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ep.12 残酷な運命に抗う僕達は、

彼女となった雲雀と、

どう接点を持っていいかわからない満のもとに

演劇部の勧誘で再会した二人。

ミミルの策略により、

演劇部の手伝いをすることになってしまう。


そんな中、校則の期限日がせまってきていて・・・?

拝啓 お母さん、お父さん。

元気にしていますか? 僕はまあ、結構元気だよ。

この四葉高校に入学して、早一カ月を過ぎようとしています。


色々慣れないことはあったけど、恭弥君や虹己君とは相変わらず仲良しです。

恭弥君の彼女である春夜先輩はもちろん、雲雀先輩とも少しずつだけど距離を縮めている。


少し前まではこんなにうまくいくなんて、思ってもみなかったなあ。

それもこれも、ミミルのおかげ……なのかな?

強制恋愛法によるカップル申請書を出すまで、残り一日。

苦労のかいあって出せた僕は、退学は何とか免れたんだけど……


「わりいなー赤羽、藍沢。呼び出しちまって」


僕―赤羽満は、授業終わりの放課後なぜか先生に職員室にまで呼び出されている。

理由は分からない。一緒に恭弥君もいるから、なおさら読めないところではあるんだけど。

小テストの点数が悪すぎた、とか? でもそれなら僕だけでもいいような気がするし……


「お前ら、相良と同中だったよな? ……仲いいのか?」


「虹己君ですか? ええ、お友達ですけど……」


「なら話は早いな。申請書が明日までなのは知ってるな? 実は……うちのクラスでだしてねぇんだわ、あいつだけが」


「えっ、えええええええええ!?」


何という事態、ということか。

あの虹己君が退学のピンチに陥っていたのです!!


「虹己だけ、ということは……他のみんなは、もう出しているんですか?」


「他のクラスにもちらほらいるみてぇだが……うちは相良だけでなー。さすがに自分のクラスから退学者が出ると、俺の評判も下がるし何とかしてくんねえかなあと」


最後に、自分のことまで言うのは先生らしいなあと思いながらもその言葉を信じるのに時間がかかる自分がいる。


鳳さんとの一件があってから、僕から恋愛のことは言わないようにしていた。

虹己君は男女ともに人気ものだから、てっきり大丈夫だって思っていたのに……


「お前らからも言っといてくれね? 友達が退学するのは、さすがに嫌だろ?」


「はい……頑張ります」


「先生、その申請書は明日の何時までに出せばいいんですか?」


「妥当なのは五時だろーなー会議あるし」


明日の五時。タイムリミットはすぐそこまで迫っている。

それまでに僕達が、虹己君を助けないと……!



「ああ? カップル申請書? まだ出してないけど、それが何か?」


同じ声のトーンで、いかにも真顔で答えが返ってくる。

彼の顔は、言っている僕がおかしいとでも言っているような気がした。


あの後、僕と恭弥君は早速寮に戻っていた彼のもとへと詰め寄った。

普通に落ち着いて話す虹己君に、僕は自分にも言い聞かせるように話をつづけた。


「それが何かじゃないよ! 締め切りいつか忘れちゃったの?! 明日だよ! あ・し・た!!」


「あー……そうだっけ?」


「うちのクラスで出してないの、虹己君だけなんだよ! このままじゃ退学になっちゃうんだよ?!」


「別に、いいんじゃない?」


思いもしなかった答えが、僕の胸をがんと打つ。

慌てている僕に対し、彼はなおも冷静な口調で口を開いた。


「正直ここまでくるとさ、もうどーでもよくなってくるんだよ。この学校にこだわる理由も特にないし? カップルになってくれる女子探すより、おとなしく退学になった方が気が楽かな~って」


「………それは、本気で言っているのか?」


そんな中、恭弥君が僕達の間に入ってくる。

彼は静かな声色ながらも、わずかに怒っているような……そんな気がした。


「俺はこの学校を選んで、悪くないと思っている。ここで過ごす高校生活をよりよいものにするには虹己……お前がいないとダメだ。三人で一緒にうけたいからって苦手な勉強、頑張っていたじゃないか。あの努力が、嘘だったとでも?」


「……それは……」


「一人のピンチは、三人のピンチと同じだ。お前だけいなくなるのは、俺が許さない」


こういう時の恭弥君は、本当にかっこよくて頼りになる。

僕も同じ気持ちだよと賛同するように、うんうんと何回もうなずいて見せる。

そんな僕と恭弥君の顔を交互に見た虹己君は、勝手にすればといいながらも少し笑ってくれる。

やっぱりいいな、友達って。


「それで? なんかいい案あるわけ? ほとんどの女子が、彼氏見つけてるっていうのに」


「うう……もう放課後だし、明日までってなると厳しいよね……」


「先生が言っていた、他にも出していない人はいると。うちのクラスがたまたま虹己だけだっただけで……やはり彼女が適任なのではないだろうか。お前の運命の相手と言われている鳳結愛先輩」


やっぱり恭弥君も覚えていたんだ、そう思いながらうんとうなずく。

初めて会った時、春夜先輩が彼女は男性恐怖症だって言っていた。

だから退学になってもいいって。

まだまだ楽しいことはきっとあるだろうに、今退学なんてしたらー……


「まさかとは思うけど、あの彼女を説得しろっていいたいわけ? 無理無理。あの子、オレらに近づく隙さえ与えないんだよ? それをどうしろと?」


「うう~そうだよね~~恭弥君、どうしよ~~」


「ふむ……切羽詰まってしまった……」


解決策は見えているのに、それを実現できないもどかしさに頭を抱える。

このまま虹己君が退学するしかないのか。

もう一緒にいられないのか……あきらめかけていた、その時―


「やっぱり俺の力が必要のようだなあ」


自信に満ちた、強気な声がふいに聞こえる。

僕達が輪になって話している最中、空中からミミルがふっと現れた。

相変わらず何かをたくらんでいるかのように笑っていて、なんだか不気味のようにも思えてしまう。


「あんた……いつから聞いてたんだよ」


「お前だけいなくなるのは俺が許さないから~あたりから?」


「いちいちセリフを繰り返すなよ! 聞いてるこっちが恥ずかしいだろーが!」


「まあそう言うなって、相良虹己君。とっておきの策を持ってきてやったんだから」


「とっておきの策??」


首をかしげる僕と恭弥君に対し、嫌な予感がするとばかりに顔をしかめる虹己君。

それでもミミルはなおも笑みをくずさずに、どうなるかが分かっているかのように自信に満ち溢れている。

一体、何を考えているんだろう……


「物は試し、ってね。トランスフォーメーション。モード、ラファーム」


彼の言葉と同時に、黄色い光が虹己君を包み込む。

その光は直視するにはまぶしすぎて、何が起こっているのか全く分からなくて。

あまりのことに僕は目をつむってー……


「鳳結愛は手芸部に所属している。時間がない以上、手段は選んでられない。行くよ、相良虹己ちゃん」


まぶしい光が、ゆっくりと消えていく。

やっと目を開けたそこには虹己君ではなく、なんと女の人がいたのだ!!!


(つづく!!!)

最大のピンチ到来ですね。

本来なら主人公である満が

そうなるべきだったのではありますが

性格上、虹己にしてみました。

ぶっちゃけこの作品は

三人とも主人公、みたいなものですしね。

にしてもこのフィオーリは何でもできますね・・・


次回は9日更新予定。

はたして虹己の身に何が!?

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