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元ヒキニートの現世界転生  作者: みくやみ
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01 なにこれ異世界転生とか?

 



「……ってもカノジョのキズアトは……」


 耳慣れた声が聞こえてくる。僕は死に損ねたのか……。徐々に覚醒する意識の中で声の主が自身の姉、(ココロ)だと判別する。となるとここは、爺ちゃんの病院だろうか……。


「あら?目が覚めたのねミコトちゃん。どう?何か具合悪いところないかしら?」

「ミコトちゃんって、姉さん僕もそんな子供じゃないんだから……」

「姉から見たらいつまでも子供なのよ。特にここ数年顔も見てなかったんだからね」


 耳の痛い話だ。なんたって僕はヒキニートだった挙句自殺未遂までしたんだからな……。

 辺りを見回すとすぐにわかった。ここは爺ちゃんの病院で、僕の脚が壊れた時に使っていた病室だ。なんで分かるって過保護な爺ちゃんが何かあったらここを使っていいと僕に貸してくれた(というより、使っていいとプレゼントしてくれた?)部屋だったからだ。


「僕、なんで死ななかったんだろう?頸動脈を突き刺したからかなりの確率で死ねると思ったんだけど」

「……?あぁ、死んでたわよ?」


「……え?」


 死んでたって、どういうことだ?

 困惑した。仮死状態のことを死んでたって表現してるとか、そういうことだろうか。姉さんはその類の冗談は一番嫌っているはずだけど。


「だから死んだのよ。享年20。あ、だからといってここが天国とかそういうのではないから安心してちょうだい」

「うーん。じゃあ、異世界転生とか?」

「ふふ、案外面白いこと言うのね。真面目一辺倒、って感じの子だと思ってたからちょっと意外だったわ。それとも素のミコトちゃんはそんな感じなのかしら」


 ニート期間にそういうのにハマっただけです……ハイ。

 でも話を聞いてますますわからなくなった。ほんとに今の私はどうなってるんだ?


「あー、ミコトちゃん。自分の手首を見てくれるかしら。その……切ったほうの」


 そう言われた僕は自身の左手首に目を落とした。

 僕の手首には、3本のカラフルに色づいた傷痕が刻まれていた。心臓に近いほうから赤・白・虹色に輝いている。ちょっと綺麗だ。


「え、なにこれ。ちょっと綺麗とか思っちゃったけどよく考えると……なにこれ?」

「あはは……ここからは、私から説明しないほうがいいかな……なんて」


 姉さんがそう言い終えるかどうか、というところで、けたたましく警報が鳴り響いた。

 廊下や館内放送からは火事が起こったと落ち着いて伝え、避難を指示する旨の声が聞こえてきた。一度この病院にいるときに火事にあった経験があったこともありパニックになりはしなかったが、今と昔では状況が違う。僕の脚は片方、思うようには動かないという点で。


「まぁ、その話はまたあとでお爺様から。いまはとりあえず避難しましょうか」


 姉さんも狼狽えた様子はない。ここの職員はみんなトラブルに対する耐性がありすぎだろう……お陰で僕も少し落ち着けたのはありがたいけど……。お爺様から、なんて言われっぱなしでは気になって夜しか眠れない。

 姉さんが用意してくれた車椅子で逃がしてもらっているさなか、僕はあることに気づいた。昔からこの病院に入り浸っているせいで頭の中に館内図は想像できるくらいに間取りは覚えているのだが、避難指示の放送も、姉さんの行く道順もある一ヶ所をどうも避けているようなのだ。なんら特別な場所でもない病室の前。なにかあるのだろうかと思いなんとか様子を見れないかと目を向けていると、僕の目は異様な光景映し出した。


「人が、燃えてる」


 それは車椅子の視点からしか見れないような角度だった。病院としてもそこまで対策することはできなかったのかもしれない。そもそも、考慮していなかったのかもしれないが、僕は見てしまった。

 急に車椅子が止まった。


「あらら、見ちゃったか。もうミコトちゃんには隠すようなことでは、ないんだけどね」

「え、あれ、助けなくていいの?」


 見る限りうちの患者だ。患者衣を普段着にする人はまぁいないだろ、う……?


「なんで患者衣が燃えてないんだ?」


 姉さんの顔を見ると、不敵な笑みを浮かべていた。そして姉さんは自分の左手首を、ナイフで切り裂いた。混乱する僕を置き去りにして、状況は目まぐるしく変わっていく。


「ミコトちゃん、久陽(クヨウ)家っていうのは、ああいうの専門のお家柄なのよ」


 姉さんが窓を開けた瞬間、燃え盛る男が飛び込んできた。いやいや、中庭を飛び越えるなよ……人間理解不能なことが起こると理解できることしか認識しなくなるっていうのは本当らしい。

 男はすぐにこちらに襲い掛かってくると勝手に思い込んでいたのだが、どうやらそうでもなかった。


『赤・白・虹……お前、クヨウの者か?』


 赤・白・虹。僕の傷痕の色と同じだ。

 姉さんの腕にも同じ光が灯っていた。赤い傷痕から、血を流しながら。


「ええ、そうよ。だからここは大人しく捕まってほしいんだけど……だめかしら?」

『それは出来ない相談だな。クヨウは殺せ、そう言われた』

「……そう、じゃあごめんなさい。アナタに罪はないのかもしれないけど……死に直してもらうわね」


 決着は一瞬だった。姉さんの放った巨大な炎は燃える男を焼き尽くし、文字通り灰燼に帰した。燃える男も燃え尽きるんだな……。


「はぁ……お爺様にどれほどお叱りを受けるか、想像したくもないわね……」


 姉さんは軽く愚痴を零すと僕に向き直った。僕は目の前で起きた一連の事実をまだ反芻している途中で全然受け止め切れていない。そんな僕に、姉さんは手を伸ばしてくる。ごめんだけど、怖くて握れません。


「……まぁ、ようこそ世界へ。久陽家の次代の当主さん?」

「え、なにこれ異世界転生とか?」




下手なりにも書いてると楽しくなってきて、夜しか眠れません。

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