00 僕は天才だった
僕が自分を特別視し始めたのは、小学3年生くらいだっただろう。その頃の僕は何をするにも輪の中心にいて、学校行事なんかでもリーダーシップを執っていたように記憶している。
身体が大きかったのもあるだろう。運動も人並み以上にできたし、勉強もやらされていたからみんなより数段上の内容も理解できていた。自分に対して絶大な自信を持っていた。周囲の期待にも応え、応え続けてしまった。
小さな僕は信じて疑わなかった。僕は天才だった。だが、
僕は今、社会の底辺にいる。
才能に胡座をかいて努力を怠ったわけではない……と思う。一部を除いて。小さい頃、言われるがままに期待に応え続けた僕にかけられた期待は年々膨れ上がり、現実の僕では抱えきれない大きさになってしまった。少しでも理想に、そう思った僕は他のほとんどを切り捨て、好きだったスポーツに打ち込んだ。
僕の脚は『運悪く』使い物にならなくなった。
絶望、言うは易しだが現実として突きつけられたそれは僕の弱い心を容易く破壊した。
僕は、外界と訣別した。
親からは失望され、友人とは疎遠になり、生きる意味を失っていた。
そして今日僕は、全てに別れを告げる。
何度手首を切っても死ねなかったので、頸動脈を突き刺した。あぁ、ごめんなさい。でももう、耐えられませんでした。今までありがとうございました。そんな言葉を浮かべながら、僕は意識を手放した。
よろしくお願いします。入りは作者の闇が見え隠れした感じがしますが、ここからはほのぼのとしていく予定でございます。