ep.16 FALL in L❤︎VE
演劇部の手伝いをすることになった満は
いよいよ歓迎会当日を迎える。
そんな中、雲雀と掛け合いをする予定だった先輩が
突然出られなくなってしまった!
そこで代役に抜擢されたのは、まさかの満・・・!?
心臓が、バクバクなっている。
無造作に震えてしまう手に、ぎゅっと力を入れてみせた。
いよいよ本番、この幕さえ上がってしまえばもう戻れない。
本番までにもう一回台本もちゃんと読んだし、先輩とも少し練習した。
大丈夫、できる。
他のみんなに、演劇部の素晴らしさを伝えるんだ。頑張らないと。
「しっかし驚くほど似合ってるねえ。衣装係の子も言ってたけど、性転換した方がモテるんじゃないの?」
嫌みったらしい声が、聞こえる。
いつの間にか頭上には、ミミルがふよふよ浮いていた。
彼は僕の衣装をまじまじと見つつ、ふうんと時々声をうならしている。
「……邪魔しないで、ミミル。今から本番なんだから」
「その格好で言われると、説得力のかけらもないな」
「しょうがないよ、そういう役なんだから」
先輩たちが考えた演目は、まさかの男女逆転。
つまり王子役が雲雀先輩で、神木先輩の代役である僕が姫役なのである。
まさか女装を、こんなところでやるとは思ってもみなかった。
なぜか衣装を着たってだけでどの先輩達にもほめられ、かわいいと言われ、本格的に入部してほしいとかわけ分からないこと言ってたけど……
『それではこれより、演劇部の皆さんによる新歓演劇です』
アナウンスが聞こえる。
いよいよ始まってしまうんだ。
緊張で震えが止まらない中、僕はステージへと向かっていく。
彼女のもとへー王子を探していた、姫になり切ってー
「王……! あっ!」
慣れないヒールのせい、だったからかな。
思いっきりドレスの裾に引っかかってしまい、前のめりに倒れてしまう。
ああ、終わったな。これ。
終わりを迎えるように思わず目を閉じるがー
「大丈夫ですか? 愛しのマイプリンセス」
僕の体ごと大掛かりに受け止めてくれたのは、まぎれもなく王子―ではなく雲雀先輩だった。
いつもとは違う彼女の顔が、息がかかるほどに近くにあって……
「まったく。私の姫様は、いつもドジばかりだね」
その笑みが声が優しさがーすべてが僕の心を揺さぶる。
それは、眠っていたものが目を覚ますような感覚―
僕の胸に、雷が落ちたような衝撃……
僕赤羽満は、一瞬にして彼女の姿に惹かれてしまったのですー……
その日―演劇部の新入生歓迎会は見事に成功した。
見ていた観客は総立ちして拍手していたし、どうなるか不安だったのか演劇部の先輩達は皆泣いていた。
終わった後もなお、劇の興奮が収まらなくって……
「お前の言う通りだったな、満。さっきの劇、脚本も配役も、素晴らしいものだった」
メイクも何もかも終え、元の赤羽満に戻った僕に恭弥君は優しく声をかけてくれた。
彼の優しげな表情を見た途端、うまくいったんだという実感がふつふつとわいてくる。
「あ、ありがとう、恭弥君」
「オリジナルというにはあまりにもクオリティーが高いものだった。そういえばあの姫の役をやっていたのは、みつ……」
「ねぇ満君、君宣伝だけじゃなかったの? 出るなら出るって前もって教えてくれない?」
恭弥君の会話を遮るように虹己君が、不満げに言う。
やっぱり気づかれたかと思いつつ、あははと苦笑いして見せた。
「で、出るつもりなんてなかったんだけど……相手役の先輩が、急に倒れちゃったらしくて……」
「やはりそうだったのか。初めてにしてはなかなかの演技だったぞ、満」
「そうそう、あの女装はかなり似合ってたよねぇ~携帯で撮ったんだけど、いる?」
「うう……そう言うのやめてよ、虹己君……」
「この前の仕返し」
この際、女装が似合っていたとか似合ってなかったとかはどうでもいい。
僕にとってはこの演劇が成功だったってだけで、すごくうれしいんだ。
これで僕と同じ一年生も、興味を持ってくれた……かな?
あんなにきれいで、かわいい先輩もいるんだもん。きっと大丈夫……
早乙女……雲雀……か……
「まさかこうも見事にうまくいくなんてねえ。自分がはめられたとも知らずに」
ふっと声がする。
本番直前まで一緒にいたミミルが、また急に現れた。
にやにや笑う彼に、僕はなんだか嫌な予感がしてしまう。
「どういうこと? ミミル。はめられたって」
「あの脚本をあんたが覚えていたのは知っていたからね。神木って奴を体調不良にしたのも、あの木原って子に言わせたのも、全部俺の魔法」
やられた。完全に。
最初からすべて仕組まれていたことなんだ。
ここまでされるとミミルは本気で、僕達をリア充にしたいのがわかる。
現に今も、彼女のことが頭から離れないし……
これが本当の恋ってものなのかな……
「さてと、次の標的はお前達だよ。虹己、恭弥」
「ターゲットって……恭弥君はあの先輩ともう付き合ってんじゃん。それに、満君と違って、オレは恋とかごめんなんだけど」
「分かってないねえ、虹己。すでに俺の罠にはまっているとも知らずにさ」
悪意のある言葉に、虹己君ははあ? と不機嫌極まりない声を出す。
それでもミミルはくつくつと笑っていて……
「恋ってものは気づかぬうちに、始まってるものなんだよ」
なにかをたくらんでいる様子のミミルに、僕と恭弥君は首をかしげるしかなかったー
(つづく・・・)
いよいよ本格的にフィオーリが牙をむいてきましたね。
まんまと策にはまった満ではありますが
これからが本当の恋の物語です。
はてさてどうなることやら・・・
あ、言い忘れていましたが
最近、Twitterにて本作のキャラクターについて
ぼちぼちあげさせてもらってます!
そちらも合わせてみていただけると、
より楽しめますよ♪
次回は28日更新!
三人にまた新たな課題が!