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ep.19 この会長、校則だけにとどまらず

追試対策のため、恭弥に教えてもらおうと

頼む満と虹己だったが

そこに春夜と、結愛も加わる。


びくびくしながらでありつつも、結愛と虹己の距離は

すこーーーしずつ縮まっていく。


そして舞台は、夏へ!!


「え~明日から夏休みに入るわけですがあ、皆さん羽を伸ばしすぎず、高校生の自覚を忘れないようにしてほしくてですね~え~つまり私が言いたいのは……」


校長先生の話が、延々と続く。

耳を傾けてはいるものの、どこか飽き飽きしたような生徒たちの顔が垣間見える。

みんながみんな疲れたような顔をしている中、僕も一つあくびをしていた。


長かった一学期も、あっという間に終わり。

明日からついに夏休みが始まる。

夏休みはゴールデンウィークとは違い、寮が解放され、自宅に帰っていいということになっている。


久しぶりに家に帰れるということもそうだけど、去年は受験で遊べなかった恭弥君と虹己君とも遊べるって思うと、ちょっぴり楽しみでもあるんだよね。

ああ~早くおわって、遊ぶ約束したいのになあ。


「最後に、生徒会長からのお話です」


校長先生の話が終わったと思いきや、まさかの言葉にみんな体が固まる。

きちんとした制服の上にはおられた白いケープが、風でなびく。

白銀に輝くその髪色は、いつ見てもきれいでー


「在校生の諸君、明日からは楽しい楽しい夏休みの始まりだな」


四葉高等学校生徒会長、リアム・アルジェント・プラータ。

あまりよくはしらないけど、いいところのお坊ちゃんらしい。

彼こそこの学校の最高権力者でもあり、強制恋愛法を発布した張本人だ。

彼がこうして壇上に上がるのは、あの校則を発表して以来二度目。

つまり、何だか嫌な予感がしてくるわけで……


「カップル申請書を出せた貴様らには、一時の至福と言ってもいいだろう。間に合わなかった者は、現にこの場にはいない」


そ、そういえば何人か退学したって噂が立っていたような……

やっぱり本気なんだな、あの人……


「が、俺様は考えた。申請書を出せば、許されると思っていないか?」


はへ???


「俺様は生徒全員に幸せになってほしいと考えている。仮の幸せで喜んでほしくはない。そこで、こういう宿題を与えようと思う。この夏休み期間、彼氏彼女になったものと何かした記録を二つ出せ! 出せなかったものは退学とする!!」


えええええええええええええええええ!?



何人もの生徒が、体育館を出ることなく困ったように話をしている。

どこの生徒も、同じ話題でもちきりだった。


「最っ悪。あの会長、マジ意味わかんないんだけど」


会って早々、虹己君がかなりご機嫌斜めな様子で言ってくる。

楽しみにしていた僕もいつの間にか不安の方が大きくて、苦笑いを浮かべることしかできなかった。


「こっちは女になってまで申請書出したっつーのに、本物のカレカノになれとか意味わかんない。名前だけの関係でいいじゃん」


「そうだよね……どうしよう、恭弥君……」


「あの会長にも、何か意図があるんだろう。この校則といい、今の宿題のこといい、随分とむちゃくちゃな気もするが」


恭弥君もさすがに理解できない、というようにため息をつく。

申請書を出せば、終わりかと思っていた。

確かに先輩のことを好きになっちゃったとはいえ、夏休みまで遊びに誘うなんて考えもしなかったのに。

仮の幸せで喜んでほしくない、かあ……あれ、でも同じような話をどこかで……


「まさかとは思うけどさあ……あんたのせいじゃないよね? インチキ集団のフィオーリさん」


嫌味たっぷりな皮肉っぽい声で、彼が急に上を仰ぎ見る。

いつから、そこにいたのか。頭上にはミミルがいた。

のんきに腕を組みながら、空で寝転がっている。

彼は虹己君の怒りに気付いているのか、やれやれと肩をすくめながら話しだした。


「困るなあ。何でもかんでも俺のせいにされるのは」


「やるならちゃんとしたカップルを目指そう~って、あんたが言い出したんでしょ?」


「確かに俺はそうだけど、あの会長の思考は俺でも理解できないほど複雑でね。関与したくてもできない存在なんだよ」


ほえ~ミミルでも心が読めない人なんているんだ。

じゃあ今回に関してはミミルは僕達の味方だったりする……のかな?


「まあでも、いい宿題を出してくれたよね。ああでもしないと、お前ら絶対俺の言うこと聞かないだろうし」


うん、やっぱりミミルはミミルだ。


「そうかもしれないけど、僕達一体どうすればいいの? 先輩達にだって、先輩達の都合があるだろうし……」


「文句は彼女らの言い分を聞いてからにするわ」


「え??」


「みっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


生徒達のどよめきに混ざり、高い声で僕を呼ぶ声がする。

振り返ると同時に、僕の視界は誰かに抱きしめられるように急に真っ暗になった。

こ……この柔らかい感触は……もしかして……!


「ど~~しよ~~! カップルっぽいことしないと退学だってぇ! せっかく楽しい夏休みなのにぃぃぃ!」


「ひ、雲雀先輩!!? ああああのっ、前が見えな……」


「せっかく追試も受かったのにぃ! どうしよぉぉぉ!」


声が聞こえていないのか、しばらく柔らかい感触が僕の顔に触れ続ける。

僕はどうすることもできずに、ただただ顔を赤くすることしかできなくて……


「雲雀ぱいせんだいたぁん。そんなに抱き付いたら、満ちん息が出来なくて死んじゃいますよぉ~?」


「あっ、そっか! 私ってばつい……ってはるちゃんに結愛ちゃん! もしかして二人も同じ用で?」


「まあそんなとこ~~」


「お、おおお邪魔します……」


やっと解放されたかと思うと、気が付いた時には彼女だけでなく春夜先輩や鳳先輩まで姿があった。

相変わらず鳳先輩だけは、距離があったけれど。


「話は聞いてたでしょ? どうしよう、みっちゃん。彼氏になってって言ったばっかりに、私なんかと何かした結果を出すことになっちゃうなんて……」


「そんなっ、全然大丈夫ですよ! 僕の方こそ……すみません」


「卒業までのカウントダウン始まっちゃってるんだもん! みっちゃん! 夏休み、私とどこか行こう?!」


がっしりと手をつかまれ、何とも真剣な顔でこちらを見てくる。

あまりにも近い距離の上に触れられた手が、僕の思考回路をいとも簡単に崩していく。

た、確かに退学……は嫌だし……先輩と少しでも一緒の方がいい……のかな?


「ぼ、僕なんかでよければ……よろしくお願いします」


「本当!? やったあ! じゃあじゃあ連絡先ちょーだい! これ、私の!」


先輩がはいっと気前良く見せてくれる。

かわいい人形が付いた携帯にうつったメアドを間違えないように打ちながら、空メールを先輩に送った。

なんだか本当の彼氏彼女になったみたいだなあ。恐れ多いけど。


「というわけで~春夜ちゃんもきょうちゃんとい~っぱい遊びたいから部活以外の予定は空けといてね~~」


「あの宿題が出る以前に、最初からそのつもりだったんだろう?」


「ばれてました~?」


「それで、鳳先輩はどうするんですか?」


恭弥君が優し気な声色で、春夜先輩の後ろにいる鳳先輩に聞く。

彼女は少し震えながら、何かを決心したようにぐっとこぶしを握り締めて見せた。


「わわ私が、退学にならなかったのは、相良君が声をかけてくれたおかげ……です。だから、その、今度は私が助け、たくて……迷惑をかけるかも、しれないですけど、相良君の力になりたい……! ……です」


おどおどしてはいるものの、彼女の目だけは本気で虹己君にぶつかってきているように見えた。

それは彼にも伝わったのだろう。虹己君ははあっとため息をつくと、


「お互い、退学が嫌なのは一緒っすからね。頑張りましょ、てきとーに」


携帯を取り出し、これメアドですとぶっきらぼうに渡す。

直接受け取れない鳳先輩にかわり、春夜先輩がそれを横取りしたかと思うと何かしだして……


「登録かんりょ~。ついでに春夜ちゃんと雲雀ぱいせんのも入れといたよ~?」


「はあ? 何勝手に人のに登録してんすか」


「結愛ちんは男の人ダメでしょ? 春夜ちゃんはついてくるとしてぇ、雲雀ぱいせんまで一緒にくれば満ちん達もついてくる~一石三鳥~」


あ、相変わらず自由な先輩だな……春夜先輩は。

釈然としない様子ではあるものの、虹己君は半ばあきらめたようにまたため息をつく。

恭弥君はすまんというように、彼の肩をたたいていた。

そんな二人と、先輩方を見ながら、僕はこの夏休みがどうなってしまうのか、少し不安を覚えたー


(つづく!!!)

ようやく夏休み編、突入です!

ここにきてやっと生徒会長の全貌が明かされました!

ちゃんとした外国人の名前を付けたのは、彼が初めてです。

ちなみにアルジェントは銀色、という意味で

ちゃあんと、彼にも色が付いていたりするんですよ。

何の話やねん、って感じですが。


次回は13日更新!

彼らの苦しみはまだ始まったばかり!

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