ep.20 真っ白な予定をリア充で染めれるのなら
季節は夏。あっという間に夏休みに!
しかし、宿題としてカップル同士
行ったことを紙にかいて提出することになった一行は
連絡先を交換しあい……
じりじり暑い夏を告げる、セミの声が色々なところで聞こえる。
扇風機を自分にあたるように首を動かし、袋に入っていたアイスを口に入れた。
赤羽満、十六歳。普段通り、何事もなく過ごしています。
夏休みになったとはいえ実家暮らしに変わったくらいで、宿題くらいしかすることがない。
虹己君か恭弥君でも誘って遊びに行こうかなあ。う~ん……
「恭弥は部活、虹己は他の男子と予定が入ってる。暇なのはお前くらいだぞ、満」
いきなり隣から声が聞こえて、ぱっと目線を動かす。
いつからいたのか、僕の横にはミミルがいた。
僕の携帯を勝手に手に取り、持ち主がここにいるというのに堂々と目の前でいじっている。
「ミミル~勝手に携帯見ないでよ~」
「お前が遊びに行こうかなあって言ってたから、代わりに予定を見てやったんだろ? 嘘だと思うなら自分で見るか?」
ほいっと渡された携帯の画面には、アプリで作られたカレンダーだった。
これは皆で遊べるようにと、雲雀先輩と春夜先輩が作ってくれたもの。
各々予定を書けるようになっており、今日の日付には確かにミミルが言ったように二人の予定が記されている。
その中に一つ、気になるものが書いてあって……
「雲雀先輩……今日、演劇の大会なんだ?」
「手伝いで行ってたくせに、それも知らなかったのか?」
「総体とはちょっとずれた時期にあるってのは聞いたことあるけど……今日だってことは知らなかったよ……」
雲雀先輩が所属している演劇部は、全国に行く常連校で有名だ。
たった一回だけしか部室に行ったことないけど、棚にはトロフィーだっていっぱいあったし、宣伝しているときに楽しみにしている人はたくさんいた。
中でも彼女の演技は、僕でもわかるくらいすごかったし……
「……見に、行ってみる?」
予想だにしていなかった言葉が聞こえ、思わずえ? と聞き返す。
両手に何もない状態だったものが、一瞬で何かが現れる。
ミミルが手にしていたのは、一枚のチケットだった。
「え、それってまさか……!」
「演劇部地方大会の観覧券」
「観覧券って、いったいどうやって手に入れて……」
「今行けば結果くらいはのぞきに行ける。行って損はないんじゃない?」
そう言いながら、すっとチケットを差し出してくる。
演劇部関東大会と書かれた文字を眺めみながら、僕はしぶしぶそのチケットを受け取ることになったのだった……
開催されている場所である榛葉ホールは、思っていたより広くできていた。
こういうところに縁なんて到底ない僕にとって、何もかもが新鮮で……本当に入っていいのか不安に駆られていた。
『おお、王よ!! お目覚めになられましたか!!』
ステージには華やかな衣装を着た高校生たちが、演技という名の発表を繰り広げている。
他の高校生たちはもちろん、僕のような一般の人も来ているようで意外にも席は埋まっていた。
えーっと……もらった紙によれば、この高校が終われば結果が出るんだったよね……?
ご丁寧に用意されたチケットだなと思ったら、よく見たらすでに始まっていて、あと数校終われば結果が出るという終盤に近い状態になっていた。
ミミルってば、どうせ用意してくれたのなら先輩の演技に間に合う時間に言ってくれればいいのに。
「えー各校の演劇部のみなさん、大変お疲れ様でございます。これより賞の発表をさせていただきます」
最後の学校の演技が終わってつかの間、偉そうな人が中央に立つ。
いよいよだと浮つく生徒達の声が、四方八方から聞こえてくる。
その中でもっともワクワクしていなくて、不安にもなってなさそうな顔をしていて、まだ結果も出ていないのに泣いている高校が一つだけあった。
それがー……
「26番、四葉高等学校。銅賞」
(つづく……)
今作品は寮生活が主なため、
キャラクターの家庭環境を触れたくても
触れられませんでした
が、ちゃんとみんな家族はいます。ご安心を笑
詳しい設定はおのずと物語を通じて
分かっていくと思うので
妄想しながら読んでいただけると嬉しいです
次回は22日更新。
優秀校が、まさかの結果に……!




