ep.11 リアルを充実するための前振りをしよう。
虹己の運命の相手を言われた満は、
恭弥の彼女・春夜の協力を借り、
初対面を果たす。
が、相手の女性・結愛は男性恐怖症という
かなり難癖が!
それを知った虹己は、オレは好きなようにやると
しびれをきらすが…
咲いていた桜の木から、花びらがひらひら地に落ちていく。
あわただしかった入学式があっという間に過ぎ、気が付けば四月半ばに差し掛かってきている。
四葉高校に入って来てからそんなに日がたっていないというのに、随分と雰囲気が変わった気がする。
それは、男女二人組―カップルが多くみられるようになったということだ。
これも強制恋愛法がなせる技なんだろうなって思うと、この法則のすごさを実感させられる。
寮から学校という短距離にもかかわらず一緒に歩いていたり、朝礼が始まるギリギリまで一緒にいる人も見かける。
正直、みているこっちがおなかいっぱいになりそうなくらい。
そして僕の周りにも、ラブラブな二人が一組……
「聞いて驚け~きょうちゃぁん~。なんとこの春夜ちゃん、今日は特製お弁当を作ってきたのだ~」
「へぇ、弁当を……わざわざ台所を借りて、作ったのか?」
「もちろんですとも~~お母さん直伝春夜ちゃんスペシャル~~感想聞きたいから今日のお昼、一緒に食べよ~」
「ああ。満はどうする?」
「ほえ? 僕???」
いきなり話題を振られるとは思ってもおらず、変な声が出てしまう。
僕の周りにいるカップル、というのは言うまでもなく恭弥君と春夜先輩だ。
二人だけの時間は邪魔するのは気が引けると思い、何も言わずに後ろをついていたのに、まさか話しかけてくるとは……
「えっとごめん、なんだっけ?」
「昼食の話だ。きいてなかったのか?」
「ははーん、さてはきょうちゃんと春夜ちゃんのラブラブっぷりに嫉妬しちゃったのかなあ~?」
「ま、まあそんな感じ……です」
正直この場から早く離れたい。
虹己君なんて、朝彼女を見た途端に何かを察して先に行っちゃったし。
鳳さんのこともあって不機嫌そうに見えたから、ついていこうにも気が引けちゃって……
「そんなに遠慮をするな、満。春夜ともそうだが、俺にとっては満や虹己と過ごす時間も同じくらい大切なんだ」
「そ、そうかもしれないけど……二人は付き合ってるわけだし……」
「だったら満ちんも彼女さんと一緒に来ればいいじゃないですか~?」
痛いところをつかれたなと思いながらも、はあとあいまいに返事をする。
僕の彼女ということになっている雲雀先輩は、実をいうとあれから全く会っていない。
人気者、ということもあってなのか会いに行こうと思っても早々会えないような……いわばアイドル同然の人らしい。
まあ、これも先生からの話に過ぎないんだけど。
虹己君の相手探しの頃から、ミミルはめっきり姿を見せなくなっちゃったし……一体僕はどうすれば……
「そこの新入生ちゃん達!! 演劇部、入りませんか?」
聞き慣れた、声がする。
ぱっと振り返ると、そこにはー
「あれ? よくみたら、みっちゃんだぁ! おはよっ♪」
噂をすればというものなのか。
そこにいたのは、まさかの雲雀先輩だった。
たくさんの紙を何枚も手に抱えており、相変わらずの笑顔を浮かべて僕に話を続けた。
「あの時はありがとう~みっちゃんのおかげで、親衛隊の子達を説得できたんだ~強引に押しつけちゃって、ごめんね?」
「い、いえ全然! 先輩こそ僕なんかの彼女になっちゃって……なんだかすみません!!」
「だいじょーぶだよぉ。あ、そうそう! 結構前から誘おうって思ってたんだけど……」
そう言いながら、持っていた紙きれを一枚僕に渡す。
そこに書いてあったのは、先日秋山先生が見せてくれた演劇部のポスターと同じものだった。
「私ね、部活入ってるんだ。演劇部っていうんだけど……」
「あ、知ってます。先輩、看板女優なんですよね?」
「うぇ! その話まで知ってるの?! ただの宣伝文句みたいなものだから、言うほどすごくないから!」
僕が言うのに対し、彼女は勢いよくぶんぶん首を振ってみせる。
そんなに謙遜しなくてもいいのに、と思いながらも口にできないのはなぜだろう。
すると後ろにいたはずの春夜先輩が、雲雀先輩の隣に割り込んできてー
「そんなこと言っちゃっていいの~? そのチラシに堂々とのっちゃってるの、先輩じゃないですかぁ~」
「にょわぁ! は、はるちゃん! 脅かさないでよ~~」
「百年に一度の逸材なんですからぁ、もっと自信持っちゃってもいいのに~」
「そんなこと言われても~」
どうやら先輩同士は知り合いのようで、春夜先輩はからかうように体をひっつかせて遊んでいる。
なんだか少しうらやましいな。女性同士だと、やっぱり気兼ねなく話したりできたのかなあ。
「こほん。ま、まあ細かいことは置いといて……実は新入生歓迎で、出し物をする予定なんだけど人手が足りなくて、困ってて……みっちゃんがいてくれれば仮にもカレカノだし、一緒にいる機会も増えていいかなあなんて考えて……」
確かに、今のままじゃまったくもって接点がない。
部活にさえ入れば、普通におしゃべりしたり一緒に帰ったりすることが出来るのかなとも思う。
とはいえ、僕は部活になんてまったくかかわってこなかった人間だ。
中学の頃だって当然帰宅部だったし、これと言って取り柄になるものすらない。
それに手伝いとはいえ上手な先輩にとって、足手まといになっちゃうだけなきもするし……
断ろうと思った、その時―
「困っているんでしたら、ぜひこの赤羽満に手伝わせてください!!」
え? という先輩方二人の声が重なる。
隣で聞いていた恭弥君でさえも、信じられないような目で見ているのが分かる。
だが一番びっくりしているのは、自分の方だった。
「僕、雲雀先輩の力になりたいんです! こんな僕でよければですが、お願いします!」
「いいの? 本当に?」
「はい!!!」
思ってもいない言葉が、ポンポン口から出てくる。
僕なんてできるわけないって思っているのに……何がどうなってるのぉ!
「助かるよ~! みっちゃん! じゃあまた連絡するね! ほんとありがと!」
「春夜ちゃんも先輩に負けないよう、勧誘せねば~きょうちゃぁん、またあとでね~~」
僕の返事にうれしかったのか、先輩二人はあっという間に去って行ってしまう。
後にはぽつんと残された、僕と恭弥君だけで……
「……満にしては、大胆な選択をしたな。困っている人を放っておけないとはいえ、やったことないことを引き受けるとは……」
「ち、ちがうんだよ! 恭弥君!!! なんか、口が勝手に!!」
やっと自分の思いを主張できた僕は、恭弥君に事情を説明しようとしたそんな時―
「だらしないなあ。臨時のお手伝いくらいでおびえて」
声が上から聞こえた。
ふっと現れたのは、まぎれもなくミミルだった。
彼は糸か何かのようなものを持っており、僕にふっと笑って見せる。
「ま、まさかこれもミミルの力で?」
「ちょっくら俺の人形になってもらったよ」
「なんでそんなこと! 僕に演劇なんてできるわけないのに!」
「これもリア充になるための一歩だ。それに、力になりたいって感情がなかったわけでもないだろ?」
ミミルは鬼だ。
なんでこうも痛いところをついてくるのだろう。
確かに僕は、断ることとか苦手だけどぉ。
「ところで藍沢恭弥。申請書は、あの女で出したのか?」
「あ、ああ。期限が来週までだからな」
「やっぱりそうなんだ。へぇ~……」
何やらミミルが、企んでいるかのような顔をしてみせる。
僕達二人はそれがどうしたの? という疑問の目を向けるも、彼は相変わらず楽しそうな笑みを浮かべて……
「すぐにわかるよ。俺の力は、こんなもんじゃないってことを」
と言って、すぐに消えてしまった。
入学式から約一カ月。
期限となるゴールデンウィーク前日まで、あと七日を切っていたー……
(つづく!!)
いよいよ6月ですね。
にもかかわらず、こちらはまだ、
GWにすら到達しておりません。
なんだかんだ長いですよね。
こんなに時間をゆったり描いているのは
この作品が初めてかもしれません
次回は6日更新!
いよいよ期限日が…!?