ep.15 前回のフラグを一気に回収した結果
なんとか退学を免れた満ら三人。
仮の彼女となった雲雀の手伝いをすることになった満は
ちらし配りに大忙し。
そしていよいよ、
演劇部による新入生歓迎演目が行われようとしていた!!
満開だった桜の木々が、緑色の葉に変わってゆく。
何もなかった体育館は、あっという間に人で埋め尽くされていた。
そう、今日は待ちに待った演劇部の新入生歓迎会。
休日の開催にもかかわらず、体育館は結構な人数が来てくれている。
やっぱりもともと人気があるだけあって、演劇部ってすごいんだなあ。
ちなみに僕は当日まで何か手伝えないかなと思い、舞台裏を訪ねていたんだけど……
「本番まであと五分です! 機材班、準備完了しました!」
「マイクもオールオッケーだね。私はいつでも行けるよ、演者班もいける?」
「はい、ばっちりです!」
ピンマイクを服に通しながら、雲雀先輩が心強く笑みを浮かべる。
裏方の人が衣装を整えたり、音響のチェックを最後までしたり……舞台裏は思った以上にバタバタしていた。
もちろん観客側には、それが伝わらないよう幕を閉じる。
それが見せる側の気遣いのようなものなんだろう。
どこか緊張している先輩達とは違い、雲雀先輩は優し気な声色で話しかけてくれた。
「み~っちゃん♪ 宣伝してくれて、ありがとう。まさかこんなに人が集まってくれるなんて、思ってもなかったよ」
「あ、いえ……先輩は、緊張とかしないんですね」
「することはするけどそれ以上に、演じられるのが楽しくて仕方ないんだ。この話は私のお気に入りでもあるから」
嗚呼、わかるなあ、その気持ち。
結局僕はあの台本を、何回読んだか分からないほど読み込んでしまい、今では内容がほぼ頭に入ってしまっている。
分かっているうえで見る劇の練習風景はやっぱりすごくて、先輩の正確な演技にいつも酔いしれていた。
今日はその演技を見れるのも、最後なんだなあ……
のんきに考え事をしていた、そんな時―
「ぶっ、部長! 大変です~~!」
「どうしたの、さとちゃん。そんなに慌てて」
「か、神木先輩が熱で倒れたらしくて! とても出れる状態じゃないみたいで……!!」
まさかの事態というものは、本当に起こるらしい。
神木先輩というのは今回の準主役である役を担当している先輩だ。
そんな先輩が出れそうにない、ということは……
「え? じゃあ私、誰と掛け合いするの? 序盤、ほとんどかみっきーとのシーンだよね?」
そう、問題は相手役がいないということ。
演技が上手な先輩方は何かしら役についていて、とてもできそうにない。
このままじゃ、せっかくの練習が台無しになっちゃう。
こんな終わり方じゃ誰も納得しないよ……
「どうしますか、部長」
「ん~この人数で中止はあり得ないからぁ……代役を立てるしかないかな~裏方の中で台本を覚えてる人、いない?」
誰も手をあげる者はいない。
みんなが困っている。
なんとかしたい。それでも僕は見守ることしかできなくて……
「あ、あの……私、赤羽君がいいと思います。赤羽君が、この話好きで何度も読んじゃうって前言ってました」
何もできずに黙っていた時、その子は唐突に僕に言葉を投げかける。
同級生で宣伝を手伝ってくれた木原さんだ。
あれ、でも……僕が台本読んでるってこと話したことあったっけ?
知ってるのはうんざりとしたようにみていた虹己君と、恭弥君くらいなはず……
「ねえ赤羽君! 赤羽君なら、出来るんじゃない?」
そんなことを考えている僕に追い打ちをかけるように、木原さんが勢いよく僕に詰め寄ってくる。
みんながみんな僕の方を向く。
追い込まれた僕はとっさに首を振って……
「む、無理です!! 演劇なんてやったことないし! 出来る気がしません!!」
と言ってしまった。
正直、人の力になりたいのは本当だ。
こんなに集まってくれたのに、中止にさせるわけにはいかない。
だからって演劇部の命運をかけた新入生に向けた劇を、僕にいきなり代役をしろだなんてそれこそぶち壊す自信がある。
絶対ムリだって決めつけていた、そんな僕にー
「大丈夫だよ、みっちゃん。いざとなったら、私がいるから」
左右に揺らしていた僕の両手を、彼女の優しい両手が包み込む。
僕の手を握りながら、彼女―雲雀先輩はなおも笑ってくれた。
その笑顔に僕は、なぜだか妙に安心してしまって……
「衣装係は予備の服を使ってすぐに修正をかけて! これは演劇部の問題! みんなでみっちゃんを支えること! やるからには全力で行くよ!」
笑顔で指示を交わす先輩の手はずっと、僕の手が握られていたー
(つづく!!)
最近、少女漫画にはまっています。
しばらく読んでいなかったのですが、知人に紹介されたので
試しに読んでみたんですが・・・これがまた面白い。
べただなあと思いつつも、
男キャラにメロメロさせられっぱなしです。
な~んて思っていたら、
え!? こんな時間!? 明日の準備しなきゃ!
・・・あれ、もしかして私、小説全然書いてなry
そんな現実に目を背け続ける作者なのでありました。
次回は23日更新。
演劇部のピンチを満が救う!?