう。
何かあったの? と聞こうとした途端、
「満、話は終わりだ。嵐が来る」
ミミルの声がした。
頭にはてなを浮かべるしかない僕へ、誰かが近づいてくるのをようやく感じ取る。
ぱっと横を見ると、そこにいたのは黒く長い髪をなびかせた、すごくきれいな女子生徒だった。
しっかりと着こなされた制服……リボンの色が違うことから、上級生なんだと理解できた。
凛としたたたずまいとまっすぐ僕を見つめている瞳―僕は声も出せぬまま、彼女の風格に圧倒されていて……
「お取込み中失礼いたします。赤羽満君、ですよね?」
彼女が発した声にようやく我に返り、「はい!」と裏返った声を出す。
その女性はにっこり笑ってみせ、丁寧な態度ながら口を開いて見せた。
「少しお話があるんです。外までよろしいですか?」
僕のあってきた女性の中で、初めて見る顔だ。
なのに彼女は僕の名前を、知ってさえいる。
それが何なのか知りたかった僕は、快く返事をした。
ふわりと笑った女性は、こちらですと先導してくれる。言われるがまま、僕もついていくことにした。
怪訝に顔をしかめる虹己君と、心配そうな恭弥君の視線を感じながらー
ついたのは一階と二階をつなぐ、階段の踊り場。
そこに僕は連れていかれた。
休み時間だというのになぜか人通りがなくて、みんなの話声が遠くに聞こえる気がする。
なんだか急に怖くなってきて……
「ったく、先生達も石頭よね。帰りたいって言ってるのに、全然許可が下りないんだもの。戻ってくるのにこんなに時間がかかるとは思わなかったわ」
「はい??」
「ようやく話せてよかったわ。情報通りの普通の子ね。本当に雲雀の彼氏なの?」
さっきの優しそうな対応はどこへやら、彼女はため息をつきながら階段に腰かけてみせる。
礼儀正しそうに見えたそのなりも見た目だけなのか、腕だけではなく足もくんでいた。
「えっとぉ、その前にどなたなんですか? 前にお会いしてましたっけ?」
「私は鷲宮智恵。雲雀の親友……っていえばわかりやすいのかしら」
ひ、雲雀先輩の親友ってこんなにキレイな人だったんだ!
先輩って全然自分のこと話してくれないから、びっくりしたというかなんというか……
「話は大体雲雀から聞いてるわ。あなた、強制恋愛法で雲雀に頼まれ、お互いが助け合う形で彼氏を承諾したのよね?」
まあ、あながち間違ってはない……はず。
なんだか鷲宮先輩の圧がだんだんひどくなっているように見えて、思うように言葉が返せない……。
うう、僕ってなんて情けない人間なんだろう……
「今まで雲雀の彼氏でいてくれて、ありがとう。もういいから、あなたはあなたの好きな人を探しなさい」
「……へ?」
いきなりこの人は、何を言っているのだろう。
危うく返事しそうになったとはいえ、内容は理解しがたいものだった。
だってそれって、僕に退学しろって言ってるようなもので……
「まったく……物分かりが悪い子ね」
彼女の怒ったような声が、聞こえる。
すくっと立ち上がった先輩は、僕を壁の方へ追いやってしまう。
逃げ場がなくなった僕に追い打ちをかけるように、顔のすぐ横でどんっと手で音を大きく立てた。
「これは命令よ、赤羽満。今すぐに雲雀から離れなさい。ファンクラブがあったのにあなたを野放しにしたのは、仮の契約だったから。みんな同じくらい余裕がなかったから。そこに好意が混じるとなったら、話は別。あなたを自由になんてさせない」
「そ、そんな……僕はただ、雲雀先輩のことが本当に……」
「安心して、雲雀の相手役は私が変わってあげる。今までご苦労様、残り少ない高校生活を存分楽しみなさい」
狂気に満ちたその笑みは最初に見た笑顔とはくらべものにならなくて、恐ろしいほど怖くて。
その日、僕は初めて知った。
彼女と付き合うということが、自分にとってどういう影響をもたらすかを―
(つづく・・・)
告白から付き合う、まで色々ころころ
転がされ続けてた満でしたが
人生、そんなうまくいきません。
ここにきていきなりの新キャラ、智恵ちゃんの登場です!
他の女子三人と同じくらい、どころか負けないくらいの
個性がぶつかりまくりですね。
前回のハッピーからのどん底に突き落とされる主人公・・・
なんて声をかけたらいいのか分かりませんね
ちなみに作者的には主人公こそ
いじめるにふさわしいと思ってます(真顔)
次回は25日更新。
満に退学危機が迫る!!




