落ち着く場所にある物
静かな夜に
溢れ始めた思い出は
にこやかな顔を
打ち上がる花火の明かりで
柔らかに伝えていた
欲望の混じりが
全く無いとは言えないが
何処か
透き通るような
純度の高い純粋が
その中にあったのは
確かである
まろやかな記憶に残る
香りの柔らかさは
風が吹こうと形を変えない
足の裏側に
違う世界があるのなら
そこにある影は増えただろうか
間違って来た上に
今がありながら
失敗した上に
明日がありながら
コイントスを繰り返すように
質感を空想に変えるのだ
空間に溜まった空気ですら
裏返るのだと願い
それをすること自体が
無情をなぞるだけだと知りながら
その窓を開け
扉も開けなければ
三半規管が
狂ってしまうのだろう
面倒な世界だと
結論を出したところで
硬くなった顔は
変わらない物である
変わり続けることを
続けたところで
緩み切った顔は
変わらない物である
バランスが崩れているのは
胸の内に空洞があるからだろうか
他人にも空いていると
思えないほどに
自らを主人公化しているからか
くだらない物に
くだらないと言いながら
自らのくだらなさには
目を瞑り続けている
開くべき物は
その先であり
踏みつけたくだらなさに
支えて貰えば良いのだが
分かりたくない
半透明な意思があり
邪魔をしている
風で飛んで来た葉の質感で
現実に戻る瞬間の
そこには無いという消え方は
儚さなど無く
テレビのリモコン操作で
変わった画面のように
何の躊躇も無い
だからこそ
何かしらを抱ける場所を
作り続けて来たのだろう
落ち着く場所とは
はみ出てしまった
認識していない思い出をもとに
作っているのかもしれない
それは悲しい場所であり
楽しい場所であり
バランスが取れている形である
落ち着く場所には
喜怒哀楽の全てが入っていると
言えるだろう
だから
落ち着くのだ
何も無い場所ではないからだ
好きな場所も
何処か
そういう形がある