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誤解

 夕方、フランクが家を訪ねてきた。

 どうしてか、罪悪感に溢れた目をしてミーア達を見ている。


「フランクくん、どうしたの?」

「ミーア、ごめん!」


 いきなりミーアに謝罪しているが、その場にいた三人——クレオパスと獣人姉妹はきょとんとするしかない。


「主席の件なら今度はあたしが勝つから大丈夫よ」

「……ミーアさん、たぶんそういう話じゃないんじゃないかな?」

「でもフランクくんがあたしに謝る要件なんてそれくらいしか考えられないけど」


 ミーアがとぼけた事を言っている。よほどフランクに主席争いで負けたのが悔しかったらしい。

 この返答はフランクにも予想外だったらしく、どう言ったらいいのか分からないような表情をしている。


 ただ、なぜ謝罪しているのかはまだ分からない。なので、家に入って詳しく話を聞くことにした。


***


 フランクから聞いた話に、みんなは息を飲んだ。どうやらあの人身売買犯は、ミーアの同級生まで巻き込んでいたようだ。

 おまけに知らぬ間に手引きをされているなんて思ってもいなかった。


「シピが……」


 ミーアも同級生が自分たちを陥れようとしたなんて——本人がそこまで考えていなかったとしても——思ってはいなかったようで、唖然としている。


「本当にごめん、ミーア、リルちゃん」


 フランクがさっきから悲しそうな顔で謝りまくっているが、彼のせいだという事は絶対にない。フランクが謝る必要はどこにもないのではないか、と思う。


「成功したら、そのシピっていう子の依頼という形に持ってこうとしたんでしょうね。その子だけが捕まるように」


 保護者として一緒に話を聞いていたミメットがそう言う。


 でも、そういう作戦でいくのはクレオパスから見ればなんだか無理があるような気がする。


 今はシピは大人の手に委ねられているようだ。猫獣人の街で裁きを受けるという。

 騙されたとはいえ、悪意はあったのだ。仕方のない事だろう。


「でもなんでそのシピさん? がリルの事嫌うの?」


 リルが不思議そうに尋ねる。


 まだフランクからは理由は聞いていなかった。シピがリルに軽い恨みを持っていた、としか言っていない。


 そのシピという子が女の子ということ、人身売買犯がつけていたのがフランクということで、大方予想は出来るが、本人から聞かないと正しいかどうかは分からない。

 ただ、それを言うとリルへの告白になってしまう。フランクも言いづらいだろう。


「……リルが犬獣人だから?」


 リルが辛そうにそう予想を立てた。


「違うよ、リルちゃん。そうじゃないよ」

「でも、そのシピさんにこの間会った時、『犬獣人は乱暴』だって言ってたよ。お姉ちゃんもフランクくんも聞いたでしょ?」


 クレオパスは知らなかったが、シピとリルは面識があったらしい。


「ああ、言ってたわね」


 ミーアが不機嫌そうに同意する。『でも、リルは乱暴なんかじゃないからね』と言い添える。それはその通りだ。


「違うんだったらなんで?」


 改めてリルがフランクに真っ直ぐな目で尋ねる。この聞き方はフランクは答えづらいはずだ。


「えっと、その、ぼくがリルちゃんの家によく行くから、ぼくがリルちゃんの事好きなんだって思って……その……」


 実際その通りなんだけど、という続きの言葉が聞こえてきそうだ。ついニヤニヤしてしまいそうになるが、リルの姉と母親の前なのでこらえた。それに今は大事な話をしている。ニヤニヤしていい場面ではない。


「それで、それがシピには気に入らなかったみたいなんだ」

「そうなの? でもフランクくんはお姉ちゃんが好きだから家に来てるんでしょ?」

「へ?」


 リルの爆弾発言にその場にいた本人以外はぽかんとするしかなかった。ミメットもそうしているところを見ると、彼女もフランクのリルへの好意は気づいていたのだろう。


「り、リル? 何言ってるの?」

「いや、そりゃあお姉ちゃんが襲われたのが『正しい』とかそういう事じゃないよ。でもさ、そんな誤解されるのはフランクくんにもいい迷惑ってやつじゃない?」

「リル! そういう事を言ってるんじゃなくてね」


 ミーアが止めるがリルは止まらない。


 とんでもない誤解をされてがっくりするフランクをどう慰めればいいのかクレオパスには分からなかった。

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