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ep.25 ここまで引っ張った秘密はあっけない真実だったりする

満、虹己、恭弥は春夜と結愛とともに

夏祭りに行くことに!


途中で雲雀も参加し、

それぞれ祭りを満喫したが・・・?

外から聞こえる蝉の声と、部屋の中で回っている扇風機の音。

ごくりと唾をのみ、結果を表示というボタンをゆっくりと押す。

そこには「チケットがご用意できました」とあって……


「やったあああああああああああああ! 当たったあああああああああああ!」


歓喜の声を上げながら、ピョンピョン部屋をはねまくる。

それを見ていたのかミミルが、心底迷惑そうに一言。


「うるさいんだけど、何事?」


とつぶやいた。


「ミミル! 当たったんだよ! 当たっちゃったんだよ!」


「だから何に」


「YOU☆のライブビューイングのチケット!!」


僕が画像を見せながら言うと、彼は余計に顔をしかめさせる。

それを見て納得したのか、彼はああと思い出したように口を開く。


「お前のCD棚に何個もあるなあとは思ってたが……今思い出したわ。なあ、アイドルオタク君」


「オタクだなんて……周りの人に比べたら僕なんて全然……」


「じゃあ同じもんが三枚ある理由は?」


「もちろん! 保存、観賞、布教用のため!」


「……その時点でオタクだっつーの」


呆れて言葉も出ないというように、深いため息をつく。

ミミルはこういう態度だけど、僕は自分のしていることに恥じらいなんて何もない。


小さい頃、初めて見た親に連れられた小さなイベント。

その時歌っていたのは、まだテレビにも出たことない無名のアイドルだった。

それでもステージ上で歌って、踊って……輝く笑顔がまぶしくて、たちまちひかれていった。

アイドルは人に夢を与えてくれる。そんなアイドルが僕は大好きなんだ!

ちなみに僕が当たったと喜んでいるのは、YOU☆ っていうソロアーティストで……


「誰も聞いてないアイドルの説明はいいよ。会場はずれたからってビューイング狙うか? 普通」


「ファンはそういうものなんだよ! 今回はドームだからライブビューイング自体も倍率高くって、今日までずっとひやひやしてたんだよ~」


「ふうん……それ、虹己と恭弥も行くのか?」


「誘ってはいるんだけど、二人はこういうのあんまり乗ってくれなくて」


というのも多分、僕が好きすぎて歯止めがきかなくなるせいなんだろうなって自分でもわかっている。

恭弥君はまず音楽をあんまり聞かないらしいし、虹己君は虹己君であんなうるさいところはやだとしか言わない。

人によって好き嫌いはあると思うから僕自身、気にしてはいないんだけど。


「あ~~楽しみだなあ。ニューアルバムの楽曲、披露してくれるかな? 予習しとかないと!」


「やれやれ……のんきなご身分なことで。……いや待てよ。確か……」


何やら急に、あごを手に乗せ考え込んでしまう。

観賞用のCDを手にしながら、僕は「どうしたの?」と聞く。

するとミミルは急ににやりとほくそえみ、


「そのライブとやらをもっと楽しませてやる。期待しておけよ?」


なにかをたくらんでいるような言葉をにじませたのだったー


ビューイングの会場は、最寄りの映画館だった。

僕のように男性もちょこちょこいるが、YOU☆ のファンはどちらかというと女性が多い。


朝から行われている物販も品数が少ないせいなのか、完売しましたとかラスト一個ですという表記が多くみられる。

もちろん僕も朝早く来て物販は手に入ったし、適当に時間をつぶすことでこのライブ開始時間を無事に迎えられる。


えっと~~席は……Gの7番だから……このあたりかな?

自動販売機で買ったジュースを手にしながら、自分の番号がある場所へとゆっくり進んでゆく。

そんな時、だった。


「すみません、隣失礼しますね」


「は~~い。って……あれ? みっちゃん??」


ライブ用に売られているTシャツに、リボンの形をしたヘアピン。

きょとんとしたその瞳と、みっちゃんという呼び名に僕は聞き覚えがあって……


「ひ、ひひひひひ雲雀先輩!?」


なんともあろうことか、隣の席に座っていたのはまさかの雲雀先輩だったのだ!


「すごい偶然! 予定にライブって書いてはあったけど、まさか同じ人のライブなんて! しかも席も隣だし……びっくりしちゃうね!」


「え、ええまあ……お一人ですか?」


「うん。でも今みっちゃんが来てくれたから、全然寂しくない♪」


こんな偶然が、二度も続くことあるのだろうか。

聞いたわけでもないのに同じ人のライブビューイング会場、一緒に買ったわけでもないのに席は隣同士。

まさか、これがミミルの「ライブをもっと楽しませてやる」の一環!? どれだけすごいの、彼って!


「みっちゃんもYOU☆ 好きなんだ?」


「は、はい! アイドル全般大好きです!」


「あははっ、珍しい~男の人ってそういうの興味ないんだと思ってた」


「そんなことは……でも先輩がこういうのに来るなんて、ちょっと意外でした。先輩は演劇系が好きなのかなって」


「よく言われる。実際に好きなのは演劇だけど、YOU☆ は特別なんだ」


雲雀先輩と話している横で、色々な人が次々に入ってくる。

どこかざわついた映画館はしばらくすると暗くなり、会場の様子が映し出されていた。

その場所はなんと、ドーム。

YOU☆の五周年を記念した、初めてのドーム公演だ。


始まるよと笑う先輩の顔は、どこか楽しそうに笑っている。

僕もペンライトを両手に持ちながら、まだかまだかと待ち構える。

そしてー


『さぁ、物語の始まりだ ページを開いて

君と僕のステージの 幕を今開けよう』


スポットライトがステージの中央を照らす。

そこにはきらびやかな衣装を着た、まぎれもないYOU☆ の姿があった。

彼の登場にその会場も、ライブを映している映画館も一気に歓声が上がった。


ああ、ついに……ついに始まるんだ……!

さめやらぬ興奮を僕は終わる寸前までずっと、声に出して叫んでいたのだった。



「すごかったね、今日のライブ! めっちゃカメラ見てくれた!」


同じくらい興奮している雲雀先輩が、楽しそうに語る。

僕も彼女よりも高いテンションでそうですね! と、笑顔で返してみせる。


楽しい時間なんて言うものは、あっという間だ。

始まったばかりの頃が、嘘のように終わりを迎えてしまう。

YOU☆ は終始笑顔で素敵で、初披露の曲を含めたセットリストもすごい充実してて……


「DVD出たら絶対買います……その時は、先輩にもお貸ししますね?」


「やったぁ! みっちゃん太っ腹ぁ♪」


余韻に浸るのはここまでだ。そう、ミミルの声が聞こえた。

彼がどういうたくらみで、彼女と二人きりにしたのかはわからない。

おそらく僕たち二人の関係性を、変えたいとでも思っているのだろう。


かれこれ夏祭りも一緒に回っているとはいえ、あの大会で告白して以来そういう話題を避けてきている。

何か話さないと……そう思っているさなか、先輩がふいに僕に話題を振ってきてくれて……


「みっちゃんってさ、もしかして結構ミーハー? 俳優さんとかは好きじゃないの?」


「え? うーん……基本アイドルが出てるのしかドラマはみませんので、あまり詳しくはないですけど……」


「じゃあTOWAって知ってる? YOU☆ と今度共演するんだけど」


「あ、知ってます!! 知らない人なんていないくらい有名じゃないですか!」


僕が言うと、先輩がやっぱり? というように照れたように笑う。

TOWA。それは、多くの実績を残した有名な俳優さん。

出た映画やドラマはいつも有名になり、彼自身もかなり賞を受賞している。


あまりメディアに出ることがないせいでほとんどが謎に包まれていて、彼について分かっているのは名前だけ。

アイドルを追いかけている影響でそういうニュースに敏感になっているせいか、結構僕も詳しくなっちゃったんだけど……


「私のお兄ちゃんがね、うちの演劇部のOBなの。それでなんとなく始めたんだけど……お兄ちゃんに参考用にって渡されたのがTOWAが出てたドラマでね、すっごい衝撃受けて」


「もしかして、演劇が理由でYOU☆ もファンに?」


「二人の演技って結構話題になること多いでしょ? 私の目標なんだ。いつか二人と同じステージに立てたらいいな~って」


先輩の演劇のルーツは、そこからなんだ……

みんな、何かを始めることにきっかけがある。

僕がアイドルを好きになったのと、同じだ。

それでも自分の夢を持っている先輩は、やっぱり尊敬するなあ。


「……叶うといいですね、先輩の夢」


「みっちゃんはそういうのないの? 目指してるものとか」


「僕ですか? あったら苦労しないというか……なんというか……しいて言えば、雲雀先輩と恋人になることですかね!!」


僕の回答に、ほえ? と先輩が首をかしげる。

ちなみにこれは、僕の意思ではない。

相変わらずと言っていいほど、ミミルの仕業だ。


もう何度も続くと慣れてしまう自分が怖い。

特に耐えられないのが、その魔法が解けた我に返った後で……


「そういうことじゃないですよねえ~僕何言ってるんだろうなあ! あははは、あはははは! す、すみませんでしたぁ!」


恥ずかしくて、穴があったら入りたくて、顔もろくに見れなくて。

ミミルもミミルで後処理なんて知ったこっちゃないようで、助けてもくれなくて。

もうダメだ。これじゃ、完全に嫌われちゃうよぉ……


「……ぷっ……何その面白い夢! みっちゃんってば、どれだけ素直なの! あはははは!」


深々と頭を下げる僕に対し、耳に入ってきたのは腹を抱えて笑っている彼女の声。

目にはうっすら涙が浮かんでいて、延々と笑う彼女の顔はすごくきれいでかわいかった。


「あ~お腹痛い……なんか、ちゃんと好きになってからじゃないとって思ってたけど……今の聞いてちょっと楽になったよ。ねぇ、みっちゃん。そこまでいうなら、本当に付き合ってみる?」


「……え? えええええええええ!?」


その日、新たな物語のページがめくられているのを、僕はまだ知らずにいたー


(つづく・・・)

前々から話していた過去作品とのつながり、

第二弾は・・・そうです。

『羽ばたけ! 夢のステージへ ~Another story~』から

YOU☆が登場しました~~~~!

実は物語も作品と

つながっていたりするんですよ・・・(小声)


それもこれも満にアイドルオタクという

意外性を足したおかげなんですが・・・

彼のことです。きっとYOU☆の他にも、

いろ~んなアイドルが好きなんでしょうね。


ちなみに雲雀が言っている憧れの存在である「TOWA」は

『CLUB♪ きっとそれは、伝説になる』にでてくる

あの人だったりしますよ・・・?

他の作品にも、ぜひ注目してみてくださいね!


次回は21日更新!

付き合うことになった満に、最大のピンチが!

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